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社会の複雑さに寄り添い、思考を深めるためのデザインとは。KOEL 桑原真一郎さんがNTTコミュニケーションズで実現したいデータ×デザイン

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インタビュー
2024/10/29
今回インタビューをしたのは、NTTコミュニケーションズのデザインスタジオ「KOEL」でUXデザイナーを務める桑原真一郎さんです。
トヨタ自動車でデータアナリスト・ユーザーリサーチャーとしてキャリアをスタート。その後、デザインを学ぶためにイリノイ工科大学に留学され、デザイナーへと転身された異色のキャリアを歩まれている桑原さんは、数ある企業の中で、なぜKOELを選んだのでしょうか。データ×デザイン領域への情熱と、これからのビジョンについて伺いました。
桑原 真一郎(Shinichiro Kuwahara)|NTTコミュニケーションズ株式会社 KOEL Design Studio UXデザイナー
イリノイ工科大学デザイン修士課程(Master of Design)修了。
新卒でトヨタ自動車に入社し、海外市場の販売・生産、マーケティング戦略の立案、 環境車に関する顧客インサイトの発掘、競合分析など、幅広い事業・商品計画立案に従事。
デザイン留学後、米国医療機関のメイヨークリニックのデジタルヘルスセンターにあるデータ分析部署に一人目のデザイナーとして所属。 人間中心デザインをプロダクト開発に導入、データ分析の結果をビジュアル化し、 医療従事者の業務効率化や多様な人材の活用を推進。2024年8月にKOELに参画した。
将来的に海外勤務の可能性を視野に入れていたので、グローバルに事業を展開している企業で働きたいという気持ちがありました。また、学生時代に所属していた合唱サークルでの経験から、チームでひとつの目標に向かって協力し合う仕事が自分に向いていると感じていたので、ものづくりをするメーカーが自分には合っているのではと考えていたんです。
やりたいことと向いていることを考慮して就職活動をした結果、ご縁があってトヨタ自動車に内定をいただけました。入社後は調査部への配属がきまり、新たなキャリアをスタートすることとなりました。
もともと調査部の存在自体は知らなかったんです。入社後のオリエンテーションで初めて調査部の概要を聞き、統計学をもとに分析したり、ユーザー調査をしたりする部署だと知り、未経験ながら、面白そうだと感じて配属希望を出しました。
結果的に、留学するまでの9年間、調査部でデータアナリスト・ユーザーリサーチャーとして働きました。主な仕事は大きく三つあり、一つは、販売や生産計画の前提となる市場規模を統計手法を用いて予測すること。二つめに、ユーザーにインタビューやアンケートを行ない、その結果を商品計画に反映させるマーケティングリサーチ。 そして三つめは、競合分析や業界動向調査です。
調査部での専門的な業務内容に大きなやりがいを感じていましたし、凝り性な性格も相まって、「データ」をキャリアの中心に据えるという、私のキャリア形成のきっかけになりました。

きっかけは、株式会社BIOTOPEのCEOである佐宗邦威さんの著書『21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由』との出会いでした。佐宗さんは、外資系メーカー企業でマーケティング経験を経て、デザイン思考を学ぶためアメリカに留学された方なんです。その経歴を著書で知ったとき、まさに目から鱗が落ちるような感覚を覚えました。
というのも、当時データアナリストとして働く中で、データ分析のスキルは向上していましたが、同時に限界も感じていたんです。データを分析して起きていることを説明できても、その結果を基に「分析の先」にある具体的な行動や戦略・商品アイデアを提案することが難しくて......。そこにもどかしさを感じていました。
そんなときに、佐宗さんの著書を通じて、デザイナーではない私でもデザインという新しい道があることや、社会人を受け入れてくれる海外の大学があることを知り、これが自分の抱えている課題の突破口になるのではと思うようになりました。

三つの決め手がありました。まず、佐宗さんの母校であることへの信頼感。次に、デザインのバックグラウンドがない学生も受け入れてくれる間口の広さ。そして他大学と比べ、2年半という充実したプログラム期間があったことです。私のような異分野からの転向を考えている志望者にとってハードルが高くなく、より深くデザインを学べて実践的な経験を積めるこの環境は最適だろうと考え、決めました。
結果的に、イリノイ工科大学の柔軟なカリキュラムのおかげで、情報デザイン、インダストリアルデザイン、インタラクションデザインといった、多岐にわたる分野を学ぶことができました。
ザック・ピノ助教授との出会いが、私のキャリアに大きく影響を与えました。ザックは私と同世代でありながら、はやくからデザインとエンジニアリングの両分野に精通し、データを活用したデザイン研究で活躍している方です。
30歳を超えてからの留学で、一から積み上げて専業のデザイナーになることの難しさを感じていた私にとって、ザックの専門分野であるデータビジュアライゼーションやジェネラティブデザインに新たな可能性を感じました。この分野で彼は、複雑なデータを視覚的に美しく、直感的に理解できる形で表現し、データの専門家ではない人でも内容を理解し意思決定に活かせるデザインや、アルゴリズムやテクノロジーと組み合わせることで、個々のユーザーごとに異なる状況に対応し、結果的に多くの人に届くデザインを目指していました。
この分野であれば、私がこれまで培ってきたデータ分析のスキルと、留学で学んだデザインスキルを組み合わせて仕事ができると感じました。複雑な分析結果を視覚的な形で表現したりユーザー体験に落とし込むことで、様々な人により効果的に伝える。これは、まさに私が模索していた「分析の先」の形でした。

むしろ楽しかったです。在学中にプログラミングも始めましたが、調査部でロジカルシンキングを鍛えられていたこともあり、抵抗なくできました。それ以上に、自分のアイデアを具体的な形にする過程が楽しかったんです。
それまではデータを分析し解釈する、いわば頭を使う仕事が中心でしたが、デザインは手を動かし、具体的なものを作り上げていく。アイデアを形にすることはこんなにも達成感があるのかと新鮮さや面白さを知りました。

桑原さんの作品⓵『Community-Driven Cartography from Memiro Project』
個人の行動データとコミュニティの知見を活用し、支援が必要な人々(特に新しい土地に引っ越してきた性的・人種的マイノリティ)向けの安全マップを作成するプロジェクト。公共データとユーザーが入力したデータを組み合わせ、目的地までの最も安全なルートをモバイルアプリで提案。ソーシャル・インクルージョンと個人のウェルビーイング向上を目指している。リサーチ・コンセプトデザイン・プロトタイピング時のフロントエンド実装を担当。

桑原さんの作品②『Legacy Infrastructure from Memiro Project』
高齢者や認知症の方々の記憶をサポートするためのシステム。撮影された画像や動画を利用して、思い出を補完。また画像認識技術で写真から感情を読み取り、イチョウの葉を用いて喜怒哀楽を表現。出来事を思い出すだけではなく、その時の感情も振り返ることができる。プロトタイピング時のフロントエンド実装を担当。
大学院卒業後は、培ってきたデータ分析力と身につけたデザインスキルを活かして、アメリカの医療機関でデジタルプロダクトデザイナーとして勤務しました。医師向けのタレントマネジメントシステムのUI・UXデザインからフロントエンド実装まで、幅広く担当していました。
きっかけは、働き方と残りのキャリアについて考えたことでした。私を前職の医療機関にスカウトしてくれた上司が突然退職してしまい、さらに所属組織全体が再編されることになってしまったんです。その際に、自分のキャリアを客観的に見つめ直しました。
ビザ取得の難しさや、米国のデザイン業界の景気が下降気味であることなど、常に何かしらの問題を気にかけながら働く状況では、ものづくりに集中できないと判断しました。当時はフルリモートで働いていたため、必ずしもアメリカにこだわる必要がないと感じるようになり、日本に戻ろうと考えました。
また、宮崎県の地方出身ということもあり、日本に一時帰国した際に目の当たりにする地方の過疎化や高齢化の問題が心の中に引っかかっていて。日本が抱える社会課題の解決に自分のスキルを活かして貢献したいという気持ちを抱くようになりました。振り返れば、留学時代に取り組んだプロジェクトの多くは、「困難な状況にある人にも寄り添う社会の実現」をテーマにしていて、性的・人種的マイノリティや高齢者、認知症の方々といった、支援が行き届きにくい人々の課題解決に焦点を当てていました。その経験が、私の問題意識と結びついたのかもしれません。
私と共通する課題感を持っているかもしれないと思ったんです。
KOELが主導した、データ利活用をテーマにした「i.school共創プログラム」の記事内容には特に共感しました。記事内で、Head of Experience Designの田中が「AIやビッグデータの活用が注目を集める今、多くの企業がデータ活用に苦戦している」と述べており、その障壁とて挙げていたのが「データ分析の手法、すなわち『How』が先行し、それに固執してしまっていること。そして、解くべき課題や導入後のビジネスのあり方などの『Why』の議論が希薄になってしまっている」という指摘です。
さらにデザインにおいても同様の課題があるとも述べており、「『Why』を捉えられても、具体的なアクションにつなげられないケースが多い」という課題は、私自身も感じていたことでした。
そうですね。KOELは課題に対し「How」と「Why」を掛け合わせ、課題やあるべき姿から具体的な実施プランまでを一気通貫で考えるアプローチを提案していて、手法も目的も大切にしながらデザインに向き合う姿勢に、魅力を感じました。
また、地域課題を解決するプロジェクトでは、フィールドワークや町役場の職員や地域住民とのワークショップを開催し、地域住民の声を拾い上げる取り組みにも共感しました。
人口減少や高齢化が進む日本では、デジタルを活用した効率化や利便性の向上は必須ですが、その過程で取りこぼされてしまう人が出ないことが重要です。KOELの丁寧なアプローチを取りながら課題解決を目指していることに共感し、ここなら「データと人をつなげる」という自分のビジョンを実現できると感じました。
これまでデータは、客観的な事実を示すものとして扱われ、多くの場合、グラフや数値を中心に提示されてきました。今後は、データの使い方や体験に多様性をもたせ、人々の心に働きかけられるようなアプローチができないかと考えています。
例えば、ニューヨークタイムズでは、コロナによる死亡者数を棒グラフや単純な数字で表現するのではなく、人型のアイコンと名前・年齢・生前はどんな人だったかをテキストで示しました。これにより、一人ひとりの命の重みを新しい形で視覚的に伝えられたと思うんです。
このように、数字やグラフによる客観的な表現だけでなく、人間的な側面を取り入れることで、より直感的な理解や感情的な共鳴を促し、行動の変化も起こせる。まだ私の中で正解はありませんが、色々なアプローチを探索することで「データと人をつなげる」ことができるのではないかと考えています。

肩書きとしては、UXデザイナー・クリエイティブテクノロジストです。まだ入社して3ヶ月なので、そこまで多くのプロジェクトに携わっていないのですが、データを活用した新しい体験やコンセプトの創出に従事しています。
また、データサイエンティストやエンジニアとデザイナーとの間を橋渡しすることも重要な役割です。プロジェクトでは、データ利活用を専門とする他部門と協業することもあるんですが、お互いの視点の違いから共通理解やシナジーを生み出すまでに苦労することもあります。デザイン組織にデータを専門とする私のような人材が入ることで、二つの部門間で効果的なソリューションを生み出せるようにサポートをしています。
クリエイティブテクノロジストとしては、テクノロジーが高度化する中で、既存のツールでは難しい機能面もカバーした解像度の高いプロトタイプを作り、アイデアの実現を後押しすることも期待されていると理解しています。KOELではこれまであまりいない役割で試行錯誤になりますが、とても挑戦しがいのある道だと感じています。
データとデザインを融合させた新しい体験を創出し、幅広い人に届けていきたいです。その際に、データをただ可視化するだけではなく、人々にとって新たな気づきがあるようなデザインを目指したいですね。
また、世の中の複雑さや不確実性を安易に簡素化せず、適切に表現したいと考えています。これまでのインフォグラフィックスは膨大な情報を削ぎ落とすことでわかりやすさを促進してきましたが、その過程で現実に横たわる複雑さを表現しきれていないという課題があり、次のステージに進むべきではないかという議論が始まっています。現代社会で起こる様々なことは、単純に理解できないことの方が多いんですよね。だからこそ、安易に結論を出したり、課題を矮小化させるようなデータの見せ方ではなく、深い思考を促すデザインを目指したいと思っています。また、同じような考えを持つデザイナーやエンジニアが今後活躍できるような基盤を作っていきたいです。
KOELは2020年に創設されたばかりのデザイン組織のため、現在まさに組織を作り上げている段階です。私自身も、この環境でどのようなキャリアを築けるかは未知数で、ある意味ではギャンブルでしたが(笑)、留学や海外就職を経て、わからないことや先が見えないことにこそ挑戦する価値があると学んだので飛び込みました。実際に入社すると、新しい試みを歓迎する雰囲気があり、データ×デザインのアプローチを実践できる環境が整っていると感じています。
これからも組織は大きく変化し、新たな考えや取り組みが次々と生まれてくるはずです。このような不確実性のある状況下を、前向きに捉え、一緒に考えてデザインをしていきたいという方には、ぜひ応募していただけたら嬉しいです。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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この記事を書いた人

佐々木まゆ
1992年生まれ。ライター。デザインコンサルのロフトワークを経て、ライターとして独立。ウ ェブメディアにてインタビュー記事や事例記事を執筆。
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