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金融業界における顧客志向の組織づくり: MUFGの戦略子会社Japan Digital Designが目指す「金融の新しいあたりまえ」

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インタビュー
2024/3/21
近年、金融業界は顧客体験の向上に向けてデジタルシフトを推し進めています。Japan Digital Design(ジャパン・デジタル・デザイン、以下JDD)も、それらに取り組む企業の一つ。三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下MUFG)の一員として、データ分析と活用、体験設計(デザイン)、ITエンジニアリングの技術を組み合わせ、MUFGグループが提供する各種金融サービスをより便利にするためのデジタル・ソリューションを提案、提供しています。
そこで、デザインチームであるExperience Design Division (エクスペリエンス・デザイン・ディビジョン、以下XDD)のDiv.Headを務める梶田さんに、JDDに転職された理由や、JDDを通じて金融領域の体験設計に取り組む魅力についてお話を伺いました。
梶田 健介(Kensuke Kajita)| Japan Digital Design株式会社
Experience Design Div.(XDD)
Head of XDD
アメリカの大学で広告戦略やインタラクションデザインを専攻。帰国後はデザインエージェンシーでUIデザインを担当し、位置情報サービスを提供する企業に転職。その後、楽天グループ株式会社を経て、2020年にJapan Digital Design株式会社に入社。
Experience Design Div.の Headとして13名のメンバーを率いる。(2024年3月時点)
MUFGが自ら変革を起こそうと、各分野の専門家を集めてJDDという新たな戦略子会社を設立したことに興味を持ちました。2019年当時、新規事業の立ち上げ*や、AIなどの最新技術を活用したR&Dに取り組んでいることに面白さを感じました。
*2024年3月時点では、JDD独自の新規事業には取り組んでおらず、MUFGの新規・既存事業へのソリューション提供に注力
前職の楽天グループで得られた経験を活かせるかもしれないと思ったことも転職の決め手の一つです。以前は、グループ横断的に様々な事業の体験を向上させるプロジェクトに関わっており、その仕事にやりがいを感じていました。JDDが掲げる「金融の新しいあたりまえを創造し人々の成長に貢献する」というミッションの達成に向け、自分の知見を活かして貢献したいと思いました。

経済産業省と特許庁が2018年に発表した『デザイン経営』宣言を受け、今後様々な業界でUXなど体験をデザインすることが世の中で求められるようになると感じていました。前職で培った自分なりの成功体験を活かし、社会インパクトを生み出したい。生活に身近な領域で、体験設計の観点から改善余地のある業界を検討し、たどり着いたのが金融業界でした。
金融は社会インフラの一つであり、顧客の資産を堅牢に守らなければならず、関連する法律に沿った手続きが規定されており、ミスが発生しにくいオペレーションで運営されています。他方、各種サービス自体もこうした考え方などに起因し、提供者目線で構築されているように思います。だからこそ体験設計の技術を用いることにより、金融の安心感を担保しながら、体験を棄損しないプロダクトを提供できるのではないかと思い、JDDへの転職を決めました。
Fintechというキーワードが世に出た頃、MUFGの中に「イノベーション・ラボ」と呼ばれる、JDDの前身となる内部組織が立ち上がりました。そこでは新たな金融サービスの創出に向けて約1年間、試行錯誤を繰り返していたのですが、銀行員中心で構成されるチームではなく、エンジニアやデザイナー等の専門家とともに事業開発していくために、外部組織として新たな会社を立ち上げることになり、2017年10月にJDDが設立されました。
初めは、独立した会社としてJDDはゼロイチでの新規事業の立ち上げを目指し、一部MUFGを支援する、という活動をしていました。例えば、 ATM機器を積みこんだ自動車のバンを限界集落に運んだり、教育機関向けの決済サービスを検討したりしました。
2021年4月には事業の方針を転換。JDDの強みとMUFGのアセットを活かしてMUFGのサービスやプロダクトを共創するようになりました。現在、JDDはMUFGのDXを牽引・並走する役割を担い、XDDはMUFGの体験設計専門チームとしてグループの新規事業の立ち上げや既存サービスの改善、法人向け・個人向け・従業員向けなど、メガバンクならではの多様なタッチポイントの体験設計に取り組んでいます。
JDDは「金融の新しいあたりまえを創造し人々の成長に貢献する」ことをミッションに掲げています。そして、実現したい未来となるビジョンとして「顧客&データ起点で金融体験をアップデートする」と掲げ、データ分析や調査をもとにお客さまや環境の理解を深め、より良い金融体験を創造することを目指しています。そのために専門領域の技能を組み合わせて、MUFG各社と共に進化することで金融体験をアップデートし続け、好循環が生まれるべく取り組んでいます。
大きく2つの役割があります。一つは、 MUFGが展開する様々なサービスやプロダクトのチームの一員として体験設計から実装、リリース後の継続的なグロースまで担う MUFGの インハウスデザインチーム としての役割です。もう一つは、 各事業からは独立したグループ会社という立場を活かし、客観的かつフェアな観点からプロジェクトを成功に導くための本質的なアプローチを提示する、組織横断型の体験設計のスペシャリストチームという役割があります。当事者としての立場と客観的な立場の二つを持ち合わせたユニークな組織の位置づけになっていると思います。
これまで保守的と思われていた金融業界ですが、最近では新しいサービスやアプリをリリースする金融機関が増えています。これまで以上に顧客を起点にした体験設計の重要性が増している中、JDDにおいても三菱UFJ銀行を中心に体験設計を取り入れたサービスやプロダクトを開発する機会も多いです。
XDDが MUFGの体験設計専門チームとして掲げるビジョンは「MUFGの中で体験設計があたりまえに行われることを目指す」こと。設立当初より、私たちの活動がMUFGのみなさんにも徐々に浸透してきて、日々連携が深まっていることを感じています。私たちとしてもより良い連携を目指し、常に変革期にいるイメージです。
今後も日本の金融体験に大きなインパクトを与えるような取り組みに携われる機会がもっと増えていくと考えています。MUFGで新しい金融体験の当たり前を作っていくことを通じて、大きな組織を変革していくことに共感していただける方であれば、今がデザイナーとしてジョインする一番面白いタイミングだと思うので、ぜひ一緒に前向きなチャレンジをしませんか。
2023年7月に、相続の手続きをサポートする「そうぞくガイド」をリリースしました。三菱UFJ銀行では年間約15万件以上の相続受付を行っていますが、これまでは三菱UFJ銀行のサービスや手続きの範囲内でしかお客さまの課題に応えることができていませんでした。その範疇にとらわれることなく、お客さまの視点から相続のお悩みを解決しサポートしたいという想いで、銀行チームと共にJDDが体験設計の上流から関わり、リリース以降もグロースの支援をしているサービスです。
相続はご家族ごとにお悩みは異なり、必要な手続きが変わります。中には税理士や弁護士といった専門家の支援が必要な場合もあり、複雑で難解な手続きの負担をどのように減らすことができるか顧客起点でサービスのあり方を検討しました。
「何から手を付けて良いかわからない」「どこまで何をしたら良いかわからない」という困りごとや、プロの力を借りたいといったニーズを踏まえ、質問に回答することで自分にあった「やることリスト」の作成や、弁護士や税理士といった相続の専門家を検索できる機能も用意し、受容性検証を元にサービス開発に取り組みました。
本サービスでは我々デザインチームに加え、社内のエンジニアチームが連携して、お客さま視点での体験設計・画面デザインからプロダクト開発まで一気通貫で関わっています。
JDDに所属するプロフェッショナルな人材が集結したからこそ、約10カ月と、銀行で実施される一般的なプロジェクトよりも短期間のリリースが実現できました。

既存サービスの改善や新たなサービスの立ち上げを実行しても、MUFG全体で顧客体験を浸透させるためには、単発のプロジェクトだけでは限界があります。そこで、グループ会社のポジションを活かした顧客志向の組織づくりへのアプローチが非常に大事だと考えており、「コミットメント」「仕組み化」「文化醸成」の3つを意識しています。
「コミットメント」では、経営層自らが顧客体験の品質向上の活動への積極的な姿勢を見せ、顧客起点による活動が事業成長につながることを示し、顧客体験に取り組むことの動機づけをすることが重要です。
次に、デザインプロセスを定義し、ノンデザイナーでも使えるツールや、ガイドラインを提供するなどして、組織的に顧客体験の向上に取り組む事ができる「仕組み化」が浸透の必須条件です。
そして最後に「文化醸成」。仕組み化しても、継続性が課題になりがちです。体験設計を担う組織をグループ内に作ることも必要ですし、研修やトレーニングを取り入れて、定期的に体験品質のモニタリングとその改善活動を定着させる制度づくりなど、環境構築が欠かせません。
この3つに取り組むことが、顧客に新しい金融体験を提供するための顧客志向の組織への変革につながると考えています。

いえ、XDDでは金融業界でデザインを担当されてきた方はほとんどいません。もちろん、金融と接点のある業界から転職してきた方もいますが、大半は異なる業界から来た方です。MUFGからの出向者もいるので、金融の専門家と体験設計の知見を持つデザイナーがお互いに協力し合いながら、仕事に取り組んでいくことが可能です。とはいえ、最低限の金融の知識はあるに越したことはなく、社内の勉強会や知見共有会を積極的に実施しています。
フルリモート・フルフレックスで、柔軟性の高い業務環境です。デザインチームは基本的に在宅で仕事をすることが多く、子供の朝夕の送り迎えをしながら働くことや、役所が空いている時間に所用を済ませているメンバーもいます。自律しているプロが集まっているからこそ、柔軟な働き方を皆が意識して支えています。
カルチャー面は典型的な金融機関とは異なったベンチャー気質の社風です。企業文化の醸成に取り組むコーポレートカルチャー室というチームもあり、「常に学び早く実践する」「オープンマインドである」「プロフェッショナルである」というJDDのValuesを体現していくための各種施策や、カルチャー醸成に取り組んでいます。デザイナーも従業員向けの体験設計を行い、コーポレートカルチャー室と協業しながら従業員の体験向上に努めています。

デザイナーがJDDの従業員のジャーニーマップも作成するなど、人を大事にした組織づくりは会社設立当初から根付いています。 JDDと直接的な接点を持つカジュアル面談から、入社の初日、初めてプロジェクトに参画する日などのフェーズに分けて、そのタイミングに起きる不安や困りごとを可視化しています。デザイナーとコーポレートカルチャー室が一緒になって、オフィスや業務ツール、イベントなど様々な観点からソリューションを検討し、日々従業員の体験設計に取り組んでいることも、JDDの特長です。
実際にデザイナーの業務内容は、MUFGのDX推進が約7割程度、残りがコーポレートカルチャー、R&D、チームビルディングなどの比率に振り分けられています。

そうですね。JDDらしい取り組みの一つとして「JDD Coin & JDD Store」があります。
社員同士のカジュアルな繋がりや活動を促進することを目的として、金融の会社らしく社内通貨の発行・流通を通じた取り組みができないか、という発想から始まったものです。イベントの参加など社員間のコミュニケーションを促進すると、デジタルでコインを受け取ってJDDオフィシャルグッズと交換できます。
導入当初はアクリルの物理コインを流通させていましたが、リモート下での流通促進を目指し、現在はSlackのスタンプに置き換え、日々の「ありがとう」や「おめでとう」の気持ちをお互いに気軽に送りあっています。JDD Coinを発行しているメンバーをJDD総裁と呼び、JDD Coinの社内流通額をコントロールするなど、盛り上がっていますね(笑)。
JDD Coinは、エンジニアメンバーがシステムを実装し、デザイナーが体験設計を実施しました。みんなで協力しながら作り上げているのも、JDDらしさが現れているように感じます。この取り組みは、優れたデザインを表彰する「iF Design Award」や「Red Dot Design Award」も受賞しました。


「金融の新しいあたりまえを創造し人々の成長に貢献する」というミッションや「常に学び早く実践する」「オープンマインドである」「プロフェッショナルである」というJDDのValues (行動指針)に共感・体現いただける方、特にデザインを通じて事業や組織、社会にインパクトを与えたい方にぜひ来てほしいです。私自身、MUFGを通して日本の金融体験を変えていけると信じています。
また、私たちが担当するデザイン領域は、先ほど紹介したそうぞくガイドのようなサービスの立ち上げもあれば、企業の財務管理者が使うオンラインバンキングサービスの改善、グループ内の従業員が利用するトレーダー向けの業務ツールなど、MUFGと接点を持つ様々なユーザーと異なるステージのサービスやプロダクトが対象となります。
また駅前にある支店や窓口といった物理的なタッチポイントも含め、こういった多様なタッチポイントに関心を持てる方や、新しい領域にチャレンジしてキャリアの幅を広げたい方にぴったりです。
さきほど申し上げたとおり、UIやUXのデザインのご経験があれば仮に金融の知識がなくとも、後からキャッチアップは可能です。デザイン思考に基づいたデザインプロセスを経験している方であれば、さらに活躍しやすいと思います。事業会社で顧客起点の体験設計を担当してきた方や、クライアントワークを通して体験設計の観点からコンサルティングをしてきた方も来ていただけると嬉しいですね。
私自身は、組織を変えていくことに今まさにチャレンジしています。前職の楽天では、各事業のNPS向上の支援など組織のUX Maturity(成熟度)を向上させる取り組みに広く関与する機会に恵まれ、楽天グループ横断のデザインシステムの立ち上げと導入の推進や、グループ横断の定期的なユーザビリティテストの制度化の推進など、組織をデザインの対象とした取り組みをしてきました。
MUFGでも顧客起点の体験設計が日々の業務の中で自然と組み込まれることを目指し、事業側のメンバーと様々な案件を通じて体験設計の意義や成果を実感してもらえる事例づくりが重要だと考えています。
金融のサービスや商品は競争が進むとコモディティ化しやすく、差別化が難しい領域だと考えています。だからこそお客さまが使い続けたくなるような優れた顧客体験を提供することが非常に大事です。生活のお金にまつわることは、MUFGのサービスにまとめておきたいと思ってもらえるような、そんな新しい金融のあたりまえを創っていきたいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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この記事を書いた人

大畑 朋子
1999年生まれ、神奈川県出身。フリーランスライターとして、ベンチャー・スタートアップのイベントレポート、プレスリリース、コラム記事の作成など広報の一部を担う。興味・関心はビジネス、AI、お茶など。
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