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求められるのは、世界基準の顧客視点。1.4億人のユーザー体験を担うファーストリテイリング UI/UXデザインチームとは。

アパレル製造小売業界において、世界第3位の売り上げを誇るファーストリテイリング(以下、FR)。近年は従来の製造小売業から、「顧客を深く理解し、顧客が求めるものだけをつくり、最適な形で届ける」、情報製造小売業に向けて、服づくりの全ビジネスプロセスの改革を進めています。
その中でも、デザインやシステムの内製化は、よりスピーディに顧客に新しい最高の購買体験を届けるためには不可欠であり、それを担うインハウスのデザインチームと、システム開発チームがあります。
両チームが携わるEC事業は、順調に成長中で、2021年8月期の国内ユニクロにおけるEC売り上げ構成比は約15%を占めています。EC・アプリ会員はグローバルで約1.4億人、日本ではユニクロとジーユーを合わせ、延べ約5700万人に上ります。「ECを本業に」という宣言通り、着実に売り上げを伸ばしています。
EC事業の一角を担うUI/UXデザインチームとは、一体どのようなチームなのか。リーダー 鈴木さん(写真:右)、UI/UXデザイナー サブリーダー真鍋さん(写真:左)にお話を伺いました。
鈴木(Suzuki)|株式会社ファーストリテイリング UI/UXデザインチームリーダー
Webコンサルティング会社にて、大規模サイトリニューアルのWebディレクションを経験後、大手デジタルクリエイティブ制作会社にて、ディレクション、プロデュース、プロジェクトマネジメントを担当。
2018年9月、FRに入社、ECサイト制作の内製チーム立ち上げを経験。現在はサイト制作領域およびUI/UXデザイン領域のデザイン組織のリーダーを兼任。自ら制作の一部に携わりながら、チーム戦略立案からマネジメントまでを担う。
真鍋(Manabe)|株式会社ファーストリテイリング UI/UXデザイナー
大学で空間デザインを学び、卒業後Webデザインスキルを習得。クライアント向けWebサービスや、自社サービスの企画・ディレクションからUI/UXデザイン、フロントエンド開発、海外でのフリーランス・UI/UXデザイナー経験まで、幅広い業務に従事。
2018年4月、FRに入社。サイトアプリ領域のUI/UXデザイナーチームのサブリーダーとして、グローバルでのデザイン統一や、チーム体制の構築を担う。
鈴木:FRは“情報製造小売業”への変革を推進しています。情報製造小売業では、世界中のお客様や従業員から集まる情報をもとにサプライチェーンの改革を進め、店舗とECが連動し、お客様がほしい商品や情報を、ほしい時にほしいだけ、ご提供することを目指しています。
そのためには、自社でデータを収集・分析できるエンジニアリングの基盤とそれを生かすデザインが不可欠。そうした背景から、インハウスのUI/UXデザインチームと開発チームが立ち上がりました。
情報製造小売業への変革を目指すため「ECを本業に」というコンセプトを掲げていますが、私たちは、ただECサイトをつくっているわけではありません。アプリケーションの開発や店舗のデジタル体験のUI/UX設計、商品の価格だけではなく、価値を知らしめるためのコンテンツ制作など、お買い物前の情報収集の段階から、お買い物の最中の体験、お買い上げいただいた後まで、オンラインとオフラインをつなぐデジタル上の体験すべてに関わっています。
つまり、UI/UXデザインチームは、ファーストリテイリンググループのグローバルでのEC事業の成長を担う重要なチームの一つなのです。
現在、UI/UXデザイン・デジタルクリエイティブを担うチームは二つのチームで構成されており、全体で約50名のメンバーが在籍しています。
一つが、ユニクロやジーユーのECサイト・アプリのプロダクトマネジメントおよびUI/UX全般を担当するSite App Innovation Team(サイトアプリイノベーションチーム)。もう一つが、ブランドの世界観を体現するデジタルコンテンツやクリエイティブの制作を行うSite Production Team(サイトプロダクションチーム)です。
UI/UXデザイナーだけでなく、PdMやエンジニアも所属し、モノづくりの上流から下流までの知識を取り入れながら、業務に励んでいます。
鈴木:Site App Innovation Team(サイトアプリイノベーションチーム)は、「お客様にとって世界一使いやすく、楽しい購買体験を提供する」ことをミッションに掲げ、アプリやECサイトのプロダクト開発がメインの業務です。最近では、ユニクロやジーユーの店舗で使えるキャッシュレス決済ツール「UNIQLO Pay(ユニクロ ペイ)」や、着こなし検索のプラットフォーム「StyleHint(スタイルヒント)」などに携わっています。また、アプリをつくるだけではなく、ユニクロやジーユー、セオリーなどグループブランドのECサイト、店舗、社内システムを網羅するデザインシステムを開発・導入し、統一された購買体験の実現と効率的なデザイン・開発フローづくりに取り組んでいます。

鈴木:Site Production Team(サイトプロダクションチーム)は、「世界中すべてのお客様がワクワクして買い物を楽しめる、デジタルフラッグシップストアとして、創意⼯夫と美意識のあるクリエイティブな売り場(サイト)をつくる」ことをミッションとしています。
具体的には、お客様のロイヤリティを向上するコンテンツの制作や、お客様の声に基づいたコンテンツの企画・改善を行っています。関わる多くのコンテンツは、グローバルに同時展開されます。例えば、デザイナーや他社ブランドとのコラボレーション商品の発売時にオープンする特設ページなどが担当業務です。

真鍋:戦略の部分から一緒に考えないと良いアウトプットにつながらないという認識が、社内に浸透しているように思っています。
鈴木:デジタル上でのUXやクリエイティブの重要性が、社内で高まっています。特にコロナ禍があって、よりデジタルメディアによるお客様との接点が重要だと感じています。これまでは、マス広告中心に、マーケティング企画が進んでいたものが、デジタルを主軸に、またはデジタルだけで企画するという案件もみられるようになりました。
情報製造小売業として、着実にデジタル体験の向上に対するニーズが高まっていると感じています。
鈴木:3分の1が外国籍の社員で、バックグラウンドも、デザインコンサル、エンジニアリングとデザインの両方、クリエイティブ一筋でやってきたなど、さまざまです。お互いのバックグラウンドを尊重しつつも、言うべき意見はフラットに言う風土があると思います。
こうした風土を生かしつつ、素早い意思決定ができるよう、誰でも同じ基準で意思決定するためのデザインガイドラインづくりに取り組んでいます。

真鍋:代表的なものは、求められるスキルを細かく定義した、「スキルアセスメントシート」ですね。当社のUI/UXデザインチームでは、それぞれに応じたスキルが求められます。自分の得意・不得意を把握し、最短での成長を実現するため、現状と理想を可視化するツールとしてつくりました。
スキルの伸長度合いについては、自分とメンバー双方の視点から評価を行っており、自分と周りの認知のズレを減らすことで、しっかりと成長を実感できるようにしています。
また、外部パートナーと協力して、UXデザインプロセスの質を高めるためのワークショップを開催するなど、チーム全員のスキルの底上げになるような取り組みも実施しています。他にも、一定の額までであれば、自己学習を支援する仕組みを、今期から取り入れています。
鈴木:自分の仕事がグローバルにインパクトを与えられること、事業会社で自社の商品やサービスに携わること、デジタルのクリエイティブが重要であると認識されていること。この三つの条件に当てはまるのが、ファーストリテイリングだったのです。前職では、事業会社を支援していましたので、エンドユーザーであるお客様に、どんな価値を届けられているのか、実感しづらかった。今では、世界中のお客様の反応を、リアルタイムに見ることができ、大きなやりがいを感じています。
真鍋:私も、グローバルに自社ブランドを展開し、実店舗とデジタルの融合に挑戦できる企業を探していました。特に、ブランドに通底する考え方があることを大切にしていて、ユニクロには「LifeWear(ライフウェア)」というぶれないコンセプトがあり、それが魅力的だと思いました。
鈴木:そうですね。直近だと、「MARNI(マルニ)」というラグジュアリーブランドとのコラボ商品を、2022年5月に発売したのですが、その特設ページは、20以上の国・地域で展開し、アクセス数も非常に多く、ファーストリテイリンググループならではの仕事だと実感しました。
一方で、グローバルに名が知られているブランドなので、プレッシャーや期待値も大きいですね。アウトプットの良し悪しは、如実に数字に反映されます。ただ、そういった影響のある意思決定の積み重ねができるのは、自分の成長につながっているという実感があります。
真鍋:グローバルの基準となるUI/UXに携わっていることですね。私たちが目指しているのは、国や地域関係なく、どんなお客様にも良いと思っていただける購買体験です。言い換えれば、安易なローカライズは絶対にしない、ということです。これは非常に難しい課題です。各国の文化や商習慣などを理解する必要がありますし、ただ言葉を翻訳すれば良いものでもない。時にはそれぞれの国や地域に赴き、現地のデザイナーとFace to Faceで議論を重ねることもあります。そのように、ローカルの要望や課題も踏まえて、その上でグローバルでもっともよいやり方を実現するために存在するのが私たちです。
その施策の一つが、私も立ち上げから関わった、ブランドを横断し、共通の体験を提供するためのECプラットフォームにおけるデザインシステムづくりです。グローバルの規模で基準となるデザインシステムの基盤づくりに携われたのは、ファーストリテイリングならではだと感じています。
鈴木:私たちの施策が、お客様に対して実際どのような成果があったのか、購買体験にどう影響を与えられたのか、定量・定性で端的に、そしてシャープに振り返る習慣は、身についてきているかと思います。
また、「成長した」というより、「挑戦中」というのが正しいのですが、グローバルに通用するアウトプットが求められる環境で、多様性のあるメンバーの個性を引き出すチームづくりに携わっているのは、非常に貴重だと感じています。
真鍋:私は、より広い視野でプロジェクトを把握できるようになったと思います。一つの意思決定が、関連するさまざまなチームに影響を与えるため、全ての関連する部門や担当者からの納得感を得て、プロジェクトを前に進められるようになりました。
鈴木:まず大前提として、私たちは常にファーストリテイリングだからこそ提供できる体験とは何かを考え続けています。それは、競合調査などの結果からだけでつくるものではなく、そもそも私たちはどうあるべきか、内に問いを投げかけてつくるものです。
例えば、「LifeWear」を体現したアプリをつくるとして、そのためにはどんな体験要素が必要か、店舗ですでに提供できているとしたら、デジタルの体験に落とし込むとどうなるか。そういった簡単な答えがないことを考え、サービス設計、UX、インターフェイス、モーションなどに落とし込んでいきます。
こうしたプロセスの過程で生まれたファーストリテイリングらしさを、グローバルの基準として整えていくこと。それが目下取り組んでいることです。また、良いローカルの基準があれば、グローバルでも通用するようにアップデートし、取り込んでいきたいと考えています。
鈴木:お客様目線を常に持てること。ファーストリテイリングは創業当初からお客様第一で事業を組み立ててきました。これはお客様の声に耳を傾けることに加え、「声なき声」にも気づく、ということです。ユニクロのヒット商品である、フリースやヒートテックも、お客様のニーズに気づくことから生まれました。このように、常にお客様からの本当のニーズは何かを考える姿勢、そしてお客様にとって一番良いものを届けようと、徹底的にこだわる強さが求められます。
また、お客様の感覚に訴えるデザインスキルと同じくらい、企画を最後までやり抜く推進力も大事です。アプリ一つとっても、多くのステークホルダーが関わるため、周りを巻き込んで形にする必要があります。例えば、事業成長への貢献度を、数字をもとにロジカルに説明する場面もあるでしょう。もちろん、それを一人でやるわけではありませんが、大きなインパクトを出すために、粘り強く進む力が必要となる。そして、それを自分の手で実現したいと思っている方には向いていると思います。
真鍋:私は探究心が大事だと思います。ファーストリテイリングほどの規模でグローバルヘッドクォーターとしてプロジェクトを進めたことのある人は多くはないでしょう。私自身もそうでした。しかし、それに臆することなく、未知のことにも興味を持つことで、プロジェクトを試行錯誤しながらでも前に進められています。そのように、何事にも興味を持てる方だと、働きやすいと思います。
また、冒頭でも触れたように、UI/UXデザインチームは、お客様の購買体験づくりの上流から下流まで携わるチームです。なので、UIデザインができるだけでなく、ビジネス職やエンジニアの方と相手の立場にたったコミュニケーションが取れると望ましいですね。

鈴木:ファーストリテイリングは、デザインを経営に生かすための準備が整った、という段階だと思っています。これからは、より良い顧客体験のためにデザインをどんどん実装していくフェーズです。日本発でグローバルに影響を与えられるUIやUXを設計できる絶好のタイミングだと思いますので、ご興味のある方にお会いできたら嬉しいです。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
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この記事を書いた人

イノウ マサヒロ
1991年生まれ。早稲田大学卒。編集者。新卒でWantedlyに入社。その後、編集ファームinquireにて、スタートアップを中心に取材を重ねる。編集媒体→designing / XD / FastGrow / Being / UNLEASH / パナソニックソウゾウノート
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