
今回インタビューをしたのは、NTTコミュニケーションズのデザイン部門「KOEL」でUXデザイナーを務める福岡 陽さんです。
ゲームやコンピューターが好きだった幼少期・学生時代を経て、ブランドマーケティングエージェンシーであるFICCに新卒入社。ブランドエクスペリエンス領域で多くの実績を積んだ後、その知識やスキルを活かす次の場所として福岡さんが選んだのは、日本のインフラを支えるNTTコミュニケーションズでした。自らが関わる事業を通して社会に変革を起こしたいと考えた彼が、ReDesignerを介して新しい道に進むまでのストーリーや、これから実現したいことについて伺いました。
福岡 陽(Akira Fukuoka)|NTTコミュニケーションズ株式会社 KOEL UXデザイナー
株式会社エフアイシーシーにてブランドエクスペリエンスクリエイティブ事業部の事業部長を務め、ブランドコンサルティング業務に従事。「ブランド・パーパス(社会的目的)こそがブランド成長の根源である」という想いから、ブランド成長のためのサポートをワークショップ/マーケティング戦略/施策立案・実行を通じて取り組んできた。2021年1月よりNTTコミュニケーションズ株式会社のデザインスタジオ・KOELにジョイン。
幼い頃から図工などが好きでした。形を作ることが楽しいと思うタイプで、小学6年生の頃に「宇宙基地」などと名付けた立体の大きな作品を作って、表彰された記憶があります。また、ゲームをするのも好きでした。スーパーファミコンを買ってもらい初めてスーパーマリオワールドをやったときは、心の底から感動しました。当時、ゲームをするだけでなく、画用紙にマリオのキャラクターやブロックを配置して絵を描いていた記憶があって。今思うと、マリオをやりながら「小さな要素の組み合わせでできるデザイン」みたいなものを捉えて、なんとなく作者の意図を感じていたのかなと思います。設計みたいなことに興味があったのかもしれません。
千葉県出身で、中学から大学まで千葉の学校に通いました。中学から高校に入るとき、受験がうまくいったことを理由にiMacを買ってもらったんです。ちょうど発売されたタイミングだったので「こんなものがあるんだ、すごいな」と感動して、それから高校時代はずっとiMacを触ってました。
イラストレーターなどのデザインツールを触ったり、コーディングやFlashを勉強してWebサイトを作ったりもしました。幼い頃からゲーム好きだったこともあり、プログラミングやゲームデザインへの興味は自分の中にずっとあったんだと思います。それを何か別の形で表現する手段として、デザインを捉えていたような気がします。

その後は千葉大学の電子機械工学科に進学したのですが、デザインサークルに入ったこともあり、仲良くしていたのはデザイン工学科の人たちでした。大学に入る前から自分のPCを持っているのは自分ぐらいだったので、サークルでは逆に私がデザイン学科の人たちにツールの使い方を教えていました。そのサークルで動画やグラフィック、Webサイトを作ったり、アルバイトでアーティストのミュージックビデオの撮影に携わったり。大学時代はそういったいろいろな経験を通して、働くということを少しずつ教えてもらった期間でした。
大学でデザインの活動をしているうちに、学校の外にもいろいろな友達ができました。その中でたまたま声をかけてもらい、当時はWebサイト制作が主力事業だったFICCを紹介されたんです。大学生のうちからアルバイトとして働く中で、FICCのクオリティに対する目線や考え方が素晴らしいものだなと思っていました。ギミックや飛び道具的なものではない、地に足のついたデザインをやっている会社というのはなかなかないと思い、当時10名ほどだったFICCに新卒で入社することを決めました。
入社当時、実は自分がデザイナーという感覚がないまま働いていたんです。社内にすごく優秀なデザイナーがいる中で「自分はそんな」という感じがあって。なので私は、FICCの中でもコーディングやプログラムに強いデザイナーになろうと思いました。
当時はそのような立派な肩書はありませんでしたが、Web黎明期には、デザインからコーディング、バックエンドも一人でやるのが普通だったんです。デザインやコーディングの技術は、基本的に見て真似することで覚えていましたね。当時はちょうどAppleが大きくなり始めたりGoogleが出てきた頃で、デザインとインターネットという業界が非常に盛り上がっていました。その中で次々に出てくる新しい表現の仕方を、自分で解釈して作っていくというのを繰り返していました。
今思うと、これはTwitterだったなとかYoutubeだったなみたいなものを作っていましたね。Clubhouseだなというものも(笑)。Flashが自由な表現を与えてくれたことで、アイデアをすぐ形にできるいい時代だったと思います。しかも、そういうのを面白がってくれる人が周りにいたのもすごく嬉しかったです。自分が公開したものをきっかけに、Twitterでフォローしたり話しかけてくれる人がたくさんいました。

福岡さんが個人で運営していた、クリエイターに向けたニュースメディア「RAW-Fi」
そもそも、僕がなろうと思ったわけではないんです。会社が成長するにつれて、Webサイトを作るだけでなく、キャンペーンを打ってその効果をマーケティングの視点から説明する必要が出てきました。そうすると、キャンペーンを盛り上げるためのイベントやPRにまでスコープが広がり、作るものも変わっていきました。そんなふうに会社の変化とともに、私の役割も変わっていきました。
クリエイティブディレクターとしていろいろなプロジェクトに関わりました。特に思い出に残っているのは、酒造メーカーのPernod Ricard Japanさんと行ったCAFÉ DE PARISというプロダクトのキャンペーンです。渋谷のモディで女性向けにプロジェクションマッピングの空間を作ろうという企画で、12月の極寒の夜にひたすら設営をしました。本当によくあそこまで作ったなと思うものになりましたし、同時に現場仕事の大変さを改めて感じましたね。

2014年に行った「CAFÉ DE PARIS」プロモーションイベントの様子
こういう経験のおかげで、Webデザイナーでありフルスタックエンジニアだった私が、Webにとどまらない仕事もできるようになったのは非常に面白かったなと思います。ただ、こういうキャンペーンにおいてもやはり自分は「何の効果になるのか」をすごく意識していました。単純に突飛なことをやろうとか、綺麗なものを作ろうとか、それだけではクライアントも自分も納得できないですからね。
はい。実はこれも私がやりたいと言ったのではなく、社長に「これからこういう新しいことをやるから」と配属されました。当初は2名しかいない実験的な部隊で何もかも手探りだったのですが、今はしっかりと社内の一つの組織になっています。FICCはこれまで、例えば資生堂やサントリーといった特徴的で強いブランドとお仕事できる機会を多く持ってきました。そのため、FICCにおいて「ブランド」というのはとても重要なキーワードです。
振り返ってみると、私自身も「ブランド」というものについてかなり考えてきた人生だったと思います。小さい頃からゲームが好きだったので、「なんでこのゲームは評価されるんだろう?」とか「どうしてこればかり売れるんだろう?」とか、よく考えていたんです。ゲームってシリーズものが出ますよね。ということは、人気作が引き続きシリーズになって売れていく。「みんながいいと思ったものが蓄積されていってブランドになる」という事実が、小さい頃から持っていた感覚と一致してよく理解できたんです。社長からBX事業部を任された時も、唐突に「ブランド」というものに向き合うことになったというよりは、自然と自分が行く道にたどり着いたような感覚でした。
ありましたね。まず、これを読まれている方には言うまでもないと思いますが、「ブランディング=ロゴなどの体裁を綺麗に整える」ということではありません。そうではなく、ブランドが最終的に何を成し遂げたいのかが重要です。Appleだってもちろん素晴らしいビジュアルを作りますが、それよりもさらに価値を持つのは、彼らが何を成し遂げてきたのかという歴史や、その歴史が伝えるメッセージだと私は思います。つまり、ブランドを作る上で非常に重要なのは、自分たちが「何を変えていきたいのか」を社会にメッセージングしていくことです。
ただ、このことは、BX事業部が立ち上がってすぐにわかっていたことではありません。最初この事業部で何をやればいいのか自分の中で確信が持てなかったとき、改めてブランドについて勉強し始めたんです。ジム・コリンズの『ビジョナリー・カンパニー』やデービット・アーカーの『ブランド論』を読んで、改めて「どういうビジョンに向かって何を成し遂げたいのか」によって、ブランドの偉大さ、ひいては会社の成長が決まるということを学びました。

理由の1つは、会社に大きな変革が何度も起こったからだと思います。最初はWeb制作、次にキャンペーンやデジタルマーケティング、そこからブランドに関連した事業に変わり、それに応じて自分の興味や、持つべきケイパビリティも変わりました。会社の成長と一緒に自分も成長しなければならないという状況にいられたことが、14年勤続できたベースにあると思います。会社に必要なことにコミットしながら、自分が名乗る役職や得意なことがどんどん変わるのは、自分の中ですごく嬉しい変化でした。
とはいえ、やはり14年は長すぎるとも思い、転職を考え始めました。正直なところ確信がないまま前職を辞めたのですが、その時思っていたのは、「クライアントワークではなく自分たちの事業を通して内側から社会に変革を起こしたい」ということです。
実はFICCを辞めた後、1年近くフリーランスとして働きました。その間に新型コロナウイルスの感染が広がり、アメリカ大統領選があり、どんどん変わっていく世の中に感じたことがあって。分断が起きたり、ありえない嘘がまかり通ったり、そこから争いが起きたりと、苦しい状態にある人がたくさんいることがすごく気になったんです。
人々が苦しんでいることの大きな要因は、仕事なんじゃないかと僕は思いました。収入源であり、自分のアイデンティティとなる仕事がうまくいかないことが、苦しみの根本なのではないか。そんな考えから、自分が救いたいと思える場所、もっと変えていきたいと思える場所に身を置きたいと考えました。ちょうどその時、ReDesignerの紹介で、NTTコミュニケーションズという大企業の内側からデザインに対する考え方を変えていこうと挑戦している「KOEL」に出会いました。
Our Mission
新しい時代の社会インフラをデザインする。
2020年4月、本気の挑戦を始めます。最先端のテクノロジー。世界最大規模の通信ネットワーク。
私たちには武器があります。
その武器をデザインの力と掛け合わせ、
常識を超える新たなコミュニケーションを創る。そして、社会全体の創造力を解放する。
日本を、世界をともに変える仲間を待っています。
転職にあたり、私はやはり会社の善良さや「社会の何を変えていきたいのか」という点を重視していたのですが、その要求をReDesignerさんがしっかり打ち返してくれたことは大変嬉しかったです。魅力的な企業をいくつも紹介してもらいましたが、その中でもKOELは、デザイナーが働くにはまだ十分に整っていないチャレンジングな環境だと思いました。苦しんでいる人を救いたいと強く思い始めていた私は、「自分が本当に変えていきたい場所はここだ」と思い、最終的にKOELにジョインすることを決めました。
KOELに入ってからは自分の職種がよくわからないほど、いろいろな領域を横断してプロジェクトを進めています。今までFICCでやっていたようにブランドやサービスの根幹部分についてヒアリングしてプロダクトの目指す方向を一緒に考えたり、マーケティング戦略を考えたりもしています。また、改めてデザインの実務的なことにも向き合いたいと思っています。

私たちは現在、NTTコミュニケーションズの中で「KOELとは何であるか」に対する答えを用意している段階で、まだいろいろなことができる面白いフェーズにいます。様々なバックグラウンドを持つ人が互いに領域を横断しながら仕事をしていて、ある意味でまだ混沌としていますが、それがまた楽しいんです。
このフェーズを抜けたあと、私がKOELとして目指していきたい姿が大きく2つあります。1つは「良いチーム」になること。これは、個人がスキルを高めると同時に、KOELというチームの単位で認識してもらうということです。もちろんNTTコミュニケーションズ内でも、それを超えたNTTグループ、さらに言えばその外側の社会から魅力的だと評価されるデザインスタジオになっていきたいです。
もう1つは、ブランドや企業に対して「善良さ」を与える存在になることです。私が目標にしているブランドの1つにOverWatchというゲームがあります。このゲームは、世界中のあらゆる人がヒーローとなり、多様性を持って生きてほしいという思いから作られています。実はこのゲームが広がるにつれて、そういう想いに共感した人が、環境保護の団体を作るなど現実の世界でもアクションを起こしているんです。このようにKOELもデザインを通して社会に「善良さ」というものを広げていく組織になっていきたい。日本企業のいろいろなところで熱意や衝動を起こす助けになりたいと思っています。
「デザイン組織を作るには、偉い人を仲間にしながら相手組織の目線で戦略的に展開することで企業文化を変え、熱い思いと誇りを身につけ、皆で成長する組織を目指すと、デザイナーへの職種変更が可能となり、正しく伝えて実績を出すことで認知や信頼獲得につながる」(NTT Com KOEL 金氏)
私たちは常に何かを変化させていきたいと思っています。どこかで問題が起こっているからこそ、手を動かしてデザインの力で解決していく。なのでKOELに合っているのは、本当の問題に寄り添える人です。問題に蓋をするのではなく、むしろ探しにいって、発見した問題にいろいろな目線を与えられる。そういうことを楽しめる人がいいんじゃないかと思っています。
自分自身、クライアントや社会に何かポジティブな変化を起こせなければ意味がないと思ってやってきました。そのために必要なことであれば、デザインに限らずいろいろなアプローチを取れることが大事だと思っています。映像制作やサービスづくり、コピーライティングもすれば記事を書いたりメディアを作るなど、今まで本当にいろいろなことをやってきたのはこのためです。一見一貫性のないキャリアですが、その背景にあるのはやはり問題意識なんですよね。「ここに問題があるのではないか」「これが今世の中に足りないんだ」という目線は常に持ち続けていました。

キャリアに迷った時、人はどうしても「賢い選択」を考えてしまうと思うんですよね。それに対して今日お話しした私の話は、必ずしも賢い選択ではないと思います。しかし、自分が本当に意志を持って選んだ自信がありますし、それを選択できた自分はすごく尊いことをしたと思います。なので、これを読んでくれた人には、自分の意志を信じて選択することの大切さを一番に伝えたいです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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この記事を書いた人

ReDesigner
ReDesignerは、デザイン会社によるデザイナー向けのキャリア支援サービスです。 企業とデザイナーの間に入り、独自のオンラインアンケートや面談を通じて、 デザイナーの特性やキャリアの指向性を理解した上で適切なマッチングを行います。単純に紹介をするだけでなく、デザイナー特化型の求人票も用意しており、デザイナーが働きやすい環境設計も支援します。
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