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技術シーズに、意志を。日鉄ソリューションズが挑む「三位一体」のプロダクト創出と、AIネイティブ時代のデザインの再定義

日本製鉄グループのIT中核企業として、鉄鋼業をはじめ製造・流通・金融など幅広い業界の基幹システムを手がけてきた日鉄ソリューションズ株式会社(以下NSSOL)。連結従業員数8,647名、連結売上収益3,383億円(2025年3月期)を誇る大手SIerです。2024年4月に発表された長期ビジョン「NSSOL 2030ビジョン」では、「Social Value Producer with Digital」を掲げ、従来のシステムインテグレーターから「デジタルによる社会的価値を創出するプロデューサー」への転換を宣言しました。
その変革の最前線に立つのが、技術本部システム研究開発センター内のサービスデザイン研究部です。前身となるBeyond Experience Design Center(BXDC)として2017年に設立されて以来、UXデザイン・アジャイル開発・ビジネス設計を融合させた独自のアプローチで、NSSOLの価値創出モデルそのものを進化させてきました。2025年2月に公開された中期経営計画では、SI Transformation(次世代SIモデル)、Asset Driven(アセット活用モデル)、Multi Company Platform(プラットフォーム提供モデル)の三本柱からなる「TAM型モデル」が打ち出され、同部はその推進エンジンとしての役割を担っています。
今回は、サービスデザイン研究部からサービスデザイナーの出水さん、アジャイルリードの林さん、サービスデザイン研究部部長の斉藤さんの3名に、技術シーズを社会実装につなぐプロセス、AIネイティブ時代のプロダクト開発、そして大手SIerの中でスタートアップのようにものづくりに挑む組織のリアルを伺いました。
※NSSOLは、日鉄ソリューションズ株式会社の登録商標です。その他本文記載の会社名及び製品名は、それぞれ各社の商標又は登録商標です。
出水 瑠璃(Ruri Izumi)|日鉄ソリューションズ株式会社 技術本部システム研究開発センター サービスデザイン研究部 サービスデザイナー
新卒でNSSOLに入社し、複数の事業部でのシステム開発を経験。UXデザイン案件への参画をきっかけに、社内公募制度を活用してBXDC(現サービスデザイン研究部)へ異動。入社10年目。製造業向けプロダクトのUX/UIデザインや、社内開発生産性向上ツールの開発にむけたリサーチ・UXデザインを担当。(2026年3月時点)
林 祐樹(Yuki Hayashi)|日鉄ソリューションズ株式会社 技術本部システム研究開発センター サービスデザイン研究部 アジャイルリード
情報系の大学を卒業後、2019年にNSSOLへ新卒入社。鉄鋼事業部にてアジャイル開発・ウォーターフォール開発の双方を経験した後、アジャイル開発を専門的に学ぶため入社4年目にサービスデザイン研究部へ異動。製造業の内製開発支援のアジャイルリードを3年間務めるほか、社内外のアジャイルコミュニティ活動を推進。(2026年3月時点)
斉藤 康弘(Yasuhiro Saito)|日鉄ソリューションズ株式会社
技術本部システム研究開発センター サービスデザイン研究部 研究部長
1992年、新日本製鐵株式会社(現:日本製鉄)入社。製鉄所などのシステム開発に従事。 その後、日鉄ソリューションズにて、全社システム開発標準の研究・開発を担当。デザイン思考やアジャイル開発手法を社内外で推進し、2017年にBXDCを立ち上げる。経営学修士(MBA)。(2026年3月時点)
出水さん:新卒でNSSOLに入社し、最初は金融事業部に配属されました。当時はUXデザインという言葉も知らないくらいだったのですが、たまたまUXデザインの案件にアサインしてもらったことが転機になりました。それまでは「何のために使うかよくわからないけど、とりあえずやる」という仕事もあったのですが、UXデザインはユーザーの行動がどう変わるかを中心に考えていくので、自分たちがつくったものが世の中をどう変えているのかが実感できたんです。
その面白さに惹かれて、社内公募制度を使って専門的にUXデザインに取り組んでいるこちらの部に異動しました。NSSOLには年に一度、上司をスキップして自分の意志で手を挙げられる公募制度があって、それを活用した形です。
林さん:出水さんの話を聞いていて思ったのですが、キャリアの流れは実は結構似ていて。私も新卒入社で、最初は鉄鋼事業部に配属されました。千葉の製鉄所付きのシステムセンターでアジャイル開発とウォーターフォール開発の両方を経験する中で、もっと専門的にアジャイルを学びたいと思うようになりました。
私の場合は公募制度ではなく、上司に直接「こういう部署があるらしいので行きたいです」と直談判しました。当時、会社としても全社的にアジャイル人材を育成する方針があり、その施策と自分の希望がうまくマッチした形です。
斉藤さん:組織全体で見ると、私たちが支援する案件のうち、約半数がNSSOL 2030ビジョンに向けた新しいプロダクト・サービスの創出に関わるものになっています。1年前にビジョンが発表された時点では構想段階でしたが、優先的にそうした案件を増やす方針のもとで、やっとここまで来たという感覚です。
例えば、私の研究部のあるチームは、顧客のBtoBサービスをゼロから立ち上げるプロジェクトに5年近く携わっています。お客様がスタートアップ的に始めたところに少数で入り、一緒につくってきた。その経験から、ビジョンで掲げる「価値創造プロデューサー」に必要な人材像というものが見えてきました。
出水さん:現場レベルでの変化という意味では、最近手がけたメーカーのお客様向けの微生物同定ソフトウェアのUXデザインが象徴的でした。従来のSIでは、最上流はお客様が決めて、私たちはそれを正確につくり上げるというモデルでしたが、この案件ではどういった属性のお客様に対してどのような体験を提供するか?といった上流の部分からお客様と一緒に考え、一緒につくっていくことができました。UIの評判も「説明する必要がないUI」として高い評価をいただいています。
林さん:私の場合、3年間続けている製造業向け内製支援のアジャイルリードが一つの軸です。3〜4人の小さなチームから始まったプロジェクトが、今では20人近い規模にまで成長しました。
もう一つは、社内外でのアジャイルコミュニティ活動です。社外のアジャイル実践者と共同イベントを開催し、その実績を社内に持ち帰ることで、私たちの部署がアジャイルに関してこういう活動をしているという認知を広げています。最近では人事部門の方もコミュニティに参加してくださるなど、関心の裾野が確実に広がっています。

(*1)関連記事:EX起点で、ビジネスの好循環をつくる。日鉄ソリューションズのデザイン組織が描く、これからのシステム開発
斉藤さん:これは私たちがずっと向き合っている課題です。技術が素晴らしいからきっと売れるはずだと、シーズ先行で突き進むとうまくいかないことが過去にもありました。一方で、顧客ニーズだけを起点にすると、当社ならではの強みが活きない。シーズとニーズの両方をうまくつなぐ活動を、小さく始めることが重要だと考えています。
出水さん:まさにその「小さく始める」が難しいですよね。技術自体はいろいろな場面で使えるように見えます。でも大切なのは、いろいろな可能性の中から「まずここが一番やるべきだ」という場所を特定すること。
今取り組んでいる社内向け開発生産性向上ツールでも、AIチームが持つ自動化技術と、現場の開発者が抱える課題を、UXリサーチを通じて丁寧につないでいます。お金も儲かり、現実味もあり、ユーザーが使ってみたいと思う。その小さな的を射抜くのがサービスデザイナーの仕事だと、ここ1年で強く感じるようになりました。
林さん:組織のポジショニングという観点で補足すると、システム研究開発センターの中で他の研究部は、黎明期の技術にいち早く食いつき、研究する役割を担っています。一方、事業部はお客様のアカウントビジネスに集中しています。その間にあるギャップを埋めるのが、まさに私たちサービスデザイン研究部です。
デザイン・テクノロジー・ビジネスをフルスタックに理解できる人材がいるからこそ、研究の成果を事業につなぐことができるのだと思います。
斉藤さん:林さんが言ったフルスタックという話に加えて、もう一つ当社らしい価値提供のかたちがあります。NSSOLはエンジニアリングが強い会社です。ですから、既製品を売るだけの商社モデルではなく、半製品としてアセットを用意しておき、そこにエンジニアリングで「最後の1マイル」を加えてお客様に最適化する。業種ごとの業務知見とAI・クラウド等の最新テクノロジーを掛け合わせ、お客様のコア領域に対して迅速かつ柔軟に価値を届けることができるのです。

斉藤さん:なるべく最少人数で、三つの要素をカバーできるように連携しています。たとえば出水さんが今やっているプロジェクトでも、ビジネス面の数字を一緒のチームで見ているので、別々のサブチームに分かれるのではなく、一つのチームの中でデザインも技術もビジネスもわかる状態をつくることを意識しています。
出水さん:フェーズによって編成は変わりますね。ディスカバリーの初期段階ではサービスデザイナーとエンジニアの2〜3名で十分なこともあります。予算もない段階なので少人数で動きますが、そのぶん一人ひとりが多能工でなければなりません。デザイナーでありながらビジネスもわかるサービスデザイナーのような存在でなければ価値を出せないのです。
可能性が見えてきたらチームを拡大していく、そんな進め方をしています。プロトタイピングの技術が進んだこともあって、本当にそれくらいの人数で動けるようになってきたのは大きいですね。
出水さん:一番実感しているのはプロトタイピングの速度です。以前は半日〜1日かかっていたプロトタイプが、10分程度でできるようになりました。
ただ、これは単に「速くなった」という話ではなく、回転率が上がることでより多くの仮説を試せるようになり、結果としてプロダクトのフィット度が上がるという効果があります。一方で、プロトタイプと実装の間にはまだギャップがあるので、ボトルネックが一つ減ったという感覚ですね。
林さん:アジャイル開発×生成AIの文脈では、大きく二つのアプローチがあります。一つは既存のアジャイル開発に生成AIを段階的に組み込んでいくインクリメンタルな方法。もう一つは、最初から生成AIの能力を最大限に活かせるプロセスを設計するAIネイティブな方法です。
私たちは後者にも積極的に取り組んでおり、生成AIの特性を前提にした新しい開発プロセスの設計と検証を進めています。従来の開発手法を前提にするのではなく、AIを起点にプロセス全体を見直しているのが特徴です。
斉藤さん:そうした新しいプロセスを設計する上で忘れてはならないのが、AIの活用はあくまで手段であって、それ自体が目的ではないということです。ただ、AIエージェントが業務の裏側でどんどん処理を回す時代になると、人間とシステムの接点そのものが変わります。
エンタープライズの世界では、AIが出した結果をお客様に対して説明できなければビジネスにならない。感覚で「お金をください」とは言えないのです。だからこそ、AIの出力を人間が理解し説明できる形にデザインすること。それがこれからのデザイナーに求められる新しい役割だと考えています。
出水さん:斉藤さんの言う「説明できる形」を具体的に言うと、AIのプロセスを細かく分割して、要所で人間がレビューできるようにする設計が必要になっています。たとえばAIが200件のデータを自動処理した場合、それをただ「全部回しておきましょう」ではなく、どういう観点で処理したのかを可視化して、人間が説明できる形にする。
プロセスを分割して人間とどう交流させるか。これがAI時代のUXデザインの核心だと感じています。

斉藤さん:NSSOL 2030ビジョンが掲げる社会課題解決に貢献するため、私たちはBtoB/BtoEのエンタープライズ領域において取り組んでいます。経営視点にとどまらず、現場で働く一人ひとりが余計な負荷や迷いから解放され、本質的で創造的な業務に集中できる環境と仕組みを実装することを使命としています。
プロダクトマネージャー、デザイナー、アジャイルリードといった多様な専門性を持つメンバーと、研究所が持つAI・クラウドなどのテクノロジー資産を掛け合わせ、NSSOL全体の価値創出を加速させる戦略的中核組織を目指しています。
出水さん:今は手探りの部分がたくさんあるからこそ、そこを試行錯誤して形式知に落としていきたいです。サービスデザインの知見をちゃんと後進に残していくことが目標ですね。
面白さはやはりUXデザインそのものです。出来上がったものがちゃんと「欲しがられるもの」になった瞬間だけが楽しい。そこまでの道のりは苦労の連続ですが、だからこそやりがいがあります。
林さん:野望は大きく、NSSOLの全社員がアジャイルマインドを持っている状態をつくることです。生成AIの登場によって仮説検証のスピードはますます加速しています。だからこそ、小さく試しながら学び続けるアジャイルなマインドセットがこれまで以上に重要になっていると感じています。
個人的にはプロダクトマネジメントにも挑戦しています。言われたものをつくるのではなく、自分たちがプロデューサーになってつくる。その生みの苦しみの先にある、「いいものだね」と言ってもらえた時の感動がこの仕事の面白さです。
斉藤さん:やはり物をつくること自体が面白いですし、それが現場で本当に使われているところを見られるのが醍醐味です。普段消費者としては見えない企業システムや現場の裏側を見られるのも、この会社ならではの面白さですね。
エンジニアにも、「これをつくってください」と言われたものを渡して終わりではなく、最終的に使われるところまで体験してほしい。厳しいフィードバックをもらうこともありますが、そのぶんやりがいも大きい。そういうチームをつくっていきたいですね。
出水さん:世の中にインパクトを出すことにこだわれる人、ですね。熱意や好奇心があって、未知の領域でも粘り強く探索していける方と一緒に働きたいです。
林さん:やらされ仕事ではなく、自分の意志で動ける熱意のある方。強いビジョンを持って社会をよくしたいと思っている人がいいですね。
斉藤さん:お二人が言った熱意や好奇心に加えて、エンタープライズの世界では論理的に説明する力も大切です。感性だけでなく、ロジカルな思考もできるデザイナーを求めています。
当社は研修制度も手厚く、入社後のオンボーディングとして社内外の研修やOJTを通じてしっかりサポートします。0→1のディスカバリーフェーズから参画するもよし、グロースフェーズのプロダクトに合流するもよし。大手SIerの安定基盤の中で、スタートアップのようにものづくりに挑める。そんな「まだ誰もやっていない場所」で、一緒に価値を生み出しましょう。

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この記事を書いた人

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