
今回インタビューをしたのは、NTTコミュニケーションズのデザイン部門「KOEL」でビジネスデザイナーを務める金 智之さんです。
音楽やゲームが好きだった幼少期・学生時代を経て、2005年にNTTコミュニケーションズに新卒入社。入社後にデザインと出会い、10年以上の歳月をかけデザイン組織「KOEL」の立ち上げに尽力された金さんに現在までのキャリア、社内のデザイン組織の変遷とこれから実現したいことについて伺いました。
金 智之(Jiji Kim)|ビジネスデザイナー
九州芸術工科大学卒業。2005年にNTTコミュニケーションズ入社。音楽配信サービス、映像配信サービスなど数多くの新規事業開発に携わる。2011年にKOELの前身となるデザインチームを立ち上げ、UIから経営理念まで幅広く手掛ける。
出身は大阪で、幼少期からゲームが好きで幼稚園の時からやり込んでました。高校卒業までは公立の普通科に通っていました。高校生になってからは、親がパソコンを触っているのを隣で見ながら、自分も少し触っていました。大学は福岡にある九州芸術工科大学に進学して大学院も含めて6年間在学しました。
小学校からピアノを習っていて元々音が好きだったんですよね。高校時代にはバンドをやっていて、将来は音に関係する仕事に就きたいと思ってました。ただ、ミュージシャンになるのは難しいなという限界を感じて、スタジオ設計やミキサーなど、何かしら音に関する仕事をしたいと思うようになりました。音響に関する学科がある国立大学が九州芸術工科大学のみだったこともあり、迷うことなく進学を決めました。

九州芸術工科大学自体がバウハウスを目指して作られたということもあり、かなりユニークな授業が多かったですね。音で音を消す実験をしたり、楽器演奏からスタジオ設計、認知科学に文化人類学まで幅広く。芸術から工学まで幅広く触れる中で、音声合成という今で言うVOCALOID的なものを専門に研究をしていました。
NTTコミュニケーションズの新規事業組織が開催した、「新規事業を2週間で考える」という内容のインターンシップに参加したことがきっかけです。頭をフル回転したハードな体験ではあったのですが、新しい何かを作ることがすごく面白かったんです。インターン中に出会った人の多くが良い意味で尖っていたことも印象に残っています。自分の性格的にも、まったく新しい価値を作って世に出していけるチャレンジングな企業がいいと考え、エントリーすることにしました。
インターン中にも関わった、新規事業組織に配属されました。1年目は総括担当にアサインされて、PCのセキュリティチェックから事業計画の取りまとめなどしつつ、新規事業検討まで、業務の幅は広かったです。2年目は「るす番モニター」というWebカメラとガラケーを繋ぎ、家の様子をいつでも見ることができるサービスの販売推進とカスタマーサポート、機能開発などを行い、3年目は映像配信や音楽配信に携わっていました。
4年目に人事異動で研究開発を行うIAC(先端IPアーキテクチャセンタ。以下IAC)のデータマイニングチームにアサインされました。レコメンドエンジンや機械学習を用いた研究開発を行う部署でした。ある時、そこで新しく研究していくテーマのコンテストが開催され、私が事業アイデアを応募したら採択されて、急遽そのアイデアをもとに新規事業を立ち上げることになったんです。
予算をもらえることになったはいいものの、新規事業を立ち上げるやり方がまったくわかりませんでした。新規事業を作って成長させていくためには何が必要なのか調べていくうちに、UXデザインやデザイン思考に出会ったんです。学んでいく中で、デザインは今後のNTTコミュニケーションズを成長させていく上で重要な存在だと確信し、周りをデザインの輪に巻き込み始めました。ちょうどタイミング良く、IACでは「自社サービスのUIを改善する」というテーマで課長達の検討会があったので、個人的に感じていた「UIだけではなくUXも大事」という想いを提案し、その結果、UI/UXデザインユニットというチームを結成することができました。
3期に分類できます。1期が先ほどお話しした、IACの中にできたUI/UXデザインユニットで、デザインの実践ナレッジを蓄積するフェーズでした。
2期が経営企画部の中にあるDKD(デジタル・カイゼン・デザイン室。以下DKD)。ここは社内のDXを推進する部署で、技術を活用したカイゼンをする人とデザインを理解している人がチームになってさまざまなカイゼン活動をしていました。デザイン組織として拡大していく段階です。これらの2つの部署を経て、3期として、今のKOELが誕生しました。これまでの成果があって、デザインを専門とする組織の立ち上げが認められたフェーズになります。
元々、デザインを本職としてやっていた人は当時おらず、マーケティングやエンジニアの人がデザインを学びながら会社を良くするための活動をしていました。社外のカンファレンスに積極的に参加をしてインプットを得たり、東京大学i.schoolにスポンサーシップをしつつ授業に参加し、デザインの最先端の取り組みや、デザインに力を入れてる企業の方の話に触れたり、ビジネスデザインやサービスデザインにおいて知見を持っている外部の方々と繋がったりしました。実践者からさまざまなデザインのアプローチを教わりながら、また、デザインや事業作り、アジャイル開発の本を読み漁り、それらをもとに事業組織の方々と試行錯誤的に実践を繰り返していました。

2011〜2013年に参加したワークショップの様子
第1フェーズのIACのときは、研究開発部隊のコストセンターなので、利益に直結する数値を追いかけている状態ではありませんでした。社内のさまざまな部署に入り込んでユーザビリティの向上や、新機能開発でUXデザインを取り入れたり、コンセプト検証のインタビューから新規事業開発などを行うことで、いかに事業組織の支援をしているか、支援件数や人材育成数を指標としていました。
そんな中、サポートをしたコンタクトセンターを運用している部署のある幹部が、社長に対してデザインのアプローチがいかにこの会社にとって必要なのかを伝えてくれて、社長の心を動かしてくれたんです。当時のNTTコミュニケーションズは、組織がサービス、セールス、オペレーションの3つで構成されている機能別組織で、組織のサイロ化が課題でした。例えば、コンタクトセンターで得られたお客様の声が、なかなかプロダクト組織に届きにくい、とか。社長が感じていた部署間の課題に、デザインがズバッと響いたんです。社長に理解してもらうことができてから一気に活動の範囲が会社全体に広がり、そのおかげで、第2フェーズの経営企画部にDKDを設立する段階に進むことができました。ボトムアップで活動をしていたら、トップにまで活動が伝わった形です。
数値としての結果を示しながら、経営層の課題に刺さる活動をしていた結果、組織を次のステージに進められた、と言えるかもしれませんね。

経営企画部に内包される形になり、会社全体の課題と向き合う中で、表層レベルだけではなく戦略レベルからデザインに取り組み、根本的に経営のスタイルを変えていく活動を進めるべきだ、と考えるようになりました。
ただ、最初から順調に進められるわけもなく、UXデザインやデザイン思考は、言葉で伝えるだけでは理解してもらえない場面も多く、なかなか取り組む意義に共感してもらえない事もありました。そこで、幹部から社員まで、多くの方々にインタビューをして廻り、それぞれの課題感を掴みながら、デザインアプローチを活用する事で、どのように課題を解決できるかを考え、一緒に取り組みに挑戦してもらう中で意義を理解してもらうことを大事にしていました。
例えばセールスで言うと、「商材を売るだけでは頭打ち。今後はもっとお客様と一緒に課題解決や事業創出をしていく共創活動を増やしていかないといけない。でもやり方がわからない」といった課題感を抱えていました。そこで私たちがデザインアプローチに基づいた、お客様とのワークショップの設計を支援し、ソリューションづくりまで支援することで、課題の解決を一緒に目指しました。
このようにして、社内の様々な課題を分析し実践することで、多くの人に共感してもらえるデザインの活用方法のヒントを集めていきました。
そんな具体的な取り組みをしながら、デザインアプローチを活用して全社でお客様への価値を高めるため、経営戦略レベルからのリブランディングやデザインのガイドラインづくり、業務プロセスの変革、人材の育成、共創の場づくり、などなど、全12領域の施策群と3ヶ年計画を立て、「顧客志向経営の推進」というパッケージにして経営企画部として全社で取り組む活動を開始しました。

顧客志向経営の推進のために作成した資料の一部
経営幹部含む、かなりの規模でデザイン思考のトレーニングを開催し、共通言語づくりをしたり、デザイナーの人事制度の整備、各組織での実践活動など、非常に幅広い領域で活動を展開していました。
また当時、2019年はNTTコミュニケーションズが20周年を迎える節目だったんです。このタイミングなら、経営理念や事業戦略も含んだコーポレートブランドのリブランディングを行えるのではという話になり、広報室に所属していた同じ課題感を共有していた方と共に、20周年に向けたシナリオを1年以上かけて策定し、全社から100人の熱い想いを持つ方々と一緒に経営理念と信条という、ミッション・バリューに相当するものを作成するプロジェクトを行いました。
NTTコミュニケーションズは、クラウド事業を推進していたこれまでの方向性から、DXを推進する方向性に舵を切り、さらにその活動を加速させるため、2020年4月に大きな組織再編をおこないました。その際に、新規事業を立ち上げたり、組織変革を行う組織としてイノベーションセンターが立ち上がりました。このイノベーションセンター立ち上げの際に、KOELの前進であるDKDが属している経営企画部のトップに「イノベーションを起こすにはBTCが大事。デザインチームは外せない」と認識を頂けていたので、イノベーションセンターの中に、デザインの専門組織を作らせてもらえることになりました。経営層にデザインの価値を理解して発信してくれる方がいたのは、とてもありがたかったです。これまでの活動を通じて、要所要所でデザインの重要性を理解してくれる経営層と出会えたことが、今の活動につながっていると思います。
そもそも今までの活動を振り返ってみると、全社単位の取り組みをしてきましたが、大成功をしているわけではなく、失敗も多かったです。そもそもデザインをできる人が少なく、数人で数千人を動かそうとしたりと明らかにリソースが不足していました。
やはり一番大事なのは人なんですよね。改めてデザイン専門組織として再出発するにあたって、組織としてデザイナーをしっかり確保し、そこに潤沢なリソースとしっかりした戦略が必要であるという考えを様々な関係者に説明して廻りました。そして共感してくれる方々と共に、デザイン組織として人材の採用枠を獲得することができました。
しかし、いざ採用を開始しようとしても、当時はNTTコミュニケーションズのデザインの活動はほとんど知られておらず、また自分たちもこの活動の面白さ、魅力などを世の中に伝える術も持ち合わせておらず、当時はうまくいく気がまったくしませんでした。私が社外のデザイナーなら、そもそも興味を持つことすらないと感じていて。なので、デザイン組織づくりと並行して、NTTコミュニケーションズでデザインを行うことの魅力を適切に世の中に届ける必要が出てきました。ただ、短い期間でノウハウもない中、進めていくのは困難。外部の力を借りたくて、i.schoolからの繋がりで仲良くさせていただいてた石川俊佑さんに相談し、彼の会社であるKESIKIと一緒にミッション、ビジョン、バリューから始まり、KOELという名称、組織設計や広報戦略などを一緒に作成しながら準備を進めました。
立ち上げ時の人数は12人、現在は32人のチームになりました。正式に組織化されてから20人増えています。
関連記事:KOELのUXデザイナーとして働く福岡さんのインタビュー
「賢い選択」よりも、意思を込めた選択を。NTTコミュニケーションズ 福岡 陽さんのキャリア
部課長などのマネージャーは大きな戦略やこれからの組織作りに関する検討をしていて、メンバーはフラットな組織形態でプロジェクトベースで構成されて動いています。1プロジェクト3人くらいでメンバーを入れ替えながら動いています。具体的なプロジェクトはKOELのサイトにあるのでぜひご覧になってみてください。

目下やらないといけないことは、伝わりやすいデザインを実践していくことだと思っています。NTTコミュニケーションズには技術もあるし、ものを作りきる力はすごく強いです。しかし、その価値をうまく伝えられるコンセプトまで詰めきれてなかったり、UIやブランディングに課題があったりと、価値を適切に伝えきれてないことがまだまだ多い。KOELが果たしていくべき役割は、作ったものに込めた思いをお客様に価値として適切に伝えられるようにすることです。それがデザインでできることだと考えています。
DKDのころから「会社をより良くしていきたい」という思いを持った仲間が集まっています。デザイナーの専門組織に変わった今、その熱い思いにさらなる専門性が追加されています。みんな、NTTコミュニケーションズを、デザインの力を活かして更に社会にインパクトを与えられる会社にしていくことに価値を感じていると思います。
NTTコミュニケーションズはほぼ全て業界のお客さまとのつながりを持っているので、一つ良いものが作れたら、爆発的に面で広げることができ、一気に社会のインフラを構築できる可能性を秘めています。そんなチャレンジを魅力的で楽しいと思える人が所属していますね。
立ち上がって間もない、成長を続けるデザイン組織で挑戦できることは魅力になると思います。即戦力としての採用になるので、いい緊張感を持って仕事に臨んでいただける環境ですね。また、NTTコミュニケーションズはプロダクト開発とソリューションのどちらにも関わることができるので、キャリアを考える上でいろんな領域、業界に携わることができることも魅力だと思います。事業をグロースさせる経験を積みたければプロダクトグロースに携わり、社会課題の解決や協働に興味があればソリューションに携わることができます。業界で見ても金融から農業という幅の広い領域に携わる機会がある環境は多くないので、キャリア選択の機会がすごく多い組織ではないでしょうか。
はじめは、この会社は素敵な人たちがたくさんいて、もっと大きなインパクトを社会に打ち出していける会社なのに、構造的に能力を発揮しきれていないのではないかという憤りにも近い課題感を感じていました。だからこそ、顧客志向経営という方向性を打ち出して、変わっていってほしいという想いが誰よりも強かったです。
そんな悔しさを抱えながらも経営理念を作っていく中で、NTTコミュニケーションズの歴史を知りました。日本に電話がなかった時代に電話を普及させ、インターネットを張り巡らせた。自分が学生の頃、初めてインターンに参加した時に感じた通り、チャレンジングな会社だったことを思い出しました。NTTコミュニケーションズは世の中のコミュニケーションのあり方を変え、社会全体を変えていく存在であることを再認識したんです。
今、日本の大企業はコロナやVUCAの中で苦戦しています。ですが、本当に変わろうとしているところは少ないのではないかなと感じていて、そんな中で僕たちが変われば、他の企業さんでも同じ変革を起こせると思ってもらえる、いい変化の兆しになれるのではないかなと。日本の大企業が元気になれば、世界も元気になるだろうと気付いてからは、その目的を達成するために頑張れています。

大きく分けると2つあって、1つ目が「愛される社会インフラをつくる」というビジョンを実現できる事業を作っていくことです。KOELがあったから、ちょっといい社会になったと言われたいです。「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する」という理念を検討した時、色々考えたのですが、インフラって、人々が自由になるための支えなんです。水道により、水を汲みに行く時間が必要なくなったり、インターネットも情報を取りに行くことが楽になり、インフラにより、人が自由により良い生活を追求できるようになりましたよね。人が様々な制約から解放され、持っている創造力を最大限に発揮して、多種多様な価値観を認め合いながら、問題や対立を超えていけるようにする、そんな社会インフラを作っていきたいです。
2つ目は大企業のインハウスデザイン組織といえばKOELという状態を作り出すことで、他の大企業インハウスデザイナーの希望の光になりたいと思っています。大企業のインハウスのデザイン組織ってあんまり表に出てきてないような気がしていて。多くのしがらみがあって大変だと思いますが、デザイン組織が元気に機能していくことで、企業が大きく変わるきっかけを生み出せると思うので、その先例になっていきたいですね。昨今、デザイン経営と言われるようになり、デザイン組織を起因とした動きを作りやすくなってきていますし。インハウスデザイン組織の良い例としてKOELの名前が出てくるような状態を作り出していきたいです。
僕自身、デザインチームを作る上で何かを率先してやってきたわけではありません。チームを立ち上げた方が面白いと言ってくれる人がいたり、活動に共感して面白いチャレンジを持ってきてくれる人がいたりしたからこそ、ここまでの組織に成長したのだと思います。ただ、自分のキャリアを振り返った時に新しいチャンスが見えた時に迷いつつも飛び込むことはできたと思っています。その挑戦が今の僕のキャリアを作っています。飛び込んでみないと何も変わらないし、飛び込むことで今まで見えていなかった面白くて新しい景色が見えるので。失敗することは間違いなくあると思いますが、失敗するからこそ得られるものがあると思います。ぜひチャンスが見えた時には飛び込んでみてください。
最後までお読みいただきありがとうございます。
ReDesignerに興味を持ってくださった方へ
ReDesignerはデザインの力を信じる全ての人の、キャリアの相談場所です。現在転職を検討されている方はもちろん、まだビジョンを明確に描けていないという方まで幅広くご相談を受け付けています。
お待ちしております!
◆カジュアルなキャリア面談をしたい方はこちら
◆転職支援をご希望の方はこちら
◆副業・フリーランスの案件紹介を希望の方はこちら
最新の求人情報やイベント情報などは公式Twitterアカウントで随時更新中!
◆公式Twitter
この記事が気に入ったら
いいね!しよう
最新情報をお届けします
この記事を書いた人

ReDesigner
ReDesignerは、デザイン会社によるデザイナー向けのキャリア支援サービスです。 企業とデザイナーの間に入り、独自のオンラインアンケートや面談を通じて、 デザイナーの特性やキャリアの指向性を理解した上で適切なマッチングを行います。単純に紹介をするだけでなく、デザイナー特化型の求人票も用意しており、デザイナーが働きやすい環境設計も支援します。
お気軽にご質問・ご相談ください
デザイナー募集を探す
一覧を見る
メルマガ登録はこちら