
今回お話を伺ったのは、株式会社キュービック(以下キュービック)エクスペリエンスデザインセンター(以下XDC)・UXチーム / サービスデザインチーム・マネージャーの伊藤智之さん、同じくXDC・UIチーム・マネージャーの原崇さんです。
ReDesignerは先日、キュービックでCDO(Chief Design Officer)を務める篠原さんにインタビューを行い、デザイン組織の目指す先や成長の道のりを振り返ってもらいました。本記事では、XDC内各チームを牽引する伊藤さんと原さんに実際のXDC及びチームのカルチャーや業務内容、将来への展望などをお伺いしました。
篠原さんの記事はこちら:人の本質に向き合い、社会の段差を埋めて摩擦をなくす。キュービックCDO 篠原 健さんの想い
伊藤智之(Ito Satoshi)|株式会社キュービック エクスペリエンスデザインセンター UXチーム / サービスデザインチーム マネージャー
イラストレーター・デザイナーとしてキャリアをスタート。人材育成のコンサルティング会社にてソリューション企画やMBA養成講座のe-learning企画・設計などの業務に従事。その後、大手広告代理店グループ会社にてクライアントの新規事業開発、サービスデザイン、オウンドメディアリフレーミングなどに携わり、2021年より現職。UXデザイナーのマネジメントを行いながら、生活者の思考プロセスやコンテクストに寄り添う体験設計業務をリードしている。
原崇(Hara Takashi)| 株式会社キュービック エクスペリエンスデザインセンター UIチーム マネージャー
モバイルコンテンツ会社でUI/UXデザイナー兼ディレクターとしてさまざまなプロダクトに携わった後、ソーシャルゲーム会社にて、プランナー兼UI/UXデザイナーを担当し新規のネイティブアプリをリリース。その後、コンテンツ会社にてクリエイティブ領域のマネジメントに従事。前職のネクストビートでは、プロダクトを横断しデザイン領域全般を担当しデザイングループのマネージャーに着任。2021年2月キュービックに入社。
原さん:僕は、制作会社の経験がほぼ無く、事業会社を中心に渡り歩いてきました。様々な会社を経験しつつも、職種はインハウスデザイナーとして約16年、事業を加速させるためのデザインを担当してきました。事業内容はエンタメ、人材、ゲームなど様々で、デザインの幅も事業会社を渡り歩きながら身につけました。
直近は数社でデザインマネージャーを担っており、クリエイティブだけでなくマネジメントを通して組織の強化や人材の育成、事業戦略に携わっています。
伊藤さん:僕は新卒から現在までの約20年間、制作やクリエイティブの領域で受託とコンサルティングを行ってきました。会社によって事業は様々で、人材育成のコンサルティングやe-learning教材を提供する会社で教材制作をしたり、前職の株式会社博報堂アイ・スタジオでは国内商社の新規事業における体験設計・タッチポイント設計や、自動車メーカーや電力小売事業会社のオウンドメディアのリフレーミングやリニューアル、飲料メーカーのサービスデザインなどをしてきました。
キュービックでは、UXデザイナーのマネジメントをしながら、新規事業開発業務をメインに担当しています。
原さん:幼少期からものづくりが大好きで、国語や理科よりも図工の時間が楽しみな子供でした。小学校から高校1年までは体育会系の部活動を行っていたのですが、高校2年のちょうど進路選択の時期になって、テニス部から美術部に転部しました。胸に手を置き自分の将来を考えたところ、「もっとものづくりを学びたい。ゆくゆくはデザイン関係の職業に就きたい。」という答えに行き着いたからです。
こうしてデザイナーになる意志を固め、デザイナーとして就職するために上京し、専門学校に通いました。卒業後は、1社目からIT・WEB業界に入り今に至ります。根幹は、ものづくりが好きでデザインをすることで16年生きてきた人間ですね。

伊藤さん:僕は美術が得意で、小学生のときには市のコンクールで入賞することもありました。しかし、部活動ではずっとサッカーをしていたこと、高校では進学校に入ったことにより徐々にアートから離れていきます。
その反動か、大学入学後は映画を作る部活に入り4年間没頭していました。デジタルではなくあえてフィルムを使って撮影したり、1人で黙々と編集したりする時間は本当に楽しかったです。そして、この部活がキッカケで「僕はクリエイティブの世界で食べていくんだろうな」という気持ちが定まっていきましたね。
原さん:元同僚が働いていたこともあり、キュービックのことは「メディア発信が面白く長期インターン生など若い人が活躍している会社」だと認識していました。
キュービックへの入社を決めた理由は、上記に加え、前職時代でも共に働きCDOとして活躍していた篠原がキュービックへ転職したことです。前職では1年しか篠原のもとで学べなかったため、もっと戦略や考え方を吸収したいという一心でキュービックへの入社を決めました。
また、前職は定量や数字的なものを大切にする会社でしたが、キュービックはマーケティングを強みとする会社でありながら定量はもちろん定性の部分も非常に大切にする会社です。そんな定性的なアプローチを学びたいという想いも入社理由の1つですね。
伊藤さん:キュービックには、篠原がきっかけで出会いました。篠原とは前職の株式会社博報堂アイ・スタジオでも一緒に働いており、同じ案件を担当することは少なかったものの相談に乗ってもらう機会が多く、許容力のある頼れる先輩だと感じていました。
篠原が転職してから10年ほど連絡を取り合うことはなかったのですが、ひょんなことからSNSアニメ「モモウメ」を篠原が手がけていることを知り、初めてキュービックという会社を知りました。

その後、僕自身も新規事業や新サービスの立ち上げに挑戦したいという想いから転職を考え始め、色々と調べていました。すると「モモウメの会社」と書かれたキュービックの求人情報に辿り着いたのです。そこから篠原に連絡すると、キュービックはちょうど第3創業期というフェーズで、既存メディアを成長させつつ新サービス開発に注力していることがわかりました。まさに今自分がやりたいことに挑戦できる環境があると感じ、入社を決めました。
原さん:XDCには、UIデザインチーム、UXデザインチーム、サービスデザインチーム、ブランドデザインチームの4つのチームが存在します。業務フローは大きく分けて2軸あり、既存事業をグロースさせる通常施策と、適任のデザイナーを集め目標達成を目指すプロジェクトです。
僕が所属するUIチームには12名のデザイナーが所属しています。直近で行った大きなプロジェクトは「コーポレートサイトのリニューアル」で、「何をするのか」という企画・構成段階からデザイナーが入り、その後エディター、エンジニアを巻き込みながら推進していきました。
参考:“らしさ” を “らしく” 。コーポレートサイトリニューアルまでの道のり
キュービックでは、デザイナーが自ら課題を発見し、企画を立て推進することが多くあります。任された仕事でいいものを作るのはもちろんのこと、自ら仕事を生み出しいいものを作る姿勢が定着しているのはキュービックの魅力ですね。
伊藤さん:僕の所属するUXチームには、社員が3名、内定者インターンが2名、学生インターンが1名業務委託が1名の計7名が所属しています。
仕事の多くは、事業部からの「こういうことがしたい」という抽象的な依頼に対し、依頼内容を整理することから始まります。以前、「市場が変化しているので新しい訴求点を開発したい」という依頼がありました。しかし話を整理していくと「ターゲットユーザーが変化してきており、そのユーザー層への適切なマーケティングコミュニケーションを知りたい」という依頼だと分かったのです。
依頼内容を整理した後は、新しいターゲットユーザーはどんな人なのか、価値観や行動のリサーチをしていきます。リサーチを経てターゲットユーザーへの適切なメッセージが分かると、最終的にクリエイティブに落とし込むことができるのです。
伊藤さん:まだ完全には、UXデザインを社内全体に浸透させきれていないと感じています。「何ができるのか」「どんなバリューがあるのか」をメンバーに伝えきれていません。そのためUXチームはより能動的に仕事を作りに行く必要があると考えています。
役員や事業部長など経営に近い方々はUXデザインを大切なものとして捉えてくれており、期待値も高く相談もよくもらいます。しかし現場からは相談や依頼をもらうことがまだ少ない。そのことを代表の世一に相談すると「みんなは、UXデザインが目先の数値目標にどうヒットするのか想像できていないだけだと思うよ」と言われ、とても納得できました。
今後は、僕の前職の事例やチームメンバーが担当した業務を事例として、数値によってキュービックへの貢献を見せていければと思っています。そしてキュービックの社内全体へ、UXデザインは定性・定量の両面から価値あるものだという認識を広げていきたいです。
原さん:UXデザインと比較すると、UIデザインは有形のものを作るので「何ができるのか」という点の理解は浸透していると思います。加えて代表の世一は「みんなデザイナーだ」と公言しており、僕たちのものづくりの文化や1つ1つの品質を高めようとする姿勢にはとても理解がありますね。しかし作るだけでなく、作ったものが事業にどう貢献するのか、ユーザーへどのような価値体験を提供するのかという部分はまだまだ考え、伝えていく余地があると考えています。
伊藤さん:CDOのいる組織では、広義のデザインが事業に対し新たな価値を生み出すチャンスがありますし、提案から実行までの意思決定が非常に早いです。僕らデザイナーからの提案の多くはCDO篠原の意思決定ひとつで前に進められる。このスピード感は魅力です。
逆にCDOのいない組織ではデザインの価値を理解してもらうまでに大きなエネルギーを使います。提案するルートが複雑な上に、提案が通らないことも多く、通ったとしても多くの時間がかかってしまう。キュービックでは、提案した際すぐに「費用対効果はどれくらいあるのか」と定量の効果を問われることもなく、目的が間違っていなければ「まずはやってみよう」となる。デザインの力を信じて、デザイナーに大きく投資してくれていると感じます。それはやはり、CDOの存在あってこそかなと。
原さん:CDOがいることで、まず、デザイン組織がしっかりと形成されますよね。僕はそれがすごく魅力的だなと思います。事業も人事も、会社作りのすべてがCDOの存在により、前進していると感じていますね。会社としてのブランディングも着々と進んでいます。
事業は伊藤の言う通りですが、デザイナーとして感じる組織面の魅力は、採用からオンボーディング、育成を経て活躍というところまで、デザイナー一人ひとりの中長期的キャリアに目を向け、それを全力で応援してもらえるところですかね。
伊藤さん:「本質」という言葉が盛んに飛び交う組織だと思います。だからこそ、権威主義や社内政治もありません。本質を求める人は、自分を権威から完全に切り離した状態で「今は本来どうあるべきなのか」と考えることができますよね。

篠原ともつい先日、これからも「意思決定する人間の周りにイエスマンを置かない」ことを徹底しようと話していました。人は自分だけの目標やうまみに目がいくとイエスマン化します。それが施策のぶれや権威主義的な組織に繋がり、本質的な価値想像を遠のけてしまう。XDCは今もこれからも、忖度なく本質を考えられる組織として、価値創造にこだわり続けようと思っています。
原さん:今もそうであるように、価値創造にこだわるからこそ、XDCは多様性を認めあえる組織でありたいです。デザイナーにもそれぞれ得意不得意がありますが、「得意を見つけてものづくりをしていく」カルチャーを育み続けたいと思います。
伊藤の話す内容と重なりますが、フラットさも大切にしていきたいですね。年齢も役職も関係なく対等に話し合えるのはXDCの良さです。どれくらいフラットかというと、CDOという役職もあり一般的には1番権威性も発言力も高い立場にあるはずの篠原が、自ら「社内では俺が1番権力も発言力も低いよ」とぼやいているほどです(笑)篠原は常に現場目線で物腰も柔らかいため、みんなが意見を言いやすいのだと思います。
伊藤さん:意見はすごく言いやすいですよね。自分自身、そうした篠原の人柄には助けられています。
多様性でいうと、思考型デザイナーの承認も1つの例だと思います。UXデザインチームの中にも、体験構想や機能要件など無形のものをデザインするのが得意な人と、画面の設計書など有形のものをデザインするのが得意な人がいます。思考型デザイナーは前者で、XDCでは思考型デザインのみを専門に行う人がいてもいいと考えているのです。
もちろん画面設計も非常に重要なのですが、1番の根幹は構想など無形の上流部分です。意外と事業会社も受託コンサル会社も、有形のデザインをしなければならない会社は多いと思います。しかしキュービックのXDCは、上流にあたる無形のデザインを考えられるのであればその領域で誰にも負けないパフォーマンスを発揮することの方が重要、有形のデザインはよりそこに強みを持つ誰かの力を借りればいいという考え方を持つ組織ですね。
原さん:チームとしては、デザイナーとして切っても切れない「品質」を高め、磨いていきたいです。また、キュービックは広義のデザインを目指しているので、有形のデザインに留まらず企画や分析などの無形を含めた”デザインの幅”を広げていきたいと考えています。
個人としては、来年にはXDCのnoteを開設し、僕や篠原、新卒も含めキュービックのありたい姿や取り組みを積極的に発信していきたいです。noteを通して、僕らだからこそ提供できる価値をデザイナーへ届けたいですね。
伊藤さん:既存事業でも新規事業でもマーケターとデザイナーが共創し、新しい価値や体験を生み出すことでビジネスの成果に貢献していきたいです。具体的には、メディアやプロダクトにおける課題の策定や施策の立案を、UXリサーチなどの定性アプローチで実行するイメージです。そのためには、少数かつ若手のメンバーに対してOJTを繰り返し育成すること、UXデザインの入力と出力の幅を見せていくことが大切だと思っています。今は、”LPを作るためのUXリサーチ”を行うことが少なからずありますが、本来出力の先は様々であることを教えていきたいですね。
個人としては、兼任しているサービスデザインチームで手がけている新規事業や新サービスを形にしたいです。前職ではクライアントワークだったため、事業やサービスにおける主体的な意思決定に関与することができませんでしたが、キュービックは自社サービスを持っているためぜひ挑戦したいです。
伊藤さん:自分の目標や成果指標の数字を上げるためではなく、まず「僕たちのメディアやプロダクトに触れる人はどんな人で、どんなニーズを持っているのか」を起点にして考え、行動できる人とUXチームを作りたいです。自分たちが向き合っている人を「前進させられているか」「いい効果を与えられているか」と考え抜いた先にビジネスとしてのリターンが存在すると思っていて、その順番、循環を考えられる人と仕事がしたいですね。
原さん:UIチームは、「成長し続けたい」「人々を豊かにしたい」そして根幹である「デザインの力を信じている」という想いを持つ人と作っていきたいです。スキルも非常に大切なのですが、スキルだけでは他責思考に陥りやすく、本質的な価値に目を向けられなくなります。ぜひ、強い想いと高い意欲のある人と一緒に働きたいです。
伊藤さん:デザイナーとしての自分の可能性をもっと信じてほしいです。これまで沢山のデザイナーと仕事をしてきましたが、自分を過小評価しているデザイナーが多いと感じています。
デザイナー以外の職種の方々と協業をすると「なぜファクトや起点になるデータがないのに、ものが作れるのか」とよく驚かれます。すごく小さなファクトや情報から想像を広げて構想し、最終アウトプットに落とし込めるのはデザイナーならではだと改めて感じました。また、想像力を活かした初期段階の立案もデザイナーは得意だと思います。普段、他職種と協業することの少ないデザイナーは感じにくいかもしれませんが、“想像できる”、“ものを作れる”ことは特殊スキルなんです。
現在世の中では、仮説ベースでも「ユーザーはどんな人か」「こんな思考でこんな行動をするだろう」とストーリーを描き、「だからこのデザインが必要」と説明することが求められています。これは他の職種の方以上に、クリエイティブの世界で生きるデザイナーが力を発揮できる領域だと考えています。デザインする力、自分たちの持つ力は「すごいんだぞ」という気持ちを忘れないでください。
原さん:これまではCMOやCTOの下で働いており、僕自身「経営層にはデザイナーの想いやデザインの可能性を理解してもらいづらい」と感じることも多々ありました。しかしそこに、CDOがいたならば…?キュービックにはCDOがいます。僕らの記事を読んでくださった皆さんにはぜひ篠原の記事を読んでいただき、CDOがいる組織がどんなものなのかを感じていただければと思います。
篠原さんの記事はこちら:人の本質に向き合い、社会の段差を埋めて摩擦をなくす。キュービックCDO 篠原 健さんの想い
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
現場のデザイナー視点を持つCDOの存在や、フラットで多様性を認めるXDCというデザイン組織。そうした基盤の上で、純粋にデザインの本質を追求するキュービック社現場デザイナーであり、チームマネージャーであるおふたりの、働く姿勢や想いをお届けできていたら嬉しいです。
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この記事を書いた人

ReDesigner
ReDesignerは、デザイン会社によるデザイナー向けのキャリア支援サービスです。 企業とデザイナーの間に入り、独自のオンラインアンケートや面談を通じて、 デザイナーの特性やキャリアの指向性を理解した上で適切なマッチングを行います。単純に紹介をするだけでなく、デザイナー特化型の求人票も用意しており、デザイナーが働きやすい環境設計も支援します。
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