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イノベーションを生み出すパーパスブランディングとは【共創×デザイン】ReDesigner Social Impact Week

2021年の5月26日から6月1日にかけて、ReDesginerが主催する“Social Impact Week Vol2”が開催されました。全5回に渡り、社会課題×デザインについて考える様々な企業に登壇いただきました。Design Action・Creative Actionの重要性が叫ばれている中、各社は社会課題に対してどのようにアプローチし、その中でデザインはどのような役割を担っているのでしょうか。
今回は株式会社MIMIGURIさん、コニカミノルタ株式会社さんの2社が登壇した【共創という観点から、イノベーションを生み出すパーパスブランディングについて考える】をテーマにしたトークセッションの内容をお届けします。
MIMIGURIさんからは、そもそも共創とは・どのように共創することで創造性を生み出すのかというお話。そしてコニカミノルタさんからはFORXAIを立ち上げた際、どのように共創していったのかについてお話していただきました。

小田 裕和(Hirokazu Oda) | 株式会社MIMIGURI マネージャー/ デザインリサーチャー
1991年生まれ。千葉県出身。千葉工業大学工学部デザイン科学科卒。千葉工業大学大学院工学研究科工学専攻博士課程修了。博士(工学)。新たな価値を創り出すための、意味のイノベーションやデザイン思考といったデザインの方法論や、そのための教育と実践のあり方について研究を行っている。MIMIGURIでは、新たな意味をもたらすための商品開発プロジェクトや、主体的に価値創造に取り組む人材の育成プロジェクトを中心にディレクションやファシリテーションを担当している。著書に『リサーチ・ドリブン・イノベーション:「問い」を起点にアイデアを探究する』がある。
私たちMIMIGURIは「分断された組織の知を、ひとつに編み直す。」というビジョンを掲げ、そのためのお手伝いをブランディングやワークショップによって行っています。私たちはこうした創造的な組織づくりに伴走する上でのデザイン原則として、Creative Cultivation Model(CCM)という見取り図を用いています。
組織の創造性を主軸にデザインアプローチを取ってきたこともあり、これまでに様々な共創の場づくりを行ってきました。では、そもそも共創とは何なのでしょうか。共創するデザインを指すワードとして知られている「コ・デザイン」について、上平崇仁さんの著書『コ・デザインーデザインすることをみんなの手に』において、次のように語られています。
《デザイナーや専門家などの限られた人々によってだけではなく実際の利用者や利害関係者たちと積極的にかかわりあいながらデザインを進めていく取り組みのこと。その取り組みを通して、見落としがちな視点を提示する力、領域の壁やしがらみを破壊する力、当事者自身を力づけ持続させる力などを生み出すことができる。》

では、そもそも共創することの大切さはどこにあるのでしょうか。共創についてまず、認識を改めなくてはいけないのは、答えを求めるためではなく、あり方を探るために共創があるということです。現代社会は、VUCAとも呼ばれる非常に複雑性、不確実性のある社会へと変貌を遂げています。そこで重要になるのは単なる商品価値ではなく、組織としての思想、つまりあり方を全員で考えることです。

著書『リサーチ・ドリブン・イノベーション』の中で紹介している探究的ダブルダイアモンドの左側のフェーズこそが共創の真価を発揮する部分です。共創することの本質は、多種多様なステークホルダーとコラボレーションし、同じ視座を持って共通のお題について考えることにあります。共創「させる」といったワードとともに上層部が号令をかける状況は、あまり好ましくありません。

共創の根底的な存在価値を踏まえて、共創の進行過程を判断するにあたって、私たちが掲げているCCM(Creative Cultivation Model)が役立ちます。
この図では、共創において、最も重要で深い“木の根”として、個人の創造的衝動を配置しています。そして、1人ひとりの衝動がベースとなって、目指したいあり方を語り合う、創造的対話につながっていきます。

創造的対話によって組織としてのあり方に対する意味付けが共有されることで、次第に組織に共通のパーパスが生まれます。このパーパスは、必ずしも固定的なものではなく、組織の成長や、状況の変化によって、再解釈と更新を繰り返していきます。また、パーパス自身も組織に影響を及ぼすため、パーパスが変化し、その結果組織のあり方も変わり、それがまたパーパスの問い直しにつながるといった、ある種の循環が生まれます。こうした循環の中心を担う行為が「対話」です。
対話の重要な性質の一つに「判断の留保」というものがあります。対話とは、結論を出すことを目的とするのではなく、お互いを深く理解し合い、何を良いとするかの価値観を探っていくプロセスです。。そのため、安易に良し悪しの判断を行わず、一旦留保し、まずはお互いに価値観を出し合い、共感しあえるポイントを探ることが大切になります。
逆に、どちらが良いかをジャッジすることを目的とした会話は「議論」に分類されます。

これを体現した事例として、株式会社PATRAのフレグランスブランドwondeのブランディングをご紹介します。私たちはwondeさんとのプロジェクトにおいて、ブランドの方向性を共に描き、一緒に創りあげるような同じ視座を持った関係性を築けたことがポイントでした。つまり、共創的関係によって、パーパスブランディングの根底にあるWhyを考えることができたのです。これを実現するには、「そもそもなぜブランドを作りたかったのか」などと根本を揺さぶる問いかけが鍵になってきます。
より詳しく読んでみた方は是非、事例記事を読んでみてください。
https://www.don-guri.com/works/wonde/

これまでお話してきた共創的姿勢を文化を確立できない状況、つまり共創し続けられない状況というのは、前提となる自分たちのありたい姿を問い直せないということです。
一度「私たちが大切にするべきことは〇〇だ」というパーパスを定義したものを問い直せないと、変化の激しい社会についていくことはできません。また価値観の違う人々とぶつかった時に、固定化したパーパスはかえって共創を阻害する要因にもなり得ます。、認識を固定化させずに、自分なりの意味づけを考え続けられる様な、問い直せる余白をしっかり持っていることが大切になります。

例えばA社とB社が「自分たちの強みをかけ合わせた共創を行おう!」と意気投合するシーンがあったとしましょう。しかし単にお互いの想いや強みの共通点ばかりを見ていては、本当の意味での競争は生まれません。そもそも私たちがやりたいことは何かを問い直すことから始めなければ、、本来的に共創をしているとは言えないのです。
ここでテーマになっていた、曖昧さの価値が表出します。お互いの大切にしたいことや実現したいこと、あるいは共創を行う目的に語りたくなるような余白があれば、改めて一緒に取り組むからこそ目指すべきことは何かを問い直すことから始めることができます。こうした「魅力的な曖昧さ」について対話を広げながら、共に探究する姿勢を持つことが本質的な共創につながるのです。

長田 彩加人(Nagata Agato )| コニカミノルタ株式会社 ヒューマンエクスペリエンスデザインセンター デザインストラテジスト
オフィス家具メーカーでのデザイン経験を経て、2012年にコニカミノルタ株式会社に入社。新規事業領域のプロダクト・UXデザインを担当し、グッドデザイン賞 金賞、German Design Award GOLD等、多数受賞。 2020年より全社のデザイン思考推進と事業戦略策定に取り組み、画像IoTのプラットフォーム“FORXAI”のブランディングを手掛る。幅広い専門性を生かし、社内外の共創を牽引している。
コニカミノルタ株式会社は、カメラおよび写真事業を行っていたコニカ株式会社とミノルタ株式会社が合併してできた会社です。現在カメラや写真事業からは撤退していますが、「人々の大切な “みたい”に応える」というDNAは脈々と受け継がれており、プラネタリウム分野や商業印刷分野、医療分野などで事業を展開しています。強みである画像IoT技術をFORXAIというプラットフォームとして新たに立ち上げ、さらな普及を目指す試みを始動しました。
FORXAIというプラットフォームを立ち上げる際、今回のメインテーマでもある共創によるパーパスブランディングの創造が非常に上手く機能したのです。そこで今回はFORXAIが立ち上げまでにどのような共創活動を行ったのか、事例を交えてご紹介します。
まず考える必要があるのは「強いブランドとはなにか」についてです。私たちは人の心を動かすストーリーが潜んでいることだと考えています。ブランドの中心にWhyを持つことで、存在理由を聞かれた際に誠実に答えられることができます。そしてWhyを起点に、How、Whatを配置することで、共感性とプロダクトが結びつき揺るぎないストーリーを生み出す事ができます。

ブランディングをする上で、そのフェーズによってWhyの立ち位置が変容することも頭に入れておく必要があるでしょう。既存のブランドを強化する、つまりリブランディングであれば、これまでの歴史から企業が持つ「らしさ」やエッセンスを抽出しWhyに落とし込む。対して、全く新しいブランドを立ち上げる際には、サークルの中心点となるように、まずWhyを決めることがブランディング活動の迷走を防ぎます。

そうして出来上がるWhyのストーリーをブランドパーソナリティにのせ、すべてのタッチポイントで一貫した印象を発信できたときパーパスブランディングの役割が果たされることになります。
コニカミノルタには、可燃性ガスを可視化するカメラや暗闇の中の人を捉える技術など、特筆すべき画像IoT領域技術が多くあります。私たちがFORXAIの立ち上げに挑んだのは、様々な領域でビジネスを展開しているため、それら画像IoT領域独自の強みが包括的な事業の1つとして語られ、印象が薄まってしまっていたという課題意識があったからです。私たちが持つ画像IoTを広く社会に提供しプラットフォーマーになるべく、社会への求心力を高めるためにはパーパスブランディングが必要不可欠と考えました。
パーパスブランディングが示すのは、自社とステークホルダーとの間でWhyを中心とし、組織風土やブランド体系、サービスの体験、経営・事業戦略が共感を呼ぶような形で循環し、共創の関係性を築くことであると考えています。

コニカミノルタの画像IoT領域における「パーパス」とはなにか、についてたどり着いたのが「Go Beyond Human Vision(人間の視覚限界を超えていく)」でした。先程の「“みたい”に応える」も継承しつつ、今まで人々が諦めていた見えなかった世界を見せること、それが新しいプラットフォームのパーパスです。
パーパス、つまりWhyが決まったことで、いよいよブランドに落とし込み、社員一人ひとりに浸透するフェーズに入っていきます。ここから立ち向かうのは4つのチャレンジです。
VISIONに込めた想いをブランドに表現する
新ブランドの立ち上げを胸を張って発信する
ブランド適用範囲と運用ルールを明確にする
社員一人ひとりの行動意識に変革をもたらす
ブランドとして表現するには、様々なステークホルダーを巻き込んで対話の中で生まれた想いを抽出する必要があります。そこで、私たちはインタビューや競合他社との比較だけでなくノンデザイナーでもイメージを表象させやすいように「言葉と画像によってコニカミノルタの強みを表現する」ことを試みました。これは非常に効果があり、画像であれば言語化できない曖昧なニュアンスも伝えることができます。例えば、「挑戦するペンギンの群れが崖から海に飛び込むときの先頭の1匹のようになりたい」、そんな会話が盛んにされたのがとても印象的でした。
この活動の後に規定したのは、「Sincere Visionary(誠実な野心を持って夢を実現する人)」というブランドパーソナリティです。その結果、ブランドのコアとして誠実であるけど野心的に育っていきたいという想いが生まれました。

ここで規定したブランドパーソナリティをネーミングやブランドロゴにつなげていくのがネクストアクションになります。ネーミングでは、ブランドパーソナリティを体現できそうな候補を出し、商標調査をしたり、上層部の想いも反映されているか、人にとってわかりやすいかなど様々な角度から検討し、FORXAIに決定しました。FORXAIには、「foresight(先見性)」と「For X AI(AIを社会のために)」の二つの意味が込められています。
私たちは対話を重ねていくことで、このような文章に帰結することができました。

ブランディングを通して、事業領域自体の再解釈が起きたという点も共創による大きな成果です。FORXAIというプラットフォームをブランドと共に築いたことで、FORXAI Imaging AI、FORXAI IoT Platform、FORXAI Sensor Deviceの3つの構成要素へと私たちの強みを再構築することができました。歴史が長い会社では、このような事業領域のジャンル分けが散漫してしまうことが度々起きます。FORXAIの立ち上げによって、自分のプロダクトはどうあるべきなのかを再解釈できたことは大きな意義です。
後半はReDesigner事業責任者の佐宗がモデレートしながら、登壇者の皆さんとインタラクティブセッションを実施しました。

コニカミノルタ 長田さん:やはりキーワードになるのはビジョンだと思います。とはいえ、明確なビジョンを定義してそれを軸にしようとすると凝り固まってしまうので、少し遠いところのビジョンを設置する。これは他社と共創する場合でも、自社の社内風土を創る上でも機能する話です。曖昧なビジョンにすることで、それを紐解いた細かいビジョンが生まれていき、新しい気付きを得られる循環ができるのでないでしょうか。
MIMIGURI 小田さん:自分達が持つ問いを切り替えることが重要だと考えています。例えば椅子を作るとき、座りやすい椅子とは、「働く環境に合う椅子とはなにか」ではなく「そもそも人間が座るとはなにか」を考えてみるということです。この様な問いに一義的答えは存在しませんが、そこにある不確実性や曖昧さを楽しむ姿勢が大切になります。現代は明確なビジョンに向けて着実に進む、「ポジティブケイパビリティ」が重要視されてきました。。しかし、これだけではVUCAと呼ばれる時代に対応できなくなります。不確実性や曖昧さを楽しめる様な、「ネガティブケイパビリティ」を獲得するためにも、まずこれまで関わってこなかった組織、人と共創してみることは有効かもしれませんね。

コニカミノルタ 長田さん:長時間かけて、とにかく様々な方と対話しました。ブランドとして立ち上げるにあたって、本当に今ブランディングが必要なのか、まずは事業を推進するソリューションに注視すべきではないか、という声も耳にしました。なので最初から「ブランディングに注力しよう!」と巻き込むことはできませんでした。そのため、ブランディングをするとしたらどういうメンバーを揃えたいか、ブランドを作ることで何かしたいのか、などを明確にするためにときには上層部へのインタビューも交えて、半年ほどリサーチをしていました。その過程でだんだんと熱が伝わっていったのだと思います。

MIMIGURI小田さん:まずは問いの方向性に偏りがないかを検討する必要があります。例えば、いきなり「どんな未来を作りたいですか?」 という問いに答えやすいと感じる人もいれば、「どんな活動を作っていきたいですか?」と聞いた方が話しやすい人もいます。また、問いと聞くとどうしても難しいことを考えなければと身構えてしまいがちですが、いきなり社会問題の解決策を問うような質問から始めてしまうと、なかなか自分のこれまでの体験と接続できませんよね。まずは素朴な問い、これまでの経験を引き出す問いを設けることで敷居の低い入口をデザインし、段々と本当に問いたかった問いへとスケールを拡張するという「足場かけ」が、問いのデザインでは重要です。
社会の複雑性を表現する言葉としてVUCAが一種のバズワードとなっている現在、これまでのDesign for Peopleというアプローチではイノベーションの兆しは見えてきません。Design with Peopleというアプローチのもとすべてのステークホルダーが同じ視座を持って、共感できるポイントを探り、曖昧さを楽しむことこそが共創の本質であることがわかりました。
ReDesignerは、デザイナー向けのキャリア支援を行っています。 様々な領域の企業と連携し、企業とデザイナーの間で適切なマッチングを行います。今回の登壇企業に興味のある方やキャリア相談をしたいデザイナーの方は、お気軽に以下のリンクからお問い合わせください!
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この記事を書いた人

ReDesigner
ReDesignerは、デザイン会社によるデザイナー向けのキャリア支援サービスです。 企業とデザイナーの間に入り、独自のオンラインアンケートや面談を通じて、 デザイナーの特性やキャリアの指向性を理解した上で適切なマッチングを行います。単純に紹介をするだけでなく、デザイナー特化型の求人票も用意しており、デザイナーが働きやすい環境設計も支援します。
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