
ReDesignerは、デザイナー向けキャリア支援サービスを通して、デザイナーがパフォーマンスを最大限発揮できる社会をつくることを目指しています。これを推進していくにあたって「デザイン業界を俯瞰できるデータがなく企業も意思決定の判断基準がない」という課題が明らかになり、毎年、企業100社にご協力いただいて独自にデザインの価値の変化を定点観測。大好評だった昨年に引き続き、今年もReDesigner Design Data Book 2021を公開しました。
今回は、最新のDesign Data Bookを解説しながら、デザインの価値・役割がどのように変遷しているのかを語るイベントも実施。ゲストとして、NTTコミュニケーションズ デザインスタジオ「KOEL」の立ち上げメンバーとして組織づくりにも携わるビジネスデザイナーの金さん、ヘイ株式会社からデザイン本部長の荒木さんをお迎えし、各社の視点でDesignDataBookの実態や今後のデザイン業界トレンドの変化について語っていただきました。

金 智之(Tomoyuki Kim) / ビジネスデザイナー
九州芸術工科大学卒。2005年、NTTコミュニケーションズ入社。音楽や映像配信サービスなど数多くの新規事業開発に携わる。2011年にデザインチームを立ち上げ、2020年にデザイン専門組織 KOEL を設立した。UIから経営理念まで幅広く手がけ、現在は KOEL の組織デザインに奔走中。

NTTコミュニケーションズは、「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する」ことを企業理念としています。
事業領域は、ネットワークやクラウドなどのICTインフラをはじめ、電話やエコノミーMVNO、業務アプリケーションなどから人工知能(AI)やIoT、5Gといった先端領域まで幅広く展開。現在は、ICTによる社会課題解決を目指す、Smart Worldの実現を目指し、下図の7つの領域における社会課題の解決に向けて、新しい事業やソリューションを創造しています。


「KOEL」はNTTコミュニケーションズのデザイン組織です。KOELのビジョンは「人や企業に愛される社会インフラをデザインする」こと。NTTコミュニケーションズの企業理念である「人と世界の可能性をひらくコミュニケーションを創造する」ことの実現に向け、デザインの力をうまく活用し、会社として社会により大きなインパクトを打ち出していきたい、という思いが込められています。
KOELでは、プロダクトだけでなくブランド、ビジネス、戦略や組織づくりなどまで、抽象的なものから具体的なものまでかなり幅広く手掛けています。また、NTTコミュニケーションズでソリューション提供の事業を手がけるビジネスソリューション本部と、プロダクト開発を担うプラットフォームサービス本部を支える「イノベーションセンター」に属し、それぞれの本部でデザインの力を活用するための活動を行っています。

「NeWork」はKOELが開発したオンラインワークスペース型のWeb会議サービスです。従来のWeb会議サービスにとどまらず、立ち話感覚での相談や有益な雑談などを促す機能も搭載しており、ニューノーマル時代の働き方に寄り添ったツールです。音やデザインを通じて常に チームと一緒に働いている感覚が生まれることで、チームの結束力の向上やコミュニケーションにおける課題解決につながります。

荒木 脩人(Shuto Araki)/ デザイン本部長
1985年生まれ。長崎県出身。横浜国立大学卒業。独学でデザインを学び、ビジネス・アーキテクツなど数社でアートディレクター、クリエイティブディレクターを務める。広告や企業ブランディングなどクライアントワークに10年以上従事した後、BuzzFeed Japanのシニアクリエイティブを経て、2018年より現職にてデザイン本部長を担当。

ヘイ株式会社は「Just for Fun こだわりや情熱、たのしみに駆動される経済をつくる」というミッションを掲げています。こだわりや情熱、たのしみに駆動される経済の創造とは、実店舗やネットにおいて商売をする方々のこだわりや熱意を最大限発揮できるような経済を作り出すことを意味しています。具体的には、オンラインストア開設、POSレジ、キャッシュレス決済、オンライン予約システムなど、お商売のデジタル化を支援する「STORES プラットフォーム」の展開を通じて、誰もがこだわりをもっと自由に発揮できる社会を目指します。

ヘイ株式会社では、「STORESプラットフォーム」という形で、現在4つのプロダクトを展開しています。4つのプロダクトとは、誰でもネットショップを簡単に開設でき、運営もできる「STORES」、STORESのネットショップと完全に連携したPOSレジ「STORESレジ」、キャッシュレス決済を簡単に店舗に導入できる「STORES決済」、誰でもオンラインの予約システムを導入することができる「STORES予約」の4つです。今後もオンライン・オフライン問わずお商売に本当に必要なプロダクトを、みなさんに提供していきたいという思いのもと、デザインをしています。

ヘイ株式会社には、デザイナーが所属する部署として「デザイン本部」と「ブランド本部」があり、20名程度のデザイナーが在籍しています。内訳としては、コミュニケーションデザイングループ6名、プロダクトデザイングループ9名、デザインOps2名、BXデザイン2名です。BXデザインは、社内に対するブランドの浸透やブランド自体のデザインを担当しているので、他社のBX デザインとは少し領域が違うのが特徴です。
後半は、ReDesigner事業責任者の佐宗がモデレートしながら、登壇者の皆さんとインタラクティブセッションを実施しました。

KOEL 金さん:社内からデザイン投資への効果を感じるという声が聞こえてくるようになりました。ただ、プロダクト開発の現場とソリューション提供の現場では、それぞれ違う効果があった印象があります。
プロダクト開発の現場では、UI改善の取り組みを通じて、ユーザビリティやコンバージョンレートの向上に取り組んでいたり、デザイン浸透の成熟度が高い組織では、リサーチ段階からお客さまを意識したサービス開発ができていますね。また、デザインに対し熱意がある人がいると、チームの一体感も出やすいので、KOELのメンバーがプロダクトチームに入ることもあります。
ソリューション提供の現場では、わかりやすいものだと、デザイン投資により、提案書のデザイン性を高めることができ、実際にそれが受注に直結しています。見た目を綺麗にするだけでなく、提供するプロダクトや会社の価値を適切に言語化し、伝わりやすいようにまとめられている提案書を見ると、デザイン投資の効果を感じられますね。
ヘイ 荒木さん:創業当初から代表や経営メンバーはデザインを重要視していたため、社内のデザインへの理解はもちろんのことながら、デザインへの投資に対する理解度は高いと思います。一方で、デザインチームがクオリティ、コスト、スピードを全て求められると、クオリティとスピードがトレードオフになりやすいと感じています。会社全体としては、デザインを信頼してくれる風潮がありますが、組織も大きくなってきた今、どこまでをデザイン投資とするのか、成果をどう定義するのかなど、言語化しておく必要があると感じています。

KOEL 金さん:KOELは研究開発的な位置付けの組織になっていて、プロダクト開発を担うプラットフォームサービス本部と、ソリューション提供を担うビジネスソリューション本部を支える役割を担っています。デザインの力が社内でまだまだ認められていない状態から活動を始めているため、組織を守り育てるという位置付けでもありますね。現在は、各事業でのデザインプロセスの導入やデザイナー育成推進することで、デザイナーの活動領域を社内に広げていく活動をしています。KOELのデザインOpsでは、KOELの広報や採用、カルチャー醸成、デザインシステムまでをカバー。例えば、Notionをいかに綺麗にしていくかというような業務を担っています。あとは、KOELのブランディングを考えていくデザインワークなども担当していますね。
ヘイ 荒木さん:ヘイの場合はプロダクトがいくつかあり、元はそれぞれ別会社だったため、基本は事業部制に近い状態でした。一方で、プラットフォームとして事業展開をする中で、横断的な組織にする必要性が生まれてきました。このような背景により、現在のような組織構造が形成されています。また、デザイン組織にデザインOpsを設置したのは、プロダクトチームとコミュニケーションデザインチームだけでは、追いつかない作業が多かったからです。例えば、組織のメンテナンスや評価制度設計、採用などは私が主に担当していました。偶然、その分野に興味があるデザイナーが1名おり、今のデザインOpsが誕生しました。

KOEL 金さん:KOELには、 UI デザイナー/ UXデザイナー/ビジネスデザイナー/デザインリサーチャーの4つの職種があります。ビジネスデザイナーの業務内容としては、経営戦略や事業戦略、プロダクト戦略へのデザインの導入などがあります。会社全体でのCXの向上やカスタマーサクセスについて、デザインの文脈として捉え直して導入を支援する、というアプローチも行っています。デザインリサーチャーは、事業機会の探索を得意とする職種です。事業戦略やプロダクト戦略を考える際の初期のリサーチを行います。UXデザイナーはブランディングから体験設計、ワイヤーフレーム作成あたりまでを行い、UIデザイナーはそこから、コーディングの手前までを担当。プロダクト開発の現場ではUXデザイナーは、お客さまの体験を中心としたサービス企画のような業務を担当します。ソリューション開発の現場では、ビジネスデザイナーとデザインリサーチャーがソリューションの企画段階から入る場合が多くなっています。
ヘイ 荒木さん:ヘイはKOELさんと比べると、もう少し大雑把に職種を切り分けています。大きく分けると、プロダクトデザイナーとコミュニケーションデザイナーの2つの職種です。業務内容としては、良いプロダクトを作る/良い伝え方を考える/良い環境を作るというように結構シンプルです。ただし、ここから3年ぐらいのスパンで考えると、もう少し職種を細分化していく必要があると感じています。現在はデジタルのプロダクトデザイナーを増やすことにフォーカスしています。

KOEL 金さん:デザイナー採用における課題は母集団形成ですね。また、採用活動は選考が進む中で選考に関わってくれるメンバーがいるものの、基本的に私ひとりで行っているので、採用に関わるメンバーを増やしていくのも課題なのですがデザイナー採用は専門性が高く、デザインの実務を分かっている人でなければ難しいという点も課題として挙げられますね。ジェネラリストの採用であれば、人事に頼むことができる一方、デザイナーは専門的なスキルの見極めが必要なので。これらの解決のためにも、採用プロセスを仕組み化したいと考えています。どういう観点で質問をするのか、伺ったお話をどう評価をしていくのかなどについて仕組み化していく計画です。
ヘイ 荒木さん:私たちも母集団形成できていないというところに課題を感じています。私はデザイン組織の運営全般を担当していますが、その中でも一番比重が大きいのは採用です。また、来年以降は採用だけでなく、社員に対する教育にも力を入れていく必要があると考えています。ヘイの場合、デザインに対する経営陣の理解もあり、今のところCDOは設けていません。本来、CDOがひとりで担う役割を、私を含めた3人のリーダーで分担しています。具体的には、私が組織運営を行い、リードデザイナーがプロダクト全般を、あと1名が社内を含めたブランディングを担当するという役割分担をしています。

KOEL 金さん:KOELには、副業・フリーランスでプロジェクトに入るデザイナーはおりませんね。今後はチャレンジしていきたいですね。
ヘイ 荒木さん:インハウスなので、さまざまな経験ができた方が良いと考えており、副業は全デザイナーに推奨しています。また、業務委託という形で、フリーランスの方2名にお手伝いしていただいています。そのうち、創業時から協力していただいているデザイナーには、デザインリーダーたちの相談役としていつもお話しさせていただいています。また、カメラマンでライターをされている方には、撮影やメディアの記事制作などをお願いしています。

KOEL 金さん:新卒デザイナー採用は3年程実施しています。今年度で4年目で、毎年2人程度を採用しています。毎年採用している理由としては、大学の教育も広がってきて、新卒であっても、即戦力で動いてくれる方が増えているから。また、デザイナーに対する認識を社内に広めるという意味でも採用を続けています。同期にデザイナーがいると、デザイナーという存在を社員に知ってもらえるきっかけになると思っています。
ヘイ 荒木さん:新卒デザイナー採用は今年からはじめました。過去に新卒で入社してくれたデザイナーは3名ほどいるのですが、あくまでスタートアップの初期のフェーズで入ってくれたメンバーや、学生アルバイトとして長く働いてくれていたメンバーです。本格的に新卒採用を行うのは今年からで、今は23卒に対してアクションしようとしているところです。選考では学生の学校種別やバックグラウンドは特に気にしていません。学歴よりもポートフォリオを重要視しています。ポートフォリオを見る際に、学校の課題だけが掲載されているポートフォリオよりは、その人の純粋な興味関心で作ったものが掲載されていると人柄を感じることができて嬉しいなと思います。

KOEL 金さん:最近はデザイン×テクノロジーのように、複数の領域で専門性を持つことが強みになると思っています。大学の専門に限らず、分野を横断して専門性を持つことも重要なので学生時代から専門的にデザインを学んでいる方でなくても、自分の専門×デザインという考え方をしてみることも大切です。自分なりの専門性や強みを持ち、それを意識しながら就職活動をすることで、きっと自分の理想とするデザイナーになれると思います。その上で悩んだ時には、仲間をネット上で探してみるのも、時代にあったやり方で良いと思います。完全な正解はないと思うので、とりあえず手を動かしてみることが大切ですね。
ヘイ 荒木さん:僕は36歳ですが、まだまだデザイナーを楽しめそうだな、というのが感覚としてあります。なので、ファーストキャリアで深刻に悩みすぎなくて良いと思います。そうは言っても、デザイナーを目指すことに対し、不安になったり、何から始めていいのかわからなかったりすることもあると思います。悩んだ時には、自分が本当に興味があるものは何なのか、どんなものに好きだと反応するのかなど自分の興味や好奇心を大切にしてほしいなと思います。 UI デザイナーのためのデザイン学習というよりは、自分の興味に向かってまっすぐ進んでほしいなと思っています。
各社のデザイン投資やデザインの価値・役割の変遷に関する議論はいかがでしたか?
ReDesignerは、デザイナー向けのキャリア支援を行っています。 様々な領域の企業と連携し、企業とデザイナーの間で適切なマッチングを行います。今回の登壇企業に興味のある方やキャリア相談をしたいデザイナーの方は、お気軽に以下のリンクからお問い合わせください!
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この記事を書いた人

ReDesigner
ReDesignerは、デザイン会社によるデザイナー向けのキャリア支援サービスです。 企業とデザイナーの間に入り、独自のオンラインアンケートや面談を通じて、 デザイナーの特性やキャリアの指向性を理解した上で適切なマッチングを行います。単純に紹介をするだけでなく、デザイナー特化型の求人票も用意しており、デザイナーが働きやすい環境設計も支援します。
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