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デザイン投資に対する傾向から読み解く、デザイナーに期待される役割とは

https://redesigner.jp/

編集部より

2022/11/10

デザイン投資に対する傾向から読み解く、デザイナーに期待される役割とは

Goodpatchでは今年も日本企業のデザイン投資やデザイナーの働き方のトレンドを可視化する年次調査『ReDesigner Design Data Book 2022』(以下、デザインデータブック)を公開しました。今年で4回目となる本調査では、IT・通信業界を中心に約100社の企業の人事担当者及びデザインマネージャーや、約2400名のReDesignerに登録しているデザイナーなどへアンケート調査を行い、回答結果を全97ページにまとめました。

本記事では、企業のデザイン投資に対する傾向から、デザイナーにどんな役割が期待されるのかを読み解きます。

デザイン投資に力を入れる企業が90%に

今年のデザインデータブックで特筆すべき大きなトレンドは「デザインの投資」に効果を実感する企業が90%まで増加していることです。この数値は2019年に比べて33%も増加しています。

実際に企業がインハウスデザイン部門を立ち上げるケースが年々増えており、消費者が自身の価値観や生活スタイルに合うサービスや商品を購買する現代においては、デザインが果たす社会的役割が増えていることが伺えます。

また外部のデザインパートナーに発注経験がある企業も83%にも登ります。

デザイン投資に対しては「プロダクトの品質向上」、「顧客満足度の向上」、「ブランディングの向上」の三つが実感する効果の項目として上位に入っています。

デザイン投資が増えてるとはどういうことなのか、具体的には、企業のあり方に二つの変化が起きています。

一つ目は、社内に所属するデザイナーの数の増加です。昨年と比べると、30-49名のデザイン組織の回答が5%から10%に増加し、デザイナーが1名もいないと回答した割合は7%から3%まで減少しています。

実際にReDesignerへの企業問い合わせ数は2020年が年間140件に対して、2021年は489件、2022年はそれを上回る勢いで増加をしています。

二つ目は、デザインセンターを設置する企業の割合の増加です。デザインデータブックにおけるデザインセンターとは、事業部配属ではなく、機能的な組織としてプロダクトや組織を横断し、様々なデザイナーが所属してプロジェクトにアサインする体制を取っている組織を指します。

昨年、デザインセンターを設置している企業は17%でしたが、今年は20%に増加し、デザイン組織が所属している部門として事業部、経営直下の次に多い割合となりました。実際、デザイン組織は経年で事業部配属から機能的な組織へ、そしてまた事業部配属へと組織戦略と事業フェーズによって変化をしていきます。今は機能的な組織が増えているフェーズというデータになっています。

丸井とGoodpatchのジョイントベンチャーであるMuture、資生堂インタラクティブビューティー、パナソニックコネクトなど、大企業においてもデザインを経営の大事な要素に取り込んだ会社の事例が増えています。

一方、デザイン投資を妨げている要因の一つは昨年と変わらず採用で、母集団形成を一番の課題と捉えている企業が引き続き6割を占めます。そのため、副業人材やフリーランスを採用する企業は増加傾向にあります。6割の企業が副業やフリーランスの参加を受け入れており、企業が自社のデザイナーに副業を許可している割合は8割まで増えています。

副業やフリーランスのデザイナーがポテンシャルを発揮するためには、同期・非同期のコミュニケーションフローを整えることが欠かせません。これについては、弊社のフルリモート共創集団Goodpatch Anywhereの働き方などは参考になるかもしれません。

B to B企業におけるデザイン需要が高まる

続いて、デザイナーの需要が高まると考えられる領域について。まず、希望する事業形態の変化では、法人向け(B to B)の数が4%から7%に微増しています。

この背景には、B to B SaaS領域の盛り上がりが考えられます。日本でも、SaaS企業の成長指標ARRが100億を超える上場企業が現在6社まで増えました。(2022年8月現在)例えば、マネーフォワードのSaaS ARR事業は昨年比143%成長をしています。非上場企業では、Ubie医療機関向けのAI問診サービスを提供する「Ubie」は2022年10月に総額62.6億円の調達をしています

海外ではSalseforceを始め、B to B領域におけるデザイン投資は当たり前になっており、日本でもFigmaのデザインシステムに特化したカンファレンスSchemaが開催されました。また、2022年11月に行われるSaaS Design ConferenceのようにB to B企業で働く中の人が、B to B領域のデザインを盛り上げる動きを見せています。

こうした事象がB to Bへの挑戦を後押ししているのではないかと考えられます。

B to B領域におけるデザインでは、実際に自分がユーザーになり得ないプロダクトをデザイナーとして担当することが多いと思います。よって、実際に現場に足を運んでの観察やイマーションと呼ばれるような現場理解、そしてユーザーインタビューを通じたユーザー像の理解が非常に大事になります。これをリードできるのはデザイナーであり、B to Bソフトウェアサービスの使い勝手の良さの大きな差別化要因になり得ます。

デザインマネージャーの需要が高まる

企業内のポジションのニーズでは、デザインエグゼクティブやデザインマネージャーのニーズが高まっています。デザインエグゼクティブを迎え入れたいと回答した企業は全体の5割を超えており、デザインマネージャーが在籍する企業は昨年の53%から66%まで増加しています。

デザインエグゼクティブやデザインマネジャーに求められるのは、経営者や事業責任者と対話し、デザインを中長期的な投資対象として捉えてもらうこと。言い換えると、短期的なPLだけでなく、長期的なBS、つまり企業の資産としてデザインを認識してもらうことです。この理解を得られるかどうかが、企業のブランディングや製品の使い勝手、そしてデザイン組織の強化に繋がり、企業の競争優位性に影響します。

また、デザイナー独自の評価システムを構築している企業は昨年の15%から23%に増加していることから、デザイナーが働きやすい環境を整えるDesign Operation(略してDesign Ops / デザインオプス)などが注目を集めていると考えられます。

Design Opsは2014年、アメリカのインタラクションデザイナーDave Malou氏が提唱した概念です。GoogleやNetflixなどの企業がすでに運用をしており、日本でも最近浸透しつつあります。(Design Opsの詳しい概念についてはこちらを参照ください)

ちなみに、デザインに対する理解を促すために海外ではDesign Advocate(デザインアドヴォケート)という職種が注目を集めはじめています。Design Advocateは、組織を横断したデザイン理解を促す職種です。

先日のSchemaでもFigmaのDesign Advocate担当が講演をするなど、Design Ops同様注目を集めています。今後、日本でもデザインの正しい理解促進をしデザイナーが働きやすい環境をつくるDesign Advocateは増えていくかもしれません。

デザイナーはピープルマネジメントやワークフローの整備などの役割がより一層期待されていくと思いますが、一方でデザイナーは「ものづくりができること」が領域問わず最大の強みでもあります。価値を研ぎ澄ませて、MVPを作って観察する。それは、チームや制度のデザインでも活かせるスタンスなはずです。

デザイナーを受け入れる側の立場の方は、デザイナーが企業を選ぶ上でどのようなことを重視しているのかを理解することも重要です。実際データとしては「自身の興味のある分野」「自身の学習や成長機会」「顧客に向き合ったプロダクトに集中できる」と続いています。

これらを自社の環境ではどのように実現する環境やサポートがあるのか、意識してみるといいと思います。

デザイナーらしいパフォーマンスの発揮の仕方をしつつ、組織全体もより良くしていく。その相互作用を後押しできるよう、ReDesignerも微力ながら貢献していきたいと思っています。

デザイナー志望学生のトレンド

最後に、デザイナー志望学生のトレンドを紹介します。今年から新しく取り始めたのは企業を選ぶ上で重視することです。結果としては「働きやすさ」「仕事のやりがい」「カルチャーマッチ」と続き、より自分の働き方と価値観や内的報酬などとのマッチングを重視していることが伺えます。それぞれに取っての働きやすさとは何か?を言語化できると採用する側も学生もよりマッチングが進むと思われます。

次にデザインを学ぶ上での困りごとや悩みです。こちらも昨年と引き続き「自分のやり方でいいのか不安になる」がトップに来ています。特に直接的にデザイン専攻ではない学生の場合、周りにデジタルデザイナーとして就職をした先輩もおらず、自己流で制作活動や就職活動をしているケースが見受けられます。デザイン専攻の学生であっても、不安や焦りを抱えながら就職活動をするケースが多いです。

社会人のデザイナーからのポートフォリオレビューや雑談、合同説明会を通じて具体的な働き方の可視化などを通じて、より学生に向けて情報を透明化し対話を重ねることで解消していけるのではないかと感じています。

さいごに

以上、デザインデータブック2022のトレンド紹介でした。デザイン投資がこれまで以上に活発になる中で、デザイナーの役割の細分化と専門化が進み、次は組織としてデザイナーの強みをどのように発揮できるかへとステージが変化してきました。

この記事を読んでいる企業担当者やデザイナーが、周りの経営者やプロダクトオーナーへデザインの価値を説明する際に、是非デザインデータブックを活用していただけると本望です。

デジタルデザイナーの数がニーズに対して追いついていない中、ReDesignerではReDesigner for Studentを通じデザイナーを世の中に増やし、ReDesigner for Freelanceを通じて少しでもデザインの力を欲している企業とデザイナーをマッチングしていきたいと思っています。

来年はプラットフォーム化を見据えた大きな進化も予定しているので、ReDesignerはこれからもデザイナーがパフォーマンスを最大限発揮できる社会の実現に向けて前進していきたいと思います。

なお、今回の形式でのトレンド紹介は一度区切りとし、次回からはこれらの社会的な動きやデザイナーへの期待値の変化を合わせて設問を新しくしていく予定です。定点観測が必要な部分はデジタルデザイン業界の可視化を目的に継続しますが、今後は日本において可視化できていない領域に焦点を当てて、新しいデザインデータブックをお届けできればと思います。乞うご期待ください!

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この記事を書いた人

佐宗 純

新卒で大手通信会社にてデザイン思考を用いた新規事業開発に従事。2015年にUXデザイナーとして株式会社グッドパッチに入社しProttの初期フェーズやデザイン思考研修を担当。2018年5月、ReDesignerをリリースし、2019年6月、ReDesigner for Studentをリリース。2020年6月、東証マザーズ上場を経験し、2021年10月、グッドデザイン賞を受賞。同年からオンラインホワイトボードStrapの事業責任者を兼務しGoodpatchの可能性を拡げている。立教大学経営学部卒業。

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