
この記事は、4/28にオンライン開催された「ReDesigner Online Meetup 医療に携わるデザイナーができること」のイベントレポートです。
現在日本では、高齢化に伴う医療需要の増加、医師のオーバーワークなどが大きな社会課題となっています。さらに、昨今の新型コロナウイルス感染拡大の中、オンライン医療に関する法改正など医療サービスを取り巻く状況が大きく変化し、医療業界はますます注目を集めています。
そんな中、医療課題を解決するサービスをつくるデザイナーである、メドレーの前田さんとUbieの畠山さんにお話を伺いました。現在の医療課題、各企業の取り組みから、デザイナーの働き方や役割、医療という分野へのやりがいまで、幅広く語っていただきました。
株式会社メドレーの前田さんからは、現在の医療業界の課題と今後の見通しを踏まえ、メドレーの取り組みについてお話しいただきました。
プロフィール
前田邦織|株式会社メドレー デザイナー
制作会社やフリーランスなどを経て、インターネットメディア運営会社のデザイン部長に。 新規事業のサービスデザインやコーポレートブランディングなどを幅広く担当。 メドレーのプロダクトおよびコーポレートブランディング全般の責任を担う。

前田さん: まず最初に、医療の現状と今後の見通しについて簡単にまとめます。
日本では超高齢化社会が進んできており、これが医療に影響を及ぼすとして問題視されています。最近になって急速に高齢者の割合が増えており、2040年には高齢者人口割合がピークを迎えると言われています。日本の総人口は2008年にピークを迎えてその後減少しているのですが、その内訳をみると高齢者の推移と異なり、15才から65才までの生産年齢人口と呼ばれる「働ける人口」が減少傾向にあります。

高齢者の数が増えるにつれ、医療従事者の需要も高まってきています。このような時代になると、今後ますます人手不足が深刻な問題になってくることが想定されます。

こういった状況を踏まえて、メドレーでは、「医療ヘルスケアの将来をつくる」というミッションを掲げ、二つのアプローチで事業を進めています。
一つ目が人材不足の解消というアプローチで、医療介護求人サイト「ジョブメドレー」を運営しています。二つ目は、医療領域へのDXというアプローチで、新しい医療体験を提供して、患者と医療機関の課題をテクノロジーで解決する取り組みを行っています。こちらは、「医師たちがつくるオンライン医療辞典MEDLEY(メドレー)」や、クラウド診療支援システム「CLINICS(クリニクス)」を提供しています。
これらのサービスを通して、「患者が医療を使いこなせる未来」ひいては「納得できる医療の実現」を目指しています。

日本は他の先進国と比較しても、医師をはじめ、看護師、介護職といった医療従事者の絶対数が不足しています。そこでジョブメドレーでは、深刻な人材不足へのアプローチとして、求職者と事業所のより良いマッチングを実現するサービスを提供しています。
求職者に対しては、応募から就職決定までのサポートを行っています。さらに、ジョブメドレーでは「ブランクがある人の求職支援」を重視しています。結婚や出産などのライフステージの変化によって現場を一旦離れた方がもう一度活躍ができるような求人掲載に力を入れています。
一方事業所は、採用コストに悩まされているという現状があります。そこで、より低コストで採用できるように採用オペレーションの効率化を行うなどの取り組みをしています。その結果、医療介護求人サイトとしては業界ナンバーワンの求人掲載数を実現しております。

次に、メドレーが開発している医療のクラウドサービスについて紹介させていただきます。
「患者とつながるクラウド診療支援システム CLINICS」は、患者とつながるをコンセプトとし、診療業務の効率化を実現するサービスです。Webやアプリから診察予約が出来たり、ビデオチャットを通じて診療ができるオンライン診療、診察内容を記録し、会計業務を行うクラウド電子カルテをひとまとめにして提供しています。
このプロダクトが解決する課題のひとつとして、患者の通院負担や待合室での待ち時間のストレスがあげられます。一方、医療機関では、複雑な院内オペレーションや紙ベースでの運用などにより、院内スタッフの負担が増加しています。
CLINICSは、これら双方の課題に対してオンラインを活用して、待ち時間の短縮や、効率的な診療業務を支援することで、新しい診療体験を提供できるようになります。オンライン診療アプリCLINICSを活用した例になりますが、患者はアプリで予約をし、問診も事前にアプリでできます。診察時間になりますと、ビデオチャットで診察を行い、診察が完了したら登録済のクレジットカードを使いキャッシュレスでの会計ができます。このように、予約から会計までオンラインでシームレスにつなげることで、待ち時間の短縮に貢献できる診療体験を提供しています。

この新しい診療体験の提供が、プロダクトを含めたサービス観点からも評価され、昨年のGOOD DESIGN AWARD 2019ではベスト100を受賞することができました。
また、これまで特定の疾患や初診での「オンライン診療」は認められていませんでしたが、今回の新型コロナウィルスの影響で2020年4月10日に厚労省からの事務連絡により、時限的措置ですがオンライン診療の初診解禁が通達されました。
このような状況下の中でCLINICSのプロダクトが活用されていることは非常に感慨深いです。
メドレーの組織構造は、大まかに事業本部とインキュベーション本部に分かれています。事業本部は、現在会社の軸になっている事業の成長を担う部門で、インキュベーション本部は新たな事業を生み出す部門です。各部門内で、事業部とプロダクト開発部に分かれており、そこでは事業部長とプロダクトマネージャーでのツートップ体制を敷き、お互いがフラットな関係性でコミュニケーションを取って、事業開発に当たっています。
これはなぜかと言うと、「すべてのはじまりは最高のプロダクトを作ること」という社内哲学があるからです。メドレーは「作る・広める・守る」の軸を通すことを考えて経営しています。医療ヘルスケアの未来をつくるというミッションを成し遂げるために、全ての始まりは最高のプロダクトを作ることであると考え、エンジニアとデザイナーを尊重しています。こういった考えが経営層にも浸透しているので、プロダクト開発に集中して取り組める環境になります。
デザイナーチームでは、「要件に沿ってデザインする人ではなく、プロダクトを主導する存在である」という価値観を大切にしており、エンジニアとのコミュニケーションはもちろん、セールスやカスタマーサクセス、サポートなど、幅広い職種のメンバーとの密なコミュニケーションを大切にしています。
さらに表面的なデザイン解決だけでなく、メドレーのデザインチームは「BTC(ビジネス、テクノロジー、クリエイティブ)」をベースに、それに加えて「S(ソサエティ)」という価値観も大事にしています。医療領域においては、ビジネスだけでなく、ソサエティ(社会)を意識することも重要です。成果の向き先は、自己顕示でもチーム成長でもなく、パブリックマインドを持って価値を出し続け、社会や人の課題に貢献することだと考えています。
そんなメドレーのデザインチームですが、医療に対する患者の様々なハードルを下げて、「患者が医療を使いこなせる未来」ひいては「納得のいく医療」の実現を目指して、日々デザイン業務に勤しんでおります。

次に、株式会社Ubieのプロダクトデザイナーを務める畠山さんから、医療従事者と患者という両面から見た医療業界の課題と、その中で医療のデザインに携わる意義についてお話いただきました。
プロフィール
畠山 糧与|株式会社Ubie プロダクトデザイナー
リクルート、Goodpatchを経て、2018年にUbieに1人目のデザイナーとしてジョイン。医療機関向け、一般患者向けそれぞれのUI/UXデザインに携わる。Designship 2018, 2019 登壇。

畠山さん: Ubieは、3年ほど前に医師とエンジニアで共同創業したスタートアップで、会社のミッションは「テクノロジーで人々を適切な医療に案内する」です。
共同代表の医師がよく言っているのですが、実際に医師として診察していると、「あと半年前くらいに診察に来てくれれば助けられた」というケースがあります。また患者も、結局風邪だったのに夜中に救急車で病院に来てしまった、というようなケースもあります。これらのケースでは、別に患者が悪いわけでも、医療従事者が悪いわけでもありません。患者が持っている医療情報と、医療従事者が持っている医療情報の非対称性が問題なのです。我々は、この問題をテクノロジーで解決するというところを課題感として持って事業を行なっています。
参考:今回のイベント登壇内容はnoteでも公開されています。 「分断」された医療をつなぎ直すデザイン
医療現場では、診察の裏で非常にペーパーワークが多いということが課題になっています。多くの医師が言っていることですが、医学部の頃から頑張って、研修医を終えて晴れて一人前の医師として患者に向き合おうと診察室に向うものの、実際にはディスプレイと向き合っている時間の方が長いということもあります。医師は1日100人ほど診察することもありますが、その中で、どうやって一人一人の患者とゆとりを持って向き合っていけるかという課題に、Ubieは取り組んでいます。

Ubieでは、AIによる事前問診を行なっています。紙による事前問診と、医師がこれまで診察室の中でやってきた基礎的な問診の部分を代替するサービスです。医師はこれを使うことで、次の患者の症状や、疑わしい病気などがわかった上で深掘りをすることができます。上手く使えば初診の問診時間が1/3まで短縮され、医療体験が大きく変わります。実際に、北は北海道から南は沖縄まで、数多くの病院に活用していただいています。

ここからが本題です。昨今の新型コロナウイルスの感染拡大により、医療機関では院内感染やその対策で患者の受け入れ拒否をせざるを得ないケースも出てきています。どうやってコロナの疑いがある患者を診ていくか、どのようにコロナの疑いがない患者をスムーズに診ていくかが課題として挙がっています。
患者としても、症状がそもそも発生していないケースから突然重症化するケースまであるため、受診に行くかどうか、自身で判断することが他の病気に比べても非常に難しいです。
両者戸惑いがある中で、残念ですが、特定の患者や診療機関、あるいは行政など、ある種の「わかりやすい悪者」を見つけようとする向きもあります。しかし、そのような姿勢は世の中の分断を引き起こす可能性があります。分断を助長するのではなく、問題そのものの構造に目を向けていく必要があります。
現在、コロナの疑いがある患者には、いきなり受診せずにまずはかかりつけ医や公的相談窓口に事前相談ことが推奨されています。しかし現実は、事前相談なしで受診しに行ってしまったり、過度に受診を避けようとして救急搬送されるケースも起きてしまっています。
やはりこのような状況下では、「患者と医療従事者がお互いの状況を事前にわかっていない」ということが課題です。そこでUbieとしては、適切な医療につながる窓口などの「0次受け」のところを担いたいと思っています。

今朝(2020年4月28日)リリースがありましたが、冒頭で紹介したような問診AIを一般患者向けに無料で提供し始めました。これに回答することで、いくつか可能性のある病気が出てきて、それらに合わせて適切な窓口や医療機関が紹介されるというtoCのサービスです。

参考:「病気と対処法を調べる AI受診相談ユビー」
このように、患者に対しても医療従事者に対しても、それぞれにメリットを提供できる形でプロダクトを作っています。
このような事業は、ステークホルダーが多く非常に難易度が高いので、それだけにチームの力が重要になります。
新しい取り組みをする際にBTCは大事ですが、医療のプロダクトをつくっていく際には、専門家であるMedicalのメンバーとも一緒に開発をしていく必要があります。そのため、UbieではBTCMのチーム作りに取り組んでいます。組み合わせの数やコミュニケーションのパスも増えるので、チーム作りの難易度がグッとあがりますが、その分すごくやりがいがあります。
参考:「多くの人が普通に使えるプロダクトを」医療現場の課題をデザインで解決するUbie三橋さんの信念」

また、こちらも本日(2020年4月28日)リリースですが、スタートアップ一社としての取り組みを超えて、患者を適切な医療機関へと導く活動を推進するため、業界のプロの方々とも連携する有志団体を設立しました。
改めて、会社のミッションは、「テクノロジーで人々を適切な医療へ案内する」ということです。Ubieだからこそできる繋ぎ方で、医療の分断と戦っていきたいと思っています。
最後に、医療に携わるデザイナーに必要なことについて、お二人からコメントをいただきました。
前田さん: 私はメドレーに入るまでは医療知識がなかったので、まずは知識を身につけてキャッチアップできることが大事かなと思います。あとは、知識が十分にない中で、いろんな方たちとのヒアリングなどを踏まえて、自分なりに情報をまとめていくということが必要です。コミュニケーション力もそうですし、何が一番の軸になっているのか?という整理ができることも求められる能力だなと思います。
医療系の知識については、本を読み、わからないことを調べるという方法でキャッチアップしてきました。例えば、『医療情報システム入門』という本では、医療システムについての知識が全般的に網羅されていたように思います。
畠山さん: 私も医療知識に関しては本をよく読みます。過去にnote記事にまとめていますので、参考までにどうぞ。
参考:「Ubie Advent Calendar 3日目:医療系ソフトウェアのデザインに携わる人が読むとよさげな本10選」
医療におけるデザイナーに必要なマインドセットとして、これまでの自分の常識が通じないことが多いので、それを面白がって学んでいけるかがあると思います。例えば、患者にとってのわかりやすさと、医療従事者にとっての医学的な正しさのトレードオフの調整が難しいという話があります。問診サービスを作っていて「その表現よりこの表現のほうがシンプルでいい」と提案しても、医師に「医学的にはこれくらいの粒度で聞かれても意味がないから、そこは丁寧に聞いてほしい」という意見をもらったりします。医学的な正しさと、患者にとってのわかりやすさのトレードオフをどのようにとっていくかは、難しいけれど面白いところですね。
今回は、デザインの力で医療の課題に挑戦する2名のデザイナーのお話をお届けしました。 メドレー、Ubieともにデザイナーを募集されていますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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詳しい求人内容は以下よりご確認ください。
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詳しく求人内容は以下よりご確認ください。
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この記事を書いた人

ReDesigner
ReDesignerは、デザイン会社によるデザイナー向けのキャリア支援サービスです。 企業とデザイナーの間に入り、独自のオンラインアンケートや面談を通じて、 デザイナーの特性やキャリアの指向性を理解した上で適切なマッチングを行います。単純に紹介をするだけでなく、デザイナー特化型の求人票も用意しており、デザイナーが働きやすい環境設計も支援します。
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