
「金融の新しいあたりまえを創造し人々の成長に貢献する」をミッションに掲げ、デザインはもちろん、AIやテクノロジーを活用し金融のDXを推進しているJapan Digital Design。
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三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下MUFG)の一員として、どのように課題を紐解き解決へと導いているのでしょうか。今回は、CX向上プロジェクトに携わるJapan Digital Designの藤原さん、三菱UFJ銀行の小島さんの対談において、プロジェクト発足の経緯や活動内容、取り組み後の変化についてお話を伺いました。
藤原 由翼(Yusuke Fujiwara)|Japan Digital Design株式会社
Experience Design Div. (XDD)
Director of Experience Design
千葉工業大学デザイン科学科山崎研究室を卒業。IAやUXデザイナーとして楽天グループの大規模リニューアルプロジェクトや新規事業の立ち上げに従事。その後、Incubate Fundにてスタートアップのデザイン支援に参画。スタートアップの起業を経て、2021年にJapan Digital Designに入社。
Experience Design Div.の Director としてMUFG向けのソリューション事業を推進。
小島 健之(Takeyuki Kojima)|株式会社三菱UFJ銀行
カスタマーサービス推進部 企画Gr 上席調査役
2010年、旧三菱東京UFJ銀行に入行。法人取引推進を担当した後、住宅ローン、外貨預金等のマスリテール向け商品・キャンペーン企画、WEBマーケティングや、組合専従業務等に従事。2020年よりデジタル企画部(現・デジタル戦略統括部)にてカスタマーサポート領域のDX推進を担当。 2024年から現部署で顧客接点(チャネル)全体の企画業務に従事。
2022年4月以降、Japan Digital Designと共にCX向上プロジェクトを推進・支援中。
藤原さん:Japan Digital Design(以下JDD)に入社する前は、スタートアップの創業者として経営やデザイン業務を担っていました。優秀な経営陣がそろい自分の役割は果たしたなと思うようになり、自分の経験を活かして新たにチャレンジするフィールドを探していました。
考えていたのは、社会への役割が大きく、課題がたくさんある一方で解決できず困っている業界はどこか。いろいろと探している中でたどり着いたのが金融でした。また当時、子どもが生まれたタイミングだったこともあり、家族との時間を大切にできることも考慮していた中、JDDで働いている友人からご縁を頂いて入社することになりました。
実は新卒で入社した楽天で、スマホ決済サービス「楽天スマートペイ」をUXデザイナーとして立ち上げた際にはシェア1位を獲得、楽天証券のFX取引ツール「マーケットスピードFX」ではデザインを監修しリリース後のFX取引高が前年比の7倍成長を達成するなど、どちらもビジネス成果を創出しグッドデザイン賞も受賞しました。その頃から、金融領域と相性が良いなと感じていた部分もあります。
ちなみに、父親が三菱電機でしたし、妻が三菱UFJモルガン・スタンレー証券の出身なので、「三菱」に愛着もあります。(笑)

小島さん:大学では経済学を専攻し、日本経済に貢献したいという思いはありつつも、具体的なやりたいことまで定まっておらず、銀行には様々な業務フィールドがあるので、そこで働いていればきっとやりたい仕事が見つかるだろうと、新卒で三菱東京UFJ銀行(当時)の総合職として入行しました。
法人取引推進を担当していた頃に、社内研修でマスリテールビジネスについて話を聞く機会があり、膨大な顧客データの分析に基づき商品等を開発し、その結果が市場の反応を通じて返ってくるところに面白さを感じ、マスリテールビジネスのプロになろうと、社内公募を通じてまず住宅ローンの企画に携わりました。
その後、インターネットバンキング「三菱UFJダイレクト」やアプリで口座開設の申し込みができる「スマート口座開設」等の広告宣伝や利用キャンペーンの企画等を担当しました。デジタル領域の発展に伴い、「デジタルを知らずしてマスリテールのプロにはなれない」と危機感を抱き、デジタル企画業務を志願したところ、運よくデジタル企画部(現・デジタル戦略統括部)へ配属となった経緯があります。
デジタルに関する知見はそこまでありませんでしたが、着任後すぐにコールセンターのDXを検討するミッションを担当する事となり、プロジェクトを進めながら少しずつ身に付けていきました。その中で当行の照会受付における顧客体験に課題感を感じ、2022年4月からはJDDとの協業をスタート。藤原さんと共に顧客体験の向上に向けてコールセンター業務の高度化に励んでいます。

小島さん:2022年4月から銀行の関係各部メンバーで「CX向上プロジェクトチーム」を立ち上げ、「電話をせずに済む世界」を作ることを目指し、JDD藤原さんと二人三脚で、顧客体験の改善に向けて取り組んできました。
コールセンターなのに「電話をせずに済む」ということで、一見すると矛盾を感じるかもしれませんが、お電話前の段階でお客さまのお困りごとを一つでも多く解決することも、大事なミッションだと考えています。
このプロジェクトは、2021年秋に会社から「コールセンターをDX等も活用して高度化するにはどうすれば良いか」を検討するミッションを頂いたことが始まりでした。高度化に取り組む前に、まずコールセンターの課題を捉え、あるべき将来像を整理する必要があると考え、実際にコールセンターに駐在する等して現状把握を進めつつ、当時のコールセンター所長、コールセンター経営所管の事務企画部長と共に方針策定をしていきました。
小島さん:大きく2つあります。1つは、お客さまからの声を活かしきれていないこと、もう1つは、電話チャネルだけに閉じてサービス提供、業務効率化等を実施していたことです。本来は電話だけでなくチャットボットやFAQなども含めた複数のカスタマーサポートチャネルを用いて、お客さまにより良いサービス体験を提供していく必要があるのではないかと感じました。
サービスを利用する中で自己解決を促せるシーンはたくさんあるはず。ただ、FAQに書かれた情報が分かりづらかったり、チャットボットの使い方に不便があったり。更にはお客さまの行動もあまり把握できていない、と課題は山積みでした。
そこでFAQやチャットボットを含めたカスタマーサポート機能の充実はもちろん、コールセンターに寄せられるお客さまの声や、デジタル上でのお客さまの行動データ等に基づいて商品・サービス自体の改善提言、ホームページ等のUX・UIの改善によって「電話をせずに済む世界」を実現することを大きな方針として掲げました。
それと同時に、これらの課題を解決して顧客体験をより良くするためには、銀行のメンバーだけでは難しいとも感じていました。このプロジェクト検討の前から銀行の照会体験には課題感を感じており、JDDの体験設計チームを活用できないかと社内には体験改善の必要性をアピールする等していたのですが、このプロジェクトが重要性を知らしめるチャンスと思い、改めてJDDにご相談しました。
藤原さん:まさに、待っていました!という気持ちでした。コールセンターはお客さまの困りごとの声の集積地、サービス改善において鍵になる組織です。銀行との協業において資産になる活動となるのではないかと着目していましたし、顧客データの活用余地が十分にあることを知っていたので、話が来てすぐに「やります」と手を挙げました。
小島さん:私は2023年度まで「CX向上プロジェクトチーム」のリーダーとして、ミッションの達成に向けた企画の立案から実行まで、プロジェクト全体のマネジメントを担っていました。2024年4月からは、コールセンターに限らない、顧客接点(チャネル)全体についてより良い顧客体験を追求する部署から引き続き本プロジェクトを伴走支援しております。
チームとしては、例えば、店舗統廃合に関するDMのデザインを見直したり、藤原さんが用意してくれたフレームワークをもとにFAQを約130コンテンツ見直したり、住宅ローンのお借り入れ中の顧客向けWebサイトのデザインを改善したりと、少しでも多くのお客さまから分かりやすいと思っていただけるようなサービス作りに取り組んでいます。
藤原さん:プロジェクトがスタートした当初は、CX向上の実現に向け、週に1回デザインやCXに関する相談を受けていました。特に注力したのは、成果物をただ納品するのではなく、CXデザインの考え方やスキルをデリバリーし、本質的な成功体験を得てもらうことでした。
例えば、店舗統廃合のDM改善では、完成形をこちらで具現化して納品するのではなく、まずデザイナー目線でわかりにくくなってしまっている要因をお伝えし、どのように構造化すべきか、情報の強弱の付け方はどのようなものが適切かといった視点を紹介するというステップを刻みました。その上で、銀行のメンバーが使い慣れているPowerPointでDMのプロトタイプを用意し、銀行の担当者が文言を追加したり、情報の位置を編集したりと、自分たちでお客さまへのわかりやすさを創意工夫できるキットとして提供するようにしています。
こういった取り組みは、実際に成果が出て評判も良かったことから行内の至る所で紹介されたようです。その後のFAQ改善プロジェクトではExcel プロトタイピングキットを使ってご支援しました。

例)パワポプロトタイピング / エクセルプロトタイピング
小島さん:これが本当に、すごく良かったです。これまでは、デザインって広告代理店や制作会社のような、いわゆるクリエイティブのプロがやる仕事であって、銀行員が簡単に扱えるようなものではないというイメージを持っていました。ところが、プロトタイピングのキットを作成していただいたことで、もちろん100点の完成度を目指すことはできないけれども、30点だったものを50点、60点にしていくことは、銀行員の自分達でも出来るのだと思えるようになりました。
藤原さん:現在は更にそこから進んでいて、CX向上プロジェクトに参画している銀行メンバーの一部はFigmaを使い始めています。Figmaを使って、コンポーネントを使ってプロトタイピングをしています。今後ユーザーテストも控えており、まさにナレッジの共有が進んでいます。しかも、そのFigmaのレクチャーやサポートをしているのは、実はJDDに出向で来ている銀行員なんです。率直に言って、これは革命的ですよね。
他にも、小島さんのチームが使われているプロジェクトフォルダが、UXの5階層モデルに即した形になっているのを見た時は、業務への浸透レベルに私も驚きました。
仮に私たちが外部の制作会社やコンサルタントという立ち位置であれば、こういったナレッジの共有はなかなかしづらいと思うのですが、JDDはインハウスデザイナーとしての立ち位置でもあるので、本質的なMUFGの成長を願って、惜しみなく考え方やスキルを共有できることが大きな強みとなっています。
小島さん:2022年度後半に取り組んだ住宅ローンのお借入れ顧客向けのWebサイトのデザイン改善では、JDDが主導となり、藤原さん達が作ってくれたデザインをもとにコールセンター側でブラッシュアップして改善していきました。UXの5階層モデルに従って、どのフェーズでどのような作業をすべきかをマニュアル化し、コールセンター内で共有しているので、現在はコールセンター内でまずマニュアルに沿って実践しつつ、必要に応じてJDDに相談するようにしています。
小島さん:大いにありましたね。情報設計されたデザインの重要性や、顧客の声やお困りごとに基づいて改善していく活動の大切さを理解してくれる方が増えていることを実感しています。
藤原さん:特に、店舗統廃合に関するDMのデザイン見直しでは、実際に電話の件数が数十パーセント減ったという成果もあり、「電話をせずに済む世界」に近づいたと感じますし、次の施策への自信にも繋がりましたよね。

藤原さん:一つは、社会に与えるインパクトの大きさです。大きな責任を担っている歴史あるメガバンクだからこそ、CX的な面で課題が多く、一般のお客さまが感じている負の総和も相応に大きいと言えます。例えば、小さな改善であっても毎月100人以上の不満やお困りごとの解消に繋がっています。もちろん銀行の中核事業となるような大きなテーマや中期経営計画をご支援したプロジェクトもあります。まだまだ取り組めていない領域が多いので、それらを紐解いていくやりがいがありますね。
もう一つは、小島さんのようにデザインやCXの改善を求めている人がいること。「JDDと一緒に仕事をして良かった」「CXについて考えられて良かった」といった成功体験を作ることも、私たちのミッションの一つです。
小島さん:私たちがお客さまに提供しているサービスは幅広く、それらを通じて数多くの顧客接点を持っております。その顧客接点となるWebサイトやFAQ、チャットボット等は、まだまだ改善できる余地があるものが多くあると思っています。引き続き、より良い顧客体験を模索しながら、JDDと一緒に銀行全体の課題解決をお願いしたいと思っています。
藤原さん:JDDのValues(行動指針)に「プロフェッショナルである」と書かれている通り、プロフェッショナルであることを大切にしている方です。JDDにいるメンバーの多くは、自分の仕事に誇りと責任を持っていて、スキルアップも惜しみません。指示をしなくても自発的に取り組みますし、他のメンバーのプロフェッショナルな部分を尊重しているように感じます。
同時に、ご家族やパートナーとの時間を大事にしている人が多いです。例えば、ご家族の体調不良時には気兼ねなく業務を抜けられますし、そういった姿勢を大切にしているカルチャーもある。それは、プロフェッショナルであるがゆえに、ご家族を優先しつつ、任された仕事はきっちり全うしてくれるだろうという信頼感があるからだと思っています。そうじゃないとフルリモート/フルフレックスという環境は成り立ちません。
スキルセットでいえば、デザインについて基礎からしっかり学んでいて、設計やリサーチなどの上流も経験があると活躍の機会が多いです。ただ、それ以上にサービス精神が旺盛な方だと嬉しいです。JDDは、自分たちでどういう組織にしていきたいか話し合いながら、自分たちで自分たちが働く環境をデザイン(設計)している会社です。仲間のため、MUFGのため、その先のお客さまのことを常に考えて動ける人はとてもフィットすると思います。
小島さん:一人でも多くの銀行員が、インハウスデザイナーを担えるようにしていきたいです。ナレッジやスキルを定着させる素地は少しずつではありますが着実に積み上がりつつあるので、100点の完成度は目指せなくても、お客さまのために少しでもより良くしようと考え、デザインできる人が増えたら嬉しいですね。また、お客さまの声に基づいたUX改善もまだまだ加速させていきたいと思っています。
これまで以上にJDDの力も借りながら、これらの活動を通じて、組織全体を変えるきっかけにしていきたいですね。

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この記事を書いた人

大畑 朋子
1999年生まれ、神奈川県出身。フリーランスライターとして、ベンチャー・スタートアップのイベントレポート、プレスリリース、コラム記事の作成など広報の一部を担う。興味・関心はビジネス、AI、お茶など。
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