
今回インタビューしたのは、BMWドイツ本社で働くインタラクションデザイナーのアンドレアス・フランクさんです。
プロフィール
アンドレアス・フランク
ドイツ、アウクスブルク出身。2011年にシュヴェービッシュ・グミュント造形大学インタラクションデザイン学科に入学後、2014年から東京造形大学に半年間留学。帰国して大学卒業後、再び来日してGoodpatch Tokyo そしてGoodpatch Europe でインターン生として働く。その傍らミュンヘン工科大学の人間工学の修士号を取得し、2017年からBMWドイツ本社でインタラクションデザイナーを務めている。
アンドレアスさんはドイツでどんなきっかけでデザインに出会って、世界のプロダクトを作るインタラクションデザイナーになったのか。そして今インハウスのデザイナーとして、どんな想いでデザインに取り組んでいるのかお話を伺いました。
私はドイツのアウグスブルクという30万人ほどが住む小さな町で生まれ育ちました。幼い頃は友達と遊んだり、ビデオゲームが大好きな少年でしたね。中学生になると、あまり勉強が得意な方ではなかったのですが、絵を描くことなど創作に興味を持っていました。
学校で開催された絵のコンクールでは、2位や3位とトップの成績に。ここでの成果は絵を描くことのモチベーションにもなって、クリエイティブな世界へ引き込まれるきっかけになりましたね。それで中学を卒業してからは、美術系の高校に進学することにしたんです。
ドイツの高校は2年制。自分の興味関心のある分野を深く学べる学校もあり、私が通ったのもその一つです。数学や歴史といった一般的な教養科目と並行して、幅広い美術の授業を受けることができました。
具体的にはデザインやデジタルアートの基本から、Photoshopなどのデザインツールを実践する専門的な学びまで。初めて美術や心理学の基礎から学んだことで洞察力を得ることができましたね。さらに合計6ヶ月にも及ぶ制作ワークショップもあって、自由に道具を使って制作できる機会に恵まれていました。
学校は将来のキャリアを見据えて興味関心を見極めることができるように、美術の幅広い分野を手当たり次第触れることができるようなカリキュラムが組まれてました。こうした学校生活を経て、大学を探す頃にはインダストリアルデザインやプロダクトデザインに関心を持つようになっていました。
とある大学のオープンイベントで在学生の作品が紹介されており、そこにはインタラクションデザインやUIデザインなどのデジタルデザインが並べられていました。私はこの時初めて作品を見て、強く惹きつけられたんです。
2011年当時、デジタルデザインが時代の最先端だったこともあり、将来の可能性をここに強く感じましたね。これがきっかけで「デジタルデザインの道に進もう」と心に決め、この大学に進学することにしました。それがシュヴェービッシュ・グミュント造形大学で、ここはあのオトル・アイヒャーやマックス・ビルが深く関わったウルム造形大学から影響を受けている有名なデザインの大学です。
ここではコミュニケーションデザイン、プロダクトデザイン、インタラクションデザインの3つの学科に分かれます。私はデジタルデザインを学ぶために、インタラクションデザインの学科に進みました。

シュヴェービッシュ・グミュント造形大学のサイトから:https://www.hfg-gmuend.de/
授業ではアプリやディスプレイのインターフェイスや、ユーザーエクスペリエンス、ユーザビリティ、コミュニケーションデザイン、心理学論などを受講していました。個人的に一番楽しかったのはUIデザインの授業です。やはりiOSが急速に成長していた時期で市場にポテンシャルがあったので、授業で聞いていてワクワクしていましたね。
教授の展開する授業から深い洞察力を得たり、Cinema4DやCGIなどのどんなデザインツールやプロトタイピングツールの使い方も教えてもらったり。授業はワークショップ型で他の学生とチームとなって取り組むものがほとんどだったので、ものづくりのプロセスを実体験から学んでいました。卒業課題もチームワークだったので、学生時代から将来に向けてチームでデザインワークを経験することができたのは良い経験になりましたね。
大学には提携先の海外大学で半年間留学できるプログラムがあって、私は日本の東京造形大学に留学することにしました。ここを選んだのは、東京はモダンで未来的な都市だと感じていたからです。私の故郷とは正反対の全く異なる環境。ここではどんな体験ができるのか興味を持っていたんです。実際に過ごしてみると文化や人にも惹かれて、日本で働く経験をしてみたいと考えるようになりました。
大学卒業のためにドイツに一旦帰国後、インターネットで日本のUIデザインの会社を探して手当たり次第応募してみることに。その時偶然Goodpatchに出会いました。コーポレートサイトを見ているとメンバーにドイツ人らしき名前が。気になってLinkedinで調べてみると、それはボリス・ジツカタ(現 Goodpatch 取締役)で、ドイツ出身であることもわかりました。これは話が早いと思って直接メッセージを送ると、すぐに返事が来ました。なんとボリスは私が当時住んでいたミュンヘンに偶然いたんです。それで次の日にはランチに行き、ポートフォリオを見せて話をしました。
そして彼に次に会ったのはちょうど1ヶ月後、東京のGoodpatchのオフィスにて。憧れだった日本でのインターンが始まったんです。

当時のGoodpatch Tokyoのオフィスの風景
最初は小さい役割から始まり、徐々に様々なクライアントの支援に関わるようになりました。あるベンチャーキャピタルのCIを作ったり、Goodpatchのコーポレートサイトを作ったり、Androidアプリのデザインを担当することもありました。インターンとしてGoodpatchのデザイナーと働いてみると、デザイナーでも様々なフィールドに興味を持っていて視野が広いことがわかり、刺激的な日々でしたね。

Goodpatchでインターンしていた時の様子
働く環境はドイツとは違う点もありました。例えば、相手の間違いを日本ではオブラートに包んで伝えることが多く、直球ではあまり伝えないですよね。でもドイツには間違いを的確に指摘する文化があるので、コミュニケーションには時々違いがありました。それでもGoodpatchにはとてもオープンなカルチャーがあり、当時は毎朝英語セッションを行うなどコミュニケーションの機会も多かったので、働きやすかったです。若いメンバーも多く、成長速度がとても速くて刺激的だった。半年のインターンを終える頃には、私もGoodpatchがとても好きになっていました。
その頃ドイツのベルリンでは、ボリスがたった4人でGoodpatch Europeを立ち上げたばかりでした。私自身Goodpatchが好きだったことに加えて、ドイツにありながら日本にルーツを持つデザイン会社はとても珍しいですし、メンバーとして新しいオフィスを作っていくことに興味を持ったので、帰国後はGoodpatch Europeでもインターンとして働くことにしました。

立ち上げ当初のGoodpatch Europeのオフィス
こうしてドイツでもデザイナーとして働き出しましたが、若くて自由な今がチャンスだと思っていたこともあり、修士号をとるべく大学に通うことにしました。リモートで自宅から働きながらミュンヘン工科大学に通って、UI/UXを含む人間工学を学びました。
この学校はドイツで一番の工科大学だったので、私が学んだものも純粋なデザインではなくて、コックピットのデザインなど複雑なユーザービリティなど。アプリケーションのデザインの域を超えた経験を積んでいきました。
そんな時、シュヴェービッシュ・グミュント造形大学時代の友人から連絡をもらいました。彼は私がミュンヘン工科大学で人間工学を学んでいることや、車好きなことを知っていたんです。それで「自分のデザインチームをぜひ手伝って欲しい」と彼からオファーが。これが私の現職、BMW(ビーエムダブリュー)との出会いです。大学院を卒業後、すぐにBMW本社でデザイナーとして働き始めることになりました。

BMWには、ミュンヘンに本部を持つインハウスデザイン組織があります。一台の車をつくり上げるには数え切れないほどの部品が必要ですから、その分だけあらゆる分野のデザイナーが在籍しています。私はインタラクションデザインの部署に所属していて、そこでは20人弱のデザイナーとチームになって働いています。私たちは主に車内のディスプレイなど、乗車体験のデザインが担当です。
元々10人弱のチームでしか働いた経験がなかった私にとって、突然大企業に入って、コミュニケーションする人が一気に増えたので最初は戸惑いもありました(笑)でもデザイナーとして在籍するメンバーにはデザイン思考が浸透していて、すぐにチームとしての働きやすさを感じましたね。
それでもBMWに勤めて3年、様々な苦労もありました。この業界はとにかく変化が早いので、乗り遅れないようにキャッチアップしてデザインしていくことは、私にとって新たな挑戦でしたね。デザインの流行をdribbbleでチェックして、手が空いている時は練習として実際にデザインしてみる。それに自動車業界のトレンドチェックも欠かさずに行うことでデザイナーとしてのスキルも磨いてきました。
こうした日々でも、楽しいことやモチベーションに繋がることが多かったように思います。やはり私は車好きなので、デザイナーとして好きな物の体験作りに関わっていることは大きな喜びですね。次のステップとしてプロジェクトのリードを目指す選択肢もあるんですが、今はまだプレーヤーとしてデザインし続けたいと思っています。
インハウスデザイン組織に所属することは、デザイン会社での働き方とは異なります。デザイン会社では参加するプロジェクトに期限があって、関われる期間が限られている一方で、次々に新しい業界の知識を蓄えることができますよね。インハウスデザイン組織では、常に一つの制作に集中して長期的に開発する。プロジェクトに終わりはありません。日々たくさんのアップデートがあって、常に「開発中」なんですよね。
私はこの両方を経験してきて、どちらにも良さがあると思っています。終わりがあるということは、それだけ多くのサービスやプロジェクトを作ることができますからね。でも今のように継続的な開発を通して、これが次の世代に向けてどのように進化を遂げるのか、この目でみることができる。そういうところに面白さを感じています。
基本的には、人と機械を繋ぐインタラクションをデザインすることです。しかしこの分野にいると、異なる分野のトピックも出てきます。例えばユーザーエクスペリエンスなど。これによって良いユーザーインターフェースに繋がるように、良いインタラクションにも導いてくれるから注目されているんですよね。今はなんとなく繋がる広い分野になっていますが、本来どれも一貫してデザインされるべきなんです。だからこの広い分野を横断的にカバーすること、それがインタラクションデザイナーの役割だと思っています(笑)
もし機会があったら、ぜひドイツに来てください。これは冗談ではなくて、私自身デザイナーとして最も影響を受けたのは、学生時代に日本にいた時だからです。異なる文化を持つ環境に身を置いて、自身の当たり前として存在する文化とのギャップを知ることは「デザインとは何か」という国や地域での違いを発見することにも繋がります。だからドイツでも他の国でも、気になる所に訪れてみるとデザイナーとして役に立つ発見があるかもしれません。
そして最後に、今自分がやっていることに情熱的になること。すると、なりたい自分に近づくことができる、私はそう信じています。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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