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【メルペイ×トヨタコネクティッド】大規模サービスを創造するUXデザイナー・UXリサーチャーに迫る

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イベントレポート

2022/1/20

【メルペイ×トヨタコネクティッド】大規模サービスを創造するUXデザイナー・UXリサーチャーに迫る

今回は「大規模サービスにUXデザイナー/UXリサーチャーが貢献できること」というテーマで、日本を代表するサービス/プロダクトを手掛ける2社にお話を伺いました。

ご登壇いただいたのは、株式会社メルペイとトヨタコネクティッド株式会社。事業領域や成り立ちは異なりつつも、ともに社会的な影響や波及力の大きな価値を創出し続ける2社に、デザインが担う役割や実際の取り組みを紹介いただきました。

UXリサーチから事業創出まで手掛けるキーマンに、そのプロセスや各社ごとの特徴に迫りながらお伺いしています。

“信用を創造して、なめらかな社会を創る”株式会社メルペイ

草野 孔希(Koki Kusano) / UXリサーチャー&マネージャー
電気通信大学大学院修士課程修了後、通信事業会社の研究所に入社し、デザイン方法論の研究および研究知見を活用したコンサルティングに従事。同時に社会人博士として慶應義塾大学院大学システムデザイン・マネジメント研究科にて博士後期課程を修了(SDM学)。2018年11月にUXリサーチャーの一人目としてメルペイに入社し、UXリサーチを活用したサービスデザインに取り組む。

一人一人のやりたいことが叶う社会を創造する

メルペイは「信用を創造して、なめらかな社会を創る」というミッションのもと活動している会社です。メルカリでの売買などを通じて得た信用情報を可視化し、その信用に基づいてお金を自由に使えて、一人一人のやりたいことが叶う社会の創造に取り組んでいます。

メルカリグループでは、事業領域は異なっていてもメルカリグループの持つ「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」というバリューを共有しています。具体的には、「Go Bold」は大胆にやろう、「All for One」は全ては成功のために、「Be a Pro」はプロフェッショナルであれという意味が込められています。本当にこの3つのキーワードは社内に浸透していて、毎日のように日々の会話の中でも聞こえてきます。

また、「Trust & Openness」というカルチャーも大切にしています。一人ひとりの信頼関係だけでなく、会社全体としての信頼関係を大切にしているからこそ、情報の透明性や組織のフラットさなどがしっかりと担保されています。その土台が、一人ひとりの自発的な思考や行動、そして結果として組織や個人の成長につながっていくという信念からきています。

日本の「お金」を変える事業展開

メルカリアプリの中では、フリママーケットプレイスのメルカリ、ペイメントサービスのメルペイ、最近では加盟店の方々が直接お客さまに商品を売れるショップスを展開しています。

この中でメルペイの事業を3つのポイントにまとめると「決済」「与信」「ふえるお財布」があります。「決済」は、iD決済やQRコード決済、バーチャルカードのような決済手段を利用可能にすることで、日々の支払いを滑らかにしていくサービス。「与信」は、一括払いや定額払いのような後払いができるようにしていくサービス。「ふえるお財布」は、最近開始した売上を使うだけでなく、増やしていくところでも使えるようにしていくサービスです。

このような事業/組織で活躍するメルペイのUXリサーチャーは、豊かなお客様体験と事業成長を実現するために、本質的な問いを立ててUXリサーチを推進し、鋭い洞察をえることに責任を持っています。そして、お客様体験に根ざすことだけでなく、事業成長にもコミットしていくことを目指しています。

組織横断的に協業するデザインチーム

メルペイのUXリサーチャーは組織横断的に活躍しています。プロダクトデザイナーと並走し、様々なプロジェクトに企画から機能開発のフェーズまで幅広く関わります。その中でリサーチを通してプロジェクトの推進をサポートします。それ以外にも、マーケティングチームやBizDevチームとともにお客様がどのような方々なのか調査したり、データアナリストとともに定量・定性の情報を合わせて、お客様の解像度をさらに深めたりすることもあります。

そのような存在が社内で求められる理由は大きく3つあります。まず、金融サービスは完成度が高い状態でリリースする必要があり、時間もコストもかかるため、リリース前から学びを深める必要があることです。次に、利用ログなどのデータだけでは解釈が難しいシーンが多く発生すること。そして、同じ方向を見てサービス作りができる組織にしていきたいということ。それぞれを叶えていくためにUXリサーチを活用しています。

メルペイがUXリサーチで大事にしていること

メルペイのUXリサーチにおいて大切にしていること。それは、「お客さまにはスマホ外の体験がたくさんあることを意識すること」「お客さまの体験としては一つであることを意識すること」です。

メルカリはアプリの中で出品して売れるだけではなく、出品する物を探す、配達するといったアプリの外にも重要な体験があります。そのようなことを含めて、誰がどのような状況でアプリを使っているのか、アプリの外でどのようなことをしているのか、両方を思い描かないと、どうしても実態とずれが生じてきます。

もう一方で、様々な機能を詰め込んでいくと1つのメルカリアプリの中でまとまりづらくなっていきます。そのため、お客さまから見て、1つの豊かな体験になることを常に意識して、滑らかに機能を連携させていくことも大切です。

また、UXリサーチを行う際の心がけも4つ持っています。

一つ目は「状況に合わせて、必要な分をリサーチすること」です。当然、リサーチをするにもコストがかかります。既に分かっていることはリサーチする必要はなく、必要な部分だけリサーチすれば良いのです。そのために、リサーチをする前に関係者にインタビューを行っています。リサーチは何のために必要なのか、リサーチで得られた結果はどう活用されるのかを事前に把握することを大切にしています。

二つ目は「質的なリサーチデータを蓄積して参照できるようにすること」です。質的データを集めるためにはお客さまへのインタビューなどが必要になります。しかし、インタビューをするのはどうしても時間がかかるので、データが欲しい時にすぐ手に入れられるとは限りません。そのために、メルペイではさまざまなリサーチで得た質的データを蓄積し、すぐに参照できる体制を整えています。

三つ目は「モアベター精神で実践・改善すること」です。サービス作りと同じように、常に完璧なリサーチというのは存在しません。「次はこうした方が良い」「今回はここまでしか分からなかったが、次にこのアクションをすれば明確にできる」というようにモアベターの精神で実践と改善を続けることを大切にしています。実践と改善を行うことを徹底することにより、メルペイのUXリサーチャー自体が成長している現状があります。

最後は「先人の研究や理論を学び、自分の考えを研究として論じること」です。私がもともと研究者として働いていたこともありますが、先人の研究や理論には実践で応用可能な部分がたくさんあると考えています。先人の研究や理論を学んだ上で、実践を繰り返すことが大切です。また、自分自身が実践して得られた知見を、研究として論じていくことも重要だと思います。研究として考察し、周囲に伝えていくことが、将来のUXリサーチャーの進化につながります。

メルペイにおいて、UXリサーチプロセスは上図のように定義されています。まず、状況を理解して、リサーチクエスチョンを立てます。そして、その問いを満たすための手順設計とリサーチ準備をして、実際に実施。その後にデータ分析をして、結果を活用するというようなプロセスです。

UXリサーチを組み立てる時は、大きく2つのパートに分けて考えます。

一つ目は「なぜやるのか・何を明らかにするのか」を明確にすること。適切なリサーチクエスチョンを立てるために社内の状況を理解して、どんなリサーチが必要なのか、そのリサーチを行った結果はどう活用できるのかを明確にする必要があります。

二つ目は、「何をどのように明らかにするのか」を決めること。想定コストを踏まえて、手順設計や調査手法、データ分析の手法を定めていきます。メルペイでは、しっかりと状況理解をした上で、適切な方法を適切なコストでやっていくということを意識してUXリサーチをしています。

なお、これらの検討は1回ずつやったら終わりというわけではなく、状況に応じて行ったり来たりしながら設計を精緻化させていくこともあります。

メルペイのUXリサーチチームでは、リサーチ結果を活用できる人を増やすための社内勉強会を行っています。UXリサーチャーは社内にたくさんいる職種ではないため、リサーチを活かせる人を社内に増やしていく必要があると考えています。リサーチを活かせる人を増やし、その人たちをUXリサーチャーがサポートする体制にすることで、組織としてのUXリサーチのスケーラビリティを向上させられると考えています。そのため、アンケートのユーザビリティテストのやり方やインタビューのやり方、調査の設計の組み立て方などを学べるようなコンテンツを用意して、社内で配信しています。定期的に社内の勉強会を開催することで、リサーチを活用できる人を増やしています。

UXリサーチを文化にするために

チーム発足から3年、ようやくメルペイのUXリサーチチームも仕組みが整ってきたところです。そんな今、私たちはUXリサーチを文化にすることを目標にしています。いきなり組織の文化にすることは難しいので、まずは実際にリサーチを体験してもらい、UXリサーチに興味を持ってもらうことから始めています。そこからまたリサーチがしたいと声をかけてもらえれば、継続的な関係を築くことができます。そこからより多くの人にリサーチについて知ってもらい、最後はUXリサーチが文化として成り立つレベルを目標にしています。UXリサーチャーが口を出さなくても、自然と適切なリサーチをチームで考えられるような状態を目指しています。

UXリサーチを文化にするために、私たちはResearch Opsという考え方を大切にしています。我々は、Research Opsを運用の効率化だけだと捉えていません。質の高いUXリサーチはどうすればできるのか、そのためにはどのような仕組みや体制が必要なのかなどを考えることもResearch Opsに含まれると思っています。さらには、組織のUXリサーチ文化(倫理観)の醸成もその範疇だと考えて取り組んでいます。

我々は、業界全体の成長のために、会社を超えた文化の醸成にも注力しています。その理由としては、組織のリサーチャーを強くするには、業界自体のリサーチャーの成長が必要不可欠であると考えているからです。たとえば、リサーチ業界の成長のために、書籍の出版にもチャレンジさせていただいています。

“人とクルマと社会をつなぐ” トヨタコネクティッド株式会社

久野 聡紀(Akinori Hisano) / 先行企画部 エクスペリエンスデザイン室 GM / Director of Business Design
慶應義塾大学卒業後、主にデジタル領域にてクリエイティブ、プランニング領域、マネジメント、経営を経験。約15年の支援サイドでのキャリアを経て、2018年よりCCCグループのTSUTAYA事業にてDX / UX領域、及びサービス企画の統括に従事。2021年3月トヨタコネクティッドに参画し、スマートシティ関連プロジェクト、UXアプローチでの新規事業開発などトヨタコネクティッドにとっての新しい挑戦を推進中。

川勝 直子(Naoko Kawakatsu) / 先行企画部 エクスペリエンスデザイン室 UXデザイナー
京都工芸繊維大学大学院にて行動観察を用いたニーズ探索とUXデザインを学ぶ。修士課程修了後、電機メーカーにてBtoB領域における先行開発、製品開発のUXデザインに従事。2021年9月より現職にて新規事業開発におけるユーザー調査、サービス設計を推進。

香島 ハッラステ 有里(Yuri Hallaste Kashima) / 先行企画部 エクスペリエンスデザイン室 UXデザイナー
高校卒業後、独学でデザインを学び、事業会社や制作会社にてグラフィックデザイン、UIデザイン、ディレクション業務、新規事業立案等を経験。その後XR関連スタートアップの創立メンバーを経験したのち、XR/IoT関連技術を用いたR&D支援や受託開発を行う。2021年8月よりトヨタコネクティッドにジョインし、主にスマートシティ領域や新規事業開発を担当。 北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科在学中。一児の母。

人とクルマと社会をつないで、豊かで心ときめくモビリティ社会を創造

トヨタコネクティッドは、「人とクルマと社会をつないで、豊かで心ときめくモビリティ社会を創造する」というミッションを掲げています。トヨタコネクティッドはもともと、販売店での顧客接点を改善するという業務から始まり、そこからデジタルマーケティングやコールセンターというふうに事業を広げてきた会社です。コネクティッドサービスを通じて蓄積したお客様の膨大なデータを大切に守りながらも、次世代のモビリティサービスの実現に貢献するために活動しています。

エクスペリエンスデザイン領域を拡大し、UXの取り組みを加速

トヨタコネクティッドは二つの背景からUXに取り組んでいます。一つ目は、自動車業界のソフトウェア開発の内製化が加速していること。このトレンドにより、海外の完成車メーカーを含め、多くの自動車企業がノウハウを手の内化しています。二つ目は、不確実なサービス開発プロジェクトが増加したこと。グループとして、自動車メーカーからモビリティカンパニーにシフトしていく中で、モビリティサービスや新規事業の取り組みなど、前例や明確な進め方、成功法則がない領域でのプロジェクトが増えてきたため、エクスペリエンスデザイン領域の積極的拡大を図っています。

現在、エクスペリエンスデザイン領域を積極的に拡大しており、2021年12月時点で、デザイン組織は約70名のメンバーが在籍する規模に成長してきました。トヨタコネクティッドのデザイン組織は、大きく三つのグループに分けられています。上図左のUXデザイングループは、主に車の中の体験やプロダクトデザインを担当するグループ、真ん中のビジネスデザイングループは、車の中以外の体験のすべてを対象にしているグループです。右側はフロントエンドのディベロッパーやPMがいる開発チームです。

新規事業におけるユーザーリサーチの取り組み

トヨタコネクティッドの新規事業において、リサーチはベンチマークや足がかりがない新規事業の「起点」の役割を果たしています。上図は、新規事業のプロセスをステップ化したものです。トヨタコネクティッドの新規事業の特徴は、最初にユーザー調査のフェーズを用意していること。そのフェーズは、調査の方向性を示す事業立ち上げのドライバー的役割を担っています。実際にサービスを検討する際に調査を行いますが、その中でも新規事業の案件を2つご紹介したいと思います。

一つ目は「ユーザー調査DX」です。ユーザー調査DXとは、モビリティサービス事業者に向けてユーザー調査を支援するサービス。事業を進めるにあたってユーザーの声に耳を傾けることは、サービス改善のための非常に有効な手段です。インタビューやアンケートのような既存のユーザー調査に、乗車中の行動や環境、車両のデータを組み合わせることで、より多角的にユーザーを理解することが可能になります。多角的なユーザー理解は、顧客接点の改善や事業判断に役立てられています。

また、「生活困窮における車の保有と移動課題」にも取り組んでいます。生活が苦しい方へのリサーチを行う中で、仕事や買い物に車が必要だけれども、車の維持費が負担になってしまうために車が持てないという課題を発見しました。この課題発見から、車に対して次世代技術や便利さを追求するだけでなく、本当に移動の自由を広めるためには、まだまだ多くの視点が必要であるということに気づきました。

この課題に取り組むために、生活者と支援者に向けてリサーチを行いました。実際に生活者へのインタビューを行ったり、日々の乗車記録をLINEのオープンチャットにて記録をしたりしました。また、支援者として生活支援を行うNPO団体へインタビューを行っています。このように複数の視点から課題や状況を知ることにより、現状課題を把握し、アイデアの価値検証をすることが可能になりました。

リサーチにおいては、たくさんのデータを伝えるために情報整理をすることを意識しています。情報整理は三つの視点から行っています。

一つ目は、ユーザーの発言とリサーチャーの解釈を混合して扱わないこと。その意識により、調査が進んだ段階でリサーチデータ見直した際、新しい解釈や再解釈ができるという利点があります。

二つ目は整理と分析。調査後、すぐに分析に入らずにデータの収集や整理に取り掛かることを意識しています。分析前に整理するプロセスを設けることで、情報を俯瞰的に取り扱うことができます。

三つ目は、メンバーと報告先。誰に何を伝えたいのかを意識することで、リサーチ結果がより伝わる形になり、次に繋がるリサーチを実現できます。

都市開発関連プロジェクトにおけるUXドリブンな取り組み

都市開発関連プロジェクトは、お台場の再開発を背景に行われています。お台場では大江戸温泉やトヨタの体験型テーマパークであるメガウェブ、ビーナスフォートやパレットタウン観覧車などが2021年末を目処に閉館します。その中で、メガウェブの跡地が、多機能複合アリーナとして生まれ変わる予定になっています。

トヨタコネクティッドのUXチームは、街のにぎわいやスポーツ振興、モビリティのようなさまざまな観点から、街のサービスデザインをUXドリブンで進めています。

リサーチのプロセスとしては、フェーズ①でデスクリサーチやインタビュー、フェーズ②として、フィールドワークを行っています。その後アイディエーションを行い、定性/定量調査を行っていきます。フィールドワークなど、都市開発関連プロジェクトならではのプロセスを取り入れながら進めています。

フィールドワークでは、街を歩き回って観察しながら、問いを立てるワークを行います。「自分がもし高齢者だったら、この道は通りにくいかもしれない」、「実際に次世代技術を適用したら、どんなイノベーションが起きるだろう」ということを五感を使って考えながら歩いていきます。フィールドワーク中に感じた、定性的な感想や定量的なファクトは写真やビデオ、文章などで記録をします。

都市開発関連プロジェクトにおける特徴的なタスクとしては、自治体が出している都市計画の分析があります。一企業として街に貢献するためには、自治体の都市開発の計画とも擦り合わせて連携していく必要があります。自治体の都市開発計画の内容を理解した上で、サービスをデザインしていかなければならないのです。

例えば、左の写真のように、自治体の人口のデータをもとに、エリアの住民の人数の可視化を行います。可視化したものをもとに、その地域の特徴や特性を把握しています。右の写真は、東京都が出している建築情報オープンデータを用いて、土地の用途を可視化したものです。それぞれ土地の用途によってできることが制限されることもあるので、このような情報を頭に入れながらサービスデザインをしていく必要があります。

リサーチやフィールドワークで得た情報をもとに、アイディエーションやデプスインタビュー、定量調査を行い、アイデアの検証をします。また、トヨタグループにはモビリティに関するアセットが豊富にあるため、そのアセットをどのようにサービス化していくかという視点も非常に重要です。

都市開発関連プロジェクトの最大の魅力は、「前代未聞の体験作りに寄与できる」ということです。まちづくりのUXは、体系化された方法がない分野です。誰かに与えられた道を辿るのではなく、さまざまなバックグラウンドを持つ方々と新しい体験作りに携わることができます。社会に与えるインパクトも大きく、他にはない大規模プロジェクトであるという点も魅力の一つです。

インタラクティブセッション

後半はReDesigner事業責任者の佐宗がモデレートしながら、登壇者の皆さんとインタラクティブセッションを実施しました。

大規模サービスを立ち上げ、グロースをする際にまずどのような視点でUXアプローチを考えるべきか?

メルペイ 草野さん:まず、立ち上げの時は情報がすごく少なく、データアナリストが利用ログなどのデータを取ることも難しいので、UXリサーチを活用して、事業ロジックを強化していきます。立ち上げ時は、「どうしたら事業が成り立つのか」「事業的に都合が良い選択肢はどれか」という議論になってしまいがちですが、それではお客さま体験的にネガティブな方向へ進んでしまう可能性があります。そういった時に、UXリサーチを活用してお客さまを深く理解し、お客さまに関する洞察を議論の場に届ける必要があります。事業的な意見とお客さまの立場の意見の双方が対等な立場で議論できる環境を作ることが非常に大切です。そのような議論ができることで健全な事業成長と豊かなお客さま体験の両方が実現できるサービスを作ることができます。立ち上げたサービスをグロースする際には、そこに様々なデータが取れるようになるため、データを取り入れつつ、事業的な意見とお客さまの立場の意見の両方が対等に議論され続けることが大事だと考えています。

トヨタコネクティッド 川勝さん:新規事業の立ち上げについては、足掛かりやきっかけがない状態で調査をしつつ、プロジェクトを進めていくので、方向性や手応えに応じて、ユーザー調査や仮説と検証を繰り返していきます。失敗を生かしつつ、前に進めていくことが大事なアプローチであると思います。

また、新規事業の案件では、UXデザイナーが一人、プロジェクトオーナーが一人、その他はサポートメンバーが入るという少人数のプロジェクト体制をとっています。少人数のチームの中で意思疎通をしっかりと取りながら、新規事業のサービス設計の手がかりとなるようなニーズの調査を行なっていきます。事業を作っていきながら、必要なプロセスを追加しつつプロジェクトを進めています。少人数のプロジェクト体制にすることで、プロセスを回しやすくなるというメリットも生まれています。

フィジカルなものを含めたUXリサーチをする際に気をつけることは?

メルペイ 草野さん:UXリサーチにおいて、日によって天候や温度、時間帯など状況が異なってしまうという点は気を付けるべき点だと思います。例えば、加盟店で使っていただくのぼり旗を依頼された際、街にあるのぼり旗をいろいろ観察してみると、天気や風の強さによって見え方がだいぶ変わることを知りました。そこで、なびき方に依存せず、どのような環境にも対応できるデザインにする必要があることを伝えました。一見かっこよく見えたとしても、環境が変化したときに視認性が保たれていなければ意味がありません。他にも、メルペイからすれば目立たせたいロゴマークやQRコードを、加盟店の方はお店のブランドイメージを壊さないためサイズを小さくしたいと思ったりします。このような、インタビューでは把握しきれないお客さまのおかれている状況や振る舞いも見逃さないことが重要だと思います。

トヨタコネクティッド 香島さん:前提として、フィールドワークとして街を歩いた体験などのフィジカルな要素を、リサーチ結果として伝えることに難しさがあります。そのため、ステークホルダーをフィールドワークの現場にお呼びして実際にそこを歩いてみるなど、一緒に体験する、ということが重要だと思います。またリソースの都合上、自分一人で行わなければならない場合もありますので、一人でより多くの仮説を検証することも心掛けています。一人で行ってみたり、ベビーカーで行ってみたり、あるいは天候の違う日に訪れてみたり、異なる状況を分類して用意し、何度も通うことで、例えば「ベビーカーを持っていたらこの地域では行動範囲が狭くなる」といったようなことに気付くことができます。そういったアプローチでいろいろな人の感じ方を検出できるようにすることは常に心掛けていました。

UXデザイナー/UXリサーチャーが他職種とコラボレーションする際に大事にしていることは?

メルペイ 草野さん:他職種をリスペクトすることを大切にしています。その理由としては、リサーチャーだけではサービスを世に出すことができないからです。僕は、ものづくりをしているメンバーをとても尊敬しています。その上で、彼らの能力をどうすれば最大化できるのかといった視点を意識的に持ち、そのためにUXリサーチをどう活用できるのかを常に考えて活動しています。また、他職種をリスペクトすると言っても、壁を作るわけではなく、お互いに影響し合うことが大切だと思います。例えば、デザイナーがリサーチをやったり、リサーチャーがデザインを提案したり、時にはプロダクトマネージャーみたいな動きをしたりするような傾向があると、良い組織になっているなと感じることができます。

トヨタコネクティッド 香島さん:自分の場合、本当にいろいろな職種、業種の方とコラボレーションする機会が多い為、言葉の使い方にはすごく気を付けています。例えば、フィールドワークにお誘いするときに、「UXリサーチやりましょう」と声をかけるのではなく、「視察に行って、そこで課題を見つけましょう」と、意識的に専門用語を使わないようにするといったことを心掛けています。

トヨタコネクティッド 久野さん:UXデザイナー/UXリサーチャーと他職種の方の考え方を比較検討することを意識的に行なっています。ビジネス領域である事業開発や事業企画に携わる方々と仕事をするので、異なる考え方に出会うことがよくあります。その場合は、相手側のロードマップを理解して、どのように目的に向かって並走していくかを視覚化することにより解決しています。

UXリサーチの精度をどのようにあげていけるか?UXリサーチスキルを高めていくには?

メルペイ 草野さん:UXリサーチの精度を上げるには、自転車の練習のように実践を繰り返すことが大切だと考えています。自転車の練習においては、いくらマニュアルだけを読んでも自転車に乗れるようになるわけではなく、転けながら何度も練習し、時には両親に支えてもらって徐々に走れるようになっていきます。UXリサーチも同様で何度も実践して、失敗を繰り返すことで精度が上がり、失敗を活かして様々な方法を試すことがUXリサーチスキルの向上につながると思います。

トヨタコネクティッド 川勝さん:精度に関しては、実践を重ねて、その経験を少しずつ積み上げていくことが大事だと思います。一発で答えを出そうというよりも、少しずつわかった部分と分からなかった部分を積み上げていく必要があります。スキルを高めるために、私は最近、自分がインタビューを受けてみるという経験を積んでいます。双方の気持ちを理解することにより、UXリサーチスキルの向上に繋がっています。

トヨタコネクティッド 香島さん:場数を踏んでいく必要があると考えています。1回やっただけでは答えに辿り着くことが難しいため、経験を積んで、「着地点に辿り着くためにはこういうリサーチが必要だ」という考え方ができるようになる必要があると思います。座学と実践を行き来しながら、試行錯誤していくのが一番の近道だと思います。

トヨタコネクティッド 久野さん:色々なステークホルダーと実際にお仕事してみて、同じことがうまくいかないケースもあると思います。そのため、経験を重ねて、実践を繰り返していくことが能力向上のための一番早い道だと思います。

UXリサーチャーがより働きやすくなるにはどんな環境作りが必要か?

メルペイ 草野さん:ユーザーエクスペリエンス(UX)に対して、価値を感じてくれている組織であることが必要だと思います。やはりUXリサーチ結果が事業やサービスを作る上で活きることが理解されていないと、UXリサーチャーは働きやすくはならないなと考えています。先程、他職種をリスペクトしているとお伝えしたのですが、その逆も必要だと思います、ものづくり・ことづくりをしている人たちが、リサーチがあることにより、より良いものが作れているという相互理解やリスペクトがあると、非常に働きやすいです。また、相互理解がある状態だと、早い段階から相談をしてもらうことができ、状況理解や問いをまとめるフェーズに時間をとって考えていくことができるようになり、リサーチがスムーズでより効果的になります。

トヨタコネクティッド 久野さん:UXリサーチに対して柔軟に対応できる環境作りが必要だと感じています。リサーチの場合、事前に予定していなかったリサーチの必要性が生じるなど、万全に準備するというのは難しい側面があり、柔軟な対応を求められる機会が多くあります。そのため、例えばリサーチの予算を少し大きめに取り実態に応じて計上していくような柔軟性を持たせることで、予算の都合でできない、ということを回避しています。また、リサーチをやり切るためのサポート環境を整える必要もあると考えています。UXリサーチにおいては、突発的に機材やツールが必要になったり、週末でないとリサーチできなかったり、会社の管理制度とフィットしないケースが出てくる場合もあります。なかなか制度自体を変えることは難しいので、運用の部分をマネージャーがカバーをしながら、妥協せずにリサーチをやり切るためのサポートを、組織としてやっていく必要があります。

最後に

大規模サービスに携わる各社のUXデザインやUXリサーチに関する議論はいかがでしたか?

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この記事を書いた人

ReDesigner

ReDesignerは、デザイン会社によるデザイナー向けのキャリア支援サービスです。 企業とデザイナーの間に入り、独自のオンラインアンケートや面談を通じて、 デザイナーの特性やキャリアの指向性を理解した上で適切なマッチングを行います。単純に紹介をするだけでなく、デザイナー特化型の求人票も用意しており、デザイナーが働きやすい環境設計も支援します。

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