
パナソニックグループにおいて、B2Bソリューション領域の中核を担うパナソニック コネクト株式会社(以下パナソニック コネクト)。顧客起点でお客様の「現場」に新しいソリューションを提供しています。今回は、同社のデザイン組織を統括する、デザイン本部長 酒井将史さん、デザイン戦略企画部長/グローバルデザイン統括室長 永井伸春さんにお話しをお伺いしました。
プロダクトデザイナーとしてキャリアをスタートし、現在デザインの領域を拡大するために日々挑戦を続けているお2人に、パナソニック コネクトの取り組みや組織改革について伺いました。
酒井 将史(Masashi Sakai) |パナソニック コネクト株式会社 デザイン本部 本部長
筑波大学卒業後、車載専業メーカにてプロダクトデザイン、GUIデザインに従事。その後、パナソニックにてカーナビゲーションやスマートフォンのGUIデザイン担当を経て、UX起点でサービスや事業をデザインするサービスデザインチームの創立を推進。現在、パナソニック コネクトで、プロダクト(ハード/ソフト)、サービス、ブランドなど、多様な価値を創出するデザイン組織の責任者として、デザイン組織変革に取り組む。
永井 伸春(Nobuharu Nagai) |パナソニック コネクト株式会社 デザイン戦略企画部長 グローバルデザイン統括室長
国内電機メーカーのプロダクトデザイナーとしてキャリアをスタート。コンシューマープロダクトに携わり、海外拠点での業務も経験。その後パナソニックに入社し、サービスデザイナーに転向。米国デザイン拠点責任者として現地でのソリューション開発のデザインを経験。現在デザイン戦略企画部長、グローバルデザイン統括室長を務める。
酒井さん:車載機器の専業メーカーのプロダクトデザイナーとしてキャリアをスタートしました。その後、様々な事業を展開していて、デザインの対象がたくさんあることに魅力を感じてパナソニックに入社しました。入社後はユーザーインターフェースや、ブランドデザインの領域を担当し、2022年2月からデザイン本部長に就任しました。
現在は、デザイン組織の変革に取り組んでいます。以前から取り組んできたプロダクトデザインやUXデザインはもちろん、「デザインの力がどうやって経営にインパクトを与えられるか」というチャレンジを託されていると思っています。
永井さん:国内電機メーカーでプロダクトデザイナーとしてからキャリアをスタートし、多くのコンシューマープロダクトに携わりました。のちにマレーシア拠点で東南アジア向けの商品に携わる中で、コンシューマーエレクトロニクスの分野における韓国、中国メーカーの勢いを強く実感しました。そこで、このままコンシューマー領域で世界と戦っていくよりも、今後大きな変革が必要とされるB2B領域のデザイナーとして世界で通用するキャリアに挑戦したいと思っていた時に、パナソニックから声をかけていただきました。2015年に入社した当時はプロダクトデザインのポジションだったのですが、途中でサービスデザインにキャリアチェンジしました。2020年にはアメリカに渡ってデザインのゼネラリストとして現地のソリューションの強化にあたりました。
現在は、デザイン戦略企画部部長としてデザインオペレーションの変革を行うのと同時に、グローバルデザイン統括室室長としてグローバルのデザインガバナンスを通した海外拠点のソリューションビジネス促進に取り組んでいます。
酒井さん:簡単に言うと、パナソニックのB2B領域、特にSCM領域を担います。「現場から 社会を動かし 未来につなぐ」というパーパスを掲げ、様々な現場においてお客さんと繋がりながらこの社会を動かし、未来へつなぐことを目指しています。単にお客様の現場だけをよくするだけでなく、そこからお客様と一緒に社会に対して貢献する、先を見てやっていくことを大切にしていますね。
酒井さん:パナソニックには長い歴史があり、積み上げてきた信頼やブランドイメージがあると思います。それを裏切らない着実さは求められる一方で、大企業の課題になりがちな意思決定のスピードを上げたり、お客様との関係性が薄れてしまうことを防ぐ取り組みも大切だと思っています。信頼と変革の両立を実現していきたいです。
永井さん:パナソニックが持っているモノづくり、インダストリアルエンジニアリングの知見を活かしながら、現場にフォーカスし、一緒にソリューションを作っていく。ここが期待されているポイントだと思います。
そこをもっと強化していくために、実際にデザイナーも現場に入って、お客様が気づいていない課題をユーザー視点で抽出し、プロジェクトメンバーと一緒にまとめ上げていきます。例えば、お客様からの「自動化してほしい」という依頼に対して現場のオペレーターの働き方がどのように変わるか、本質的に使いやすいUIやワークフローのUXはどうなるのか?など、様々な視点で取り組んでいます。やはりものづくりの知見を持った人間が現場に入り、本当に現場でワークするものにしていくということが求められていると思います。

酒井さん:インハウスデザイン組織として特徴的なのは、プロダクトデザインから経営に近いサービスデザイン、 ブランドデザインまですべて担当している点です。さらに、グローバルデザイン統括室で海外との連携を深めています。大きなB2Bの顧客タッチポイントを横串で見ていく体制になったのは、今年度の大きな変化ですね。
酒井さん:はい。社内でデザインはどうあるべきかを再定義し、「デザインの力で愛される会社」と定めました。「愛される」というエモーショナルな言葉にこだわりましたね。
近年デザイナーの領域が広がって、エンジニアリングや経営など、プロフェッショナルの方が既にいる領域にも踏み込んでいくことが増えています。そうした時に改めて「自分たちって何者なんだろう?彼らに無いものはなんだろう?」と考えると、言語化や数値化しづらいものを扱う職業なんだろうなと。そして、その部分にプライドを持ってほしいなという願いを込めて定めました。

酒井さん :全社のデザイン本部はじめ、カンパニーのデザイン職能から「B2Bデザインを牽引してほしい」と言われています。これからはモノだけではなく、サービスにシフトしていかなければならない。しかしそのシフトの仕方ですごく悩んでいるんですよね。
サービスデザインという肩書きがあるのも、マーケティングから一気通貫で取り組んでいるのもパナソニック コネクトだけで、周りからはそのプロトタイプとして見られているのではないかなと思います。実際、他部門からの相談は「サービスデザインのスキルを身につけるにはどうしたらいいの?」や「デザインメソッドの共有はどうしてるの?」というのが多くて。新しいデザイン組織はどうあるべきか、その先駆者として試行錯誤しています。
酒井さん:パナソニック コネクト自体、「これをやっている会社だ」と定義しにくい会社だなと思っていまして、コンサルティングに近い気がしますが、メーカーにも近い気がします。しかし、一緒かと言われると少し違うんですよね。それに合わせてデザイン組織も独自に作っていかなくてはいけないと思っています。他社の事例も参考にしつつ、ゼロから「我々の会社にとって、最適なデザイン組織ってなんだろう」と、自分たちで考えていかなきゃならないんだろうなと。トライアンドエラーですが、まずはやってみるしかありません。

永井さん:私たちのデザイン組織の特徴をもう一つあげるならば、ハードウェアを中心としたコア事業とソフトウェアソリューションを中心とした成長事業の双方に横断的にかかわっている点です。またハードウェアの事業がグローバルで大きなシェアを持ち、ビジネスを展開している点も特徴的ですよね。プロジェクターやPCなどのハードウェアを中心としたソリューションをグローバルのお客様に届けています。デザイナーは国内だけでなく、グローバル視点でデザインに取り組んでいます。
酒井さん :サービスデザイナーの役割は大きく分けて2種類になっています。1つは、経営戦略に近い、コンサルのような立ち位置。もう1つは短期で、現場のサービスのプランニングや要件定義に携わる立ち位置です。多くの方がイメージするデザイナー像は後者だと思いますが、 経営者と膝を付き合わせて戦略を練るフェーズも担当しています。
永井さん:社内でサービスデザインという言葉ができた当時は、ビジネスにおけるソフトウェアソリューションの割合が少なかったんです。 そのため、どのようなソリューションを作れば良いのかを現場の方や経営者とサービスデザイナーが一緒に考える必要がありました。
さらに最近は、現場でお客さんと要件定義を行い、使いやすいUIやUX起点での発想をすることが求められるようになっています。この流れの中で、ハードウェアに端を発するUI/UX領域とサービスデザイン部が担当するサービスのプランニングや要件定義の領域が近づいてくるのです。それが最近悩んでいるポイントです。
酒井さん:以前は、他の部門からデザインの依頼が来て、それに対応する形式でした。しかし、デザインの役割をもっと研ぎ澄ませて、経営にインパクトを与えるようにしなければならないと考えるようになりました。
とはいえ、経営層のデザインに対する理解度にはまだばらつきがあります。「製品の意匠を担当されるんですよね」とおっしゃる方もいれば、「経営にも入ってきてもらって、デザインの力を発揮してほしいです」とおっしゃる方もいて。 デザインの使い方をもっと知ってもらわなければいけないし、デザインはもっとたくさんのことができるということを伝えなくてはいけない。依頼が来て返すだけではなく、デザイン部全体で協力して能動的にアクションしていくべきだと考えています。そこで、経営×デザイン、B2BのUXデザイン、 全社のデザインカバナンスをあげていくことを経営層の方に宣言しました。
酒井さん:先ほど話した通り、以前はプロダクトの仕事が来ればプロダクトデザイナーが受け持って返す形式でした。ですが、せっかくプロダクトデザイナー、UXデザイナー、サービスデザイナーと多様な人材がいるので、壁を取り払って課題解決していきたいんです。
また、自分たちのデザインのコンピタンスが、課題に対してどうかみ合うと最もパワーを発揮するのか。このストラテジーの部分がすごく重要になると思っています。あらゆる集合知を使って、何をするのが最適かを定義しながら進めていかなくてはいけない。ここも試行錯誤ですね。
酒井さん:ありますね。実際、サービスデザイナーが人事のプロジェクトに入ったり、マーケティングのエクゼクティブコミュニケーションのチームに入っています。デザイナーの仮説立案力が色々なところで期待されているんだなと感じています。
もちろんデザイナー同士で働くこともあります。特にサービスデザイナーとプロダクトデザイナーはよく連携していますね。UXの仕事が来たら、まずサービスデザイナーがお客さまの課題を定義して、プロダクトデザイナーがUXに落とし込んで実際にプロトタイプを作って一緒に評価して、というプロセスです。もう連携なしではやっていけないような感じですね。
酒井さん:毎月「重要テーマ共有会」というものを開催しています。現在関わっているプロジェクトや、そこで得たノウハウをシェアする会です。その中で特に共有したいものがあれば、また別で勉強会を開きます。最近はHCDの資格試験勉強会コミュニティが立ち上がったり、デジタルIDのような複合的なものやデジタル庁の取り組みについて学ぶ勉強会を開催しています。

酒井さん:ここ数年で若い人と女性の比率が大きく増えて、違う会社になったんじゃないかと思うくらい雰囲気が変わりましたね。フリーアドレス制度も導入されて、上司にも気軽にコミュニケーションを取れるようにしました。代表の樋口がフラットなタイプなので、メンバー構成と風土改革が合わさってフラットな職場になったのかなと思います。今日もこの後、樋口と話しますし、マーケティング本部の役員とは毎週30分話して、どんどん前に進めています。
永井さん:役員から直々に、どんどんやりなさい、早くやりなさい、と言われますね(笑)。
酒井さん:そうですね。基本的にクリエイティブの力を信じているんですよね。立案段階で「いくら儲かるの?」という視点でくるのではなく、すぐに目に見えないけれど培っていくものとして認識いただいているので、僕らとしてはすごく動きやすいです。
酒井さん:我々デザイナーは、ついつい利用者だけを見がちですが、B2Bの領域はまわりにいる全ての方のことを考えなければなりません。例えば、決済端末を開発する際にお客様をイライラさせずスムーズに決済できるかはもちろん気にすると思いますが、 レジに正しく置けているのか、店員や管理者が使いやすいか、故障時に連絡するコールセンターがすぐにわかるかというところまで考える必要があります。このような多層なところが面白いですし、チャレンジングだなと思っています。
永井さん:B2C領域だと、自分も消費者の1人として考えられる部分がありますが、B2Bは見たこともないプロセスや現場に関わっていきます。今まで知らなかった世界で起こっている課題に取り組んで、社会に対して価値を生み出していけるというのは、非常にやりがいがあって面白いなとおもっています。
酒井さん:僕自身も、運送会社のドライバーさんの横に1日くっついて観察したり、プロサッカーチームの現場を見に行ったりしました。普段見られない社会の裏側を見ることで、社会に対する解像度が高まり、自分たちにできることは本当はもっとあるのではないかと感じていただけると思います。

酒井さん:そうですね。年度初めに定める目標設定にも現場にフォーカスした項目がありますし、ヘルメットをかぶってお客様の工場に入っていくような、現場でのリサーチは日常的に行っています。
永井さん:マネジメントレイヤーとしても、デザイナーが積極的に現場に入れるように、営業部門や開発部門の責任者やプロジェクトリーダーに働きかけてチャンスを多く作るようなサポートをしています。現場に入っていかないと、提案資料を一緒に作るにしても、営業担当者やSEメンバーが思い描いたものに対し色や形を少し変えるだけとか、そんな話になってしまうんです。現場に入っていれば、「現場のプロセスはこうだったじゃないですか。じゃあ、今回のソリューションはこうするとハマりそうですよね」「こういうビジュアルコミュニケーションをとった方がより伝わりやすいですよ」といったように、デザイナーが価値を発揮できることが格段に増えていきます。
酒井さん:デザインの形に業務をはめ込むのではなく、会社が求める役割に応えていったらこうなったというやり方に挑戦しています。 例えば「経営戦略にデザイナーも入ってください」と言われて、何ができるだろうかと思いながらも、複雑な状況をリサーチしたり可視化しながら進めていったりすると、「そういう視点で整理してもらったことで、見えなかった課題に気づけた」と言われたり。直接売上につながらなくても、これから環境の視点がすごく大事になるといったことを伝えることで、「そういう視点で事業を考えたことがなかった」と言われたりしました。一緒に仕事をして初めて、境界や、自分が何者であるかが見えてくる感覚です。今はその境い目が少しずつ分かってきて、職種としてたまたまUXデザイナーという名前がついていますけど、本来デザイナーってもっともっと色々なことができるはずだと思っているんです。その壁をできるだけ拡張していくというのが、僕が今目指していることですね。
永井さん:すこし大きなことを言うようですが、今後のパナソニックグループを支えるのは、パナソニック コネクトだとも思っているんです。B2Bのソリューションビジネスを伸ばしていくことが、 パナソニックグループ全体の競争力になっていくだろうと。その前提で、成長事業であるソフトウェアベースの事業拡大のためにデザイン組織改革を進めていかなくてはなりません。ゆくゆくは自分達がパナソニックグループのデザインを先導する未来を見据えながら、高度デザイン人材の強化をしていきたいです。
もう1つの視点として、グローバルで戦うという意味でもパナソニック コネクトの事業は重要だと思っています。B2Bのソリューションビジネスをグローバルに進めていくことが大きなチャレンジです。海外拠点との中でコミュニケーション量を増やすためにグローバル人材を強化し、さらにはB2Bのデザイン組織のあり方についても、世界から情報をとってくるべきだと考えています。最先端のB2Bのプレイヤーたちはどんなデザインをやっているのか、もっともっと取り入れないといけない。日本からグローバルで最先端のB2Bデザインをリードしていく、ぐらいの気概でチャレンジしていきたいですね。
酒井さん:私たちは社会インフラや、働き方をも変える大きな事業に関わっていて、越えるべき壁が何枚もあります。ある意味、自分1人では何もできないことを実感するばかりです。一口にデザイナーといっても、大きい社会システムを作ることに面白さを感じるか、自分の作家性を元につくったものに満足感を得るか、それぞれのメンタリティーは大きく違います。前者に面白さを感じるデザイナーの方には特にフィットする仕事だと思っています。そして、自分の領域の拡張にどんどんチャレンジしていけるような柔軟性のある方に来ていただきたいです。我々は「そんなことやっちゃダメ」ではなく、「どんどんチャレンジしよう」と言える場を作っていきます。
永井さん :新しいチャレンジばかりです。チャレンジを楽しみながら、同時にデザイン組織や開発プロセスがどうあるべきなのかを一緒に考えていただける方。そういう方と一緒に仕事をしたいなと思っています。今まさにスケールさせようとしている成長事業領域に携わりながら、デザイン組織側の変革も担えるタイミングなので、そこで一緒にチャレンジしていきたいです。
酒井さん:僕らがやろうとしている「デザイン組織の変革」は、今後どのデザイン組織にも求められ、期待されることだと思っています。その先頭を走って行きたいので、ぜひ力を貸してください。
永井さん:B2Bのデザインは、正直かなり面白いです。見たこともない現場で、見たこともない新しい仕事がごろごろ転がっています。興味をもっていただけると嬉しく思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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この記事を書いた人

ReDesigner
ReDesignerは、デザイン会社によるデザイナー向けのキャリア支援サービスです。 企業とデザイナーの間に入り、独自のオンラインアンケートや面談を通じて、 デザイナーの特性やキャリアの指向性を理解した上で適切なマッチングを行います。単純に紹介をするだけでなく、デザイナー特化型の求人票も用意しており、デザイナーが働きやすい環境設計も支援します。
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