ビジネスを推進するUXデザイナーの働き方とは?UX Designers Meetup
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イベントレポート

ビジネスを推進するUXデザイナーの働き方とは?UX Designers Meetup

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UXデザイナーとは、プロダクトの戦略策定を含む上流工程の設計から、ユーザーインタビュー、ペルソナ定義、カスタマージャーニーマップなどを用いて体験をデザインする職種です。チームとして、UIデザイナーやエンジニアと働く機会が多いことも特徴です。 このような職種であるUXデザイナーは一体どのようにしてビジネス創出に関わっているのでしょうか?実践に基づいたナレッジはまだ少ないことが現状です。

そこでデザイナーのキャリアを支援するReDesignerでは、UXデザイナーとしてビジネスの上流工程から関わりキャリアアップしたい人のためにミートアップを開催しました。 登壇者は、DeNA グループマネージャー/UI・UXデザイナーの小原大貴さん、三菱UFJ信託銀行より、経営企画部 FinTech推進室 調査役補の齊藤達哉さんと経営企画部 FinTech推進室 デザイナーの伊藤梨恵さん、そして株式会社グッドパッチ DesignDiv. PM/UXデザイナーの野田克樹。

事業戦略やコンセプトを策定する中で、UXデザイナーはどのようにプロダクトオーナー(PO)に並走しているのか。チーム内コミュニケーションでの工夫、実践して成功したデザイン手法など、実務で活かせるTipsとしてイベントの書き起こしレポートをお届けします!

株式会社グッドパッチ PM/UXデザイナー | 野田克樹「ビジネスを推進するUXデザイナーの仕事とは」

野田は2017年にグッドパッチのプロジェクトマネージャー(以下PM)/UXデザイナーとして入社しました。TBSテレビの新規事業Catariをはじめ、新規事業立ち上げを中心にPM/UXデザイナーとしてリード。三菱UFJ信託銀行さんとのプロジェクトではデザインストラテジストも務めた野田からは、事業戦略・コンセプト策定においてどのような工夫をしているかお話しさせていただきました。

Goodpatchのバリューチェーン

野田: Goodpatchでは企業のデザインパートナーとして、新規事業の立ち上げや既存事業のリニューアルをお手伝いしています。このようなクライアントワークという枠組みにおいて、事業戦略から体験設計をUIデザインに落とし込み、開発やグロースなどもお手伝いすることがGoodpatchの提供しているサービスのバリューチェーンです。 このほかにも長期的な施策でデザイン組織構築支援や、短期的な施策でデザイン思考に基づくワークショップがありますが、メイン「サービスデザイン」という観点では以下の5つのバリューチェーンを狙っています。

  • 事業戦略
  • 体験設計
  • UIデザイン
  • 開発
  • グロース

今回は、こちらの5つのバリューチェーンの中でGoodpatchのUXデザイナーがどのような中間成果物を目指しているかご紹介します。UXデザイナーのデザインプロセスの中には様々な手法がありますが、今回は手法のついてのお話ではなく、「なぜその手法を使うのか」という話をしたいと思います。

事業立ち上げ期のUXデザイナーの役割

「サービス、プロダクトをリリースする」ということを最終成果物としたときに、UXデザイナーである僕が作っているものは全て中間成果物です。直接ユーザーさんの目に触れないものを作る点が特徴的だと考えています。そういった中で、立ち上げ期のUXデザイナーが何をするのかを言語化していきたいと思います。

プロダクトを開発する=事業計画を進めるということなのですが、事業計画という目に見えない概念に可視化された実体を中間成果物として与えることで、その可視化された実体を中心として組織やチームが形成されます。これにより初めて事業が実行可能、および拡大可能になります。このようにUXデザイナーは概念に実体を与えることが主な仕事だと考えています。では、どんなものを可視化していくのかを次にご説明します。

UXデザイナーが持つべき「可視化力」

プロダクト開発において、事業計画やコンセプトはとても抽象度の高いレイヤーの話なので、まずはUXデザイナーが概念を可視化しなければなりません。チームを先導して、形のあるもの、目に見えるものを作っていくわけです。 このように、チームを巻き込み、合意していくための可視化力がUXデザイナーにとって必要な力です。そのために、僕は「言葉ではなく目に見えるもので語る」という部分にこだわっています。

UXデザイナーが可視化するものは他にもあります。例えば、カスタマージャーニーマップサービスブループリントなどは可視化することが目的の一つにあります。一方で、抽象度の高いコンセプトレベルの概念を具体的な体験や要件、仕様に落とし込む分解能力もUXデザイナーは持つ必要があると思います。

要件がどんどん積み上がっていく中で、どれを実装すべきか、しないべきかというのは全部このコンセプトや抽象度の高いものが判断軸になるというイメージです。

順不同なのですが、情報の具体化と概念の可視化を行うことで、最終的にMLP(Minimum Lovable Product)に辿り着くことができます。

■関連記事: ユーザーのハートを掴むMLP(Minimum Lovable Product)を生むには?

これをまとめると、立ち上げ期のUXデザイナーの役割は以下の2つだと考えています。

  • 目に見えないものを見える形にすること
  • 抽象度の高いものを具体化/具現化すること

この2つにより、事業計画という概念に可視化された実体を与え、組織を形成し、実行可能および拡大可能にするのがUXデザイナーの重要な役割だと考えています。

UXデザイナーが作る「コンセプト」について

次に、ビジネスを推進するUXデザイナーとして関わっているコンセプトについてお話しします。僕はプロダクトにおけるコンセプトとは、全てのデザインの原点であると考えています。

つまり、コンセプトが計画段階のものと事業をつなぐ柱であるということです。ときには計画している人たちの熱量や舞台が違うこともあるので、そういう場合の橋渡しもコンセプトが担う役割です。

また、最初のコンセプトは企業から社会へのメッセージであったり、作っている実行者がコンセプトに対して共感することでモチベーションを続かせるものであったりします。そのため、計画と実行を繋げる、企業と社会を繋げる、個人と事業を結びつけるとても重要なものなのです。UXデザイナーが作るものの中でも、コンセプトは何があっても欠かせないものであると思います。

POとコンセプトを作る際に気をつけること

コンセプトを作る中で、僕が特に気をつけているのはこの3つです。

1.ミクロをマクロを行き来すること
ミクロとマクロとは、視座の高さのことを表しています。普段UXデザイナーが見ている視座とは「ユーザーがどのような体験をするか」とというものであることが多いと思います。

一方で、僕らがデザインパートナーとしてプロジェクトを共にするPOは「社会や業界にどのような価値・体験を提供するか」というより高い視座を見ています。 UXデザイナーはユーザーインサイトを探るためのリサーチをしながらも、ユーザーが置かれている社会や業界の動向についてもインプットすることで、より良いコンセプトが作られると考えています。つまり、UXデザイナーはPOが何を考えているのか吸収するための問いを立てたり、エグゼグティブインタビューなどを通して社会にどんな価値を提供していきたいのかという視座を確実に吸収することが必要になるのです。

1ユーザーの視座と社会の視座を掛け合わせて、社会の課題と個人のインサイトを解決するコンセプトを立てることが、コンセプト作りにおいて気を付けていると一つ目のポイントです。

2.言葉に徹底的にこだわること

次に、言葉には徹底的にこだわっています。 先ほどプロダクトにおけるコンセプトとは、事業と個人を紐付ける橋と表現しましたが、クライアントワークでよくある課題が「立ち上げ期に関わったものの、リリース後も同様に関与できるとは限らない」というものです。 立ち上げ期のプロジェクトメンバーが熱量高く向き合ってきたものを引き継いだメンバーが、同じ熱量をキープできるのかという問いは常にあります。言い換えると、計画と実行の間に熱量の壁があると感じる状態のことです。

計画側はユーザーの課題を解決する事に強いモチベーションを感じますが、実行側にとっても同様とは限らないのです。だからこそ、それを解決するためには大義的なコンセプトを作る必要があります。 定性的な部分で人の心を動かすのが重要だと思っていて、計画はある程度定量で行い、定性的なところで心を動かし実行させるといった部分をコンセプトを作る中で意識しています。

■言葉選びのチェックリスト
言葉に徹底的にこだわるための、4つのチェックリストを作ってみました。

プロダクト開発はチームでやるものなので、明瞭で具体的な言葉になっていることが重要です。例えば僕は、「UX」など解釈が分かれやすい言葉はあえて使わず、チームで認識を一致させられるような言葉を使うよう心がけています。 企業のパートナーとして新しい事業の立ち上げをお手伝いする以上、その企業のビジョンにコンセプトが紐づいているかという点も非常に重要です。これを実現するためには、先ほどお話ししたPOの視座とUXデザイナーの視座を行き来することも効いてくると思います。 最後に忘れてはならないのが、その言葉にチームメンバーみんながワクワクするかということです。プロジェクトメンバーでミーティングをしていると、メンバーがユーザーのインサイトを突いたコンセプトが生まれた時に「これだ!」とスタンディングオーベーションするような瞬間があります。そんな瞬間を観察して、「この言葉は熱量が生まれるような言葉選びになっているのか」という観点からもこだわっています。

実際の事例として、TBSテレビさんの新規事業立ち上げプロジェクトで、Goodpatchはコンセプト設計を担当しました。このプロジェクトではユーザー参加型のWebメディアを作るにあたって、テレビ局側には「視聴者との双方向なコミュニケーションができていない」という課題があり、ターゲットユーザーには「メディアは一人で見るより、意見交換しながらみんなで見たい」というニーズがありました。 このように社会とユーザーの双方の課題を抽出した上で生まれたのが「気づけば夢中で盛り上がる、みんなのお茶の間メディア」というコンセプトでした。

TBS新規事業Catariは愛から生まれた。サービスに息を吹き込むまでの軌跡

3.思考家と試行家を両立すること
コンセプト作りにおける最後のポイントです。 僕の好きなカルロスゴーンさんの言葉に"実行こそが全て。これが私の持論である。アイディアは課題克服の5パーセントにすぎない。アイディアの良し悪しは、どのように実行するかによって決まると言っても過言ではない"というものがあります。

UXデザイナーはユーザーの目に触れる部分の成果物が少ないからこそ、コンセプトを作ったら必ずプロダクトに落とし込むことが責任の一つです。つまり、コンセプトを社会に表現するまでがUXデザイナーの責務です。これは経営コンサルタントとUXデザイナーの明確な差だと考えています。

プロダクトに社会との接点を持たせるために、コンセプトを策定し、プロトタイプやMLPという形に落とし込むことが、デザイナーが上流から関わる意義の一つだと言えるでしょう。

MLPの条件の一つには「サービスのコンセプトを忠実に再現したプロダクトになっているか?」があると思っています。コンセプトを思考家として組み立てながら、プロダクトが社会と対話できるところまで持っていく試行家としても動くことが大切だと思います。

コンセプトとは立ち上げ期で作るだけではなく、その後守っていくものでもあります。日々ミーティングで「このアイデアはコンセプトを達成できるのか?」「ビジョンを達成できるのか?」といった問いを投げかけるのも、UXデザイナーとしての役割です。

2018年に発表された「デザイン経営」宣言を例に挙げると、コンセプトもプロダクトを社会に出すための一つの手段なのではないかと思います。MLPという概念はGoodpatchメンバーも研究中で、情報発信もしているのでよろしければGoodpatch Blogをご覧ください。ありがとうございました。

三菱UFJ信託銀行|経営企画部 FinTech推進室 齊藤達哉氏・伊藤梨恵氏「イノベーターとして事業立ち上げに携わるUXデザイナーの働き方」

創業92年で初のデザイナーを迎え入れ、デザイン組織立ち上げに挑戦する三菱UFJ信託銀行。同社経営企画部 FinTech推進室では新規事業の立ち上げから社内風土の改革など、多岐に渡る企画が展開されています。16件以上の新規事業立ち上げプロジェクトをまとめる齊藤さんと、同社1人目のデザイナー伊藤さんから、三菱UFJ信託銀行の事業立ち上げにデザイナーがどのように関わっているのかお話しいただきました。

三菱UFJ信託銀行 FinTech推進室のミッション

齊藤さん: 三菱UFJ信託銀行としてのミッションとして「社会やお客様の課題を解決する」を掲げています。これに加えて、我々 経営企画部 FinTech推進室のミッションとして「Wow!」という「こんなやり方があったのか!」と驚くようなアイデアを追求しながら新規事業を作っています。

具体的にはこんな領域での構想があります。新しいデータ流通を提供する情報銀行や、ペット領域でのエコシステムの開発、日本の食料問題解決といった部分での事業立ち上げなどもやっています。「Fintech推進室」という名前とはかけ離れているように見られるかと思いますが(笑)、様々な領域で新規事業を立ち上げようとしています。

プロジェクト体制、イノベーターとしてのメンバースキル

齊藤さん: 続いて、今回のテーマでもある「UXデザイナーがPOにどのように伴走するのか」という点についてお伝えします。我々のチームでは、POとUXデザイナーを明確に分けていないため、チームメンバー全員がPOとして動くことが前提になります。デザイナー自らが企画し、実行し、ローンチまでを担当するので、伴走ではなく、自分たちの裁量でプロジェクトを進めていく部署というイメージです。その中で我々だけではリソースも限られてくるので、パートナー企業さんと連携して開発を進めています。

また、信託の事業にはかなり専門的な知見が必要なので、信託銀行の中にある既存の事業部とも連携を取りながら、我々でなければ作れないもの=Wow!に繋がるものを作っていくこともあります。 つまり、FinTech推進室はデザイン・ビジネス・開発全てを総動員した体制になっています。もちろんメンバー毎の専門領域は異なるので、そこでチームの出番です。チームメンバーそれぞれ、隣の領域に越境しながらバランスを取って新規事業の開発をしています。

デザイン・ビジネス・開発スキルの重なる部分がプロジェクトリーダーになるので、プロジェクトリーダーには少なくとも全ての領域において言語が理解できることが求められます。そうでなければ、パートナーさんとコミュニケーションを取って前に進めることができないのです。FinTech推進室のメンバーは、一つの領域にかなり濃く特化しながら、それ以外の領域にも広く視野を持ち、三つのスキルを備えているようなイメージです。

プロジェクトリーダーのKey Success Factor

プロジェクトリーダーに求められるKey Success Factor(重要な成功要因)は三つあると私は考えています。

  • Network 我々はチームメンバーを「デザイナー」などの定義で括るのではなく、全員がイノベーターという風に定義をしています。その上で、プロジェクトリーダーにはネットワークする力も必要だと思います。やはり、新しいものはかけ算で生まれるので、デザインだけではなくビジネス、開発など越境してスキルをかけ算できることができる人は強いです。なので実際我々も、あまり会社の色を意識せずに同じチームとしてプロジェクトを進めています。

  • Execution 自分たちで手を動かして前に進めることをやっていかなければ、机上の空論で終わるので圧倒的実行力も非常に重要だと思っています。

  • Knowledge これは先ほどご紹介したデザイン・ビジネス・開発すべての領域で、言語が理解できるという意味です。他の領域へ翻訳して伝えることで、前述のNetworkやExecutionに影響をもたらしてくれると思います。

1人目のデザイナーが語るFinTech推進室での役割

伊藤さん: 三菱UFJ信託銀行 デザイナーの伊藤です。ここからは齊藤よりバトンタッチして、より具体的なデザイナーの動き方をご紹介していきます。私はもともとUIデザイナーとして事業会社で働いていて、2018年10月に三菱UFJ信託銀行へ入社しました。UXデザインまで領域が広がったのは、ここ1年半のことです。詳しい経緯はインタビューにまとめられているので、ぜひご覧いただければと思います。

■「イノベーターを目指して働く」三菱UFJ信託銀行 1人目の越境デザイナー 伊藤 梨恵さんの挑戦

UXの5段階モデルで解釈するデザイナーの担当領域

伊藤さん: UXの5段階モデルと言われる、プロダクトの提供する体験を段階的な要素で表した概念があります。 私がUIデザイナーとして働いていた頃は、5段階モデルで示される「構造」や「要件」の部分を中心に作っていました。そして、表層はもともと得意分野でした。
現在、三菱UFJ信託銀行では、経営企画部という部署に所属しています。ここは戦略部分をまず考える部署なので「どうやったらこのプロジェクトが上手くいくのか」という部分はもちろんのこと、会社としてやる意義を考えながらユーザー体験を作っていく経験を初めてしているので、デザイナーとしてとてもやりがいがあります。私は先ほどの三つのスキルで言うと、デザインと開発の領域はカバーできているものの、ビジネス視点で見るという部分は勉強中というのが正直なところです。

現在、実際にいくつものプロジェクトが走っていますが、デザイナーがまだ私一人なので、どのように関わるのかという部分は難しいところです。進め方としてはPoC(Proof of Concept)という方法を取っています。

伊藤さん: PoCとは検証をまず行い、検証がうまくいきビジネス化できると分かった時点で本番開発に移り、そして最後にリリースして運用するという方法です。我々は新規事業開発をこの方法で進めています。

では、PoC(検証)→本開発→運用のフェーズにおいて、我々がどのように関わっているのか。まず、検証段階からパートナー企業さんと協力して事業を進めていきます。デザイナーはユーザーインタビューなどの形で、最初の検証段階からプロジェクトに入っていきます。

本開発段階に入ると、FinTech推進室から事業部に徐々にバトンタッチしていきます。その事業を運用していくためのノウハウなどを含め、渡していくイメージです。その後、運用段階では事業部に完全に引き継がれていきます。

銀行という組織で新しいサービスを運用するのはなかなか難しいのですが、運用段階では事業部が主体となってもらい、我々は伴走していく形を取っていこうと考えています。

チームビルディングにおける工夫

齊藤さん: デザイナーが戦略段階から複数の事業にコミットするという点や、ビジネス・開発・デザインすべての領域のプロが一つのプロジェクトに関わる点から、FinTech推進室はダイバーシティのあるチームになっています。自分の領域に閉じず、どんどん越境していくことが求められるような環境で、我々がチームビルディングにおいてどんな工夫をしたのかご紹介します。

伊藤さん: 私が所属する経営企画部のメンバーは執務スペースのフリーアドレスエリアに座っています。フリーアドレスでは、業務で直接的には関与していないメンバーの話も聞くことができる、気軽に相談ができるというメリットがありますが、アプリ開発を伴う今の案件では、開発メンバーも含め案件に関わるメンバーができるだけ集まっていることのほうがスムーズだなと感じました。

そこで、現在はプロジェクトルームを作っています。この改善によって、開発を担当するパートナー企業さんともコミュニケーションが取りやすく、かつワンチームとして情報を共有することが可能になりました。現在は2つ目のプロジェクトルームも出来上がりはじめています。

齊藤さん: 我々のチームではスクラムのような開発手法を取り入れており、週の頭にミーティングを全員で行い、週の終盤で振り返りをしています。さらに1ヶ月ごとに先月のよかったこと悪かったこと、今月のアクションをディスカッションして、付箋で掲示しています。

他にも、現在はメンバーを拡大中なので、伊藤が全員の似顔絵を描き、自己紹介をつけた付箋をドアの裏に貼り出し、みんなが見られるようにしていたり、コミュニケーションがなかなか取れない問題を解消するために、私とメンバーで定期的に1on1の時間を取ったりしています。

伊藤さん: この1on1はなかなか効果的です。1回につき15分程度ですが、デザイナーとしての悩みも話しつつ、「権限を欲しいです」とか急に言い出すこともあります(笑)。

デザイナーがイノベーターとして働く魅力

伊藤さん: 前職までにデザイナーとして働いてきた感覚では、ものを作ったあとステークホルダーに確認することが多かったので、「そこの基準も決めていいよ」と言われることが衝撃でした。今でもレビューはもちろんあるのですが、仕様などの部分はチームで合意形成したものをそのまま経営層に話せる場になっているという部分がかなり新鮮です。今までとは少し違った働き方ができているのではないかと思います。

齊藤さん: FinTech推進室のメンバーには、デザイナーという定義よりも、イノベーターとして新規事業を生み出す人という定義がしっくり来ると思います。だからこそデザインスキル以外も当たり前のように鍛えることが求められますが、これも新しいデザイナーの働き方なのではないかと思いご紹介させていただきました。ありがとうございました。

株式会社ディー・エヌ・エー|グループマネージャー/UI・UXデザイナー小原大貴氏「エクスペリエンスデザインのレシピ 」

全社的にデザイン経営に注力し、様々な領域での事業を展開する株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)。グループマネージャー/UI・UXデザイナーとして働く小原さんは、オートモーティブ事業のプロダクト「MOV」や「Easy Ride」、ヘルスケア事業の新規プロダクトにおいてUX設計やプロダクト戦略の策定に携わっています。そんな小原さんが、どのようにUXデザイナーとしてプロジェクトに関わっているのかお話しいただきました。

なぜDeNAでエクスペリエンスデザインなのか

小原さん: DeNAの小原と申します。本日は、まず「なぜDeNAがエクスペリエンスデザインに取り組むのか」という背景からお話ししていきます。DeNAには、スローガンでもある“Delight&Impact”なプロダクトを世の中にお届けしたいという想いがあります。そのためには、より良いものづくりをしていく必要があります。2018年末に開催されたUI Crunchで、代表取締役会長の南場がこのように申し上げました。

「DeNAがなぜデザイン経営を始めたのかよく聞かれます。私は事業の成否を決めるのは戦略ではなくデザインやユーザーエクスペリエンスだと訴えています」 「質的な議論を大切にすると言うのは簡単だけど、いつまでたっても経営会議の議論は数量的なまま。このままではダメだなと」

引用:「デザイン経営」の未来|南場智子、宗像直子、増田真也、田川欣哉、土屋尚史 トークセッション

つまり、事業の成否を決めるのは戦略ではなくデザインやユーザーエクスペリエンスだと私たちは考えています。

2018年4月に執行役員に就任したデザイン本部長の増田も、ユーザーさんを深く見つめ続けるところにキーがある、と申しております。このように、エクスペリエンスデザインを重視するにあたって経営陣の圧倒的理解を得ているというところが私の理解です。

関連記事:DeNA全社で取り組むUXデザイン強化、 次なる10年に向けた「デザイン経営」戦略

しかし、DeNAもかつてはゴリゴリの左脳組織でした。そこには反省もあり、現在は左脳部分だけでは大ヒットは生み出せないという認識になっています。現在、社内では右脳の力の必要性が叫ばれています。具体的な右脳の力を、私はこのように考えています。

こうした右脳の力はデザイナーなど、具体的な表現を行う人間が得意なことです。そこで我々は左脳と右脳のリバランスを行って、より良いものづくりをしていきたいと思っています。

良いものづくりに必要な3つのエッセンス

小原さん:
「良いものづくりとは何か」とはプロダクトマネジメントだと考えています。プロダクトマネジメントの範囲とは、以下の3つにまとめることができます。

この3つを推進していく人間をプロダクトマネージャーとDeNAでは呼んでいます。プロダクトマネージャーは各領域のプロフェッショナルをまとめ、ものづくりのプロセスを構築して中心に立っていく立ち位置にいます。特に開発の初期段階でプロダクトの価値を明確にするという部分では、僕たちエクスペリエンスデザイナーと協力して業務を行っています。

プロダクトの価値を明確にする

小原さん:
では、プロダクトの価値を明確にするとはどのようなことでしょうか。それを考えるにあたり、そもそもの「プロダクト」の捉え方を紹介します。

プロダクトはエクスペリエンスデザインのレンズを使って見てみると、物語でできていると考えています。さらに物語を分類すると「ストーリー」「ナラティブ」の二つがあると考えています。

それぞれの役割を例えると、宇宙に一つプロダクトという星があるとします。星の中にさまざまなストーリーがあり、その周辺にナラティブがあるというのが僕の認識です。

この上でプロダクトをよりよくするためのポイントは、

  1. いい角度から描いた、解像度の高いストーリー
  2. いい角度から見た、解像度の高いナラティブ

この二つだと思っています。極端な言い方にはなりますが、誰でも分かる状態までストーリーを具体化させるところがエクスペリエンスデザイナーのゴールだと考えています。

MOVのデザインプロセスにおけるデザイナーとPMの仕事

実例として、DeNAが提供する「MOV」でプロダクトマネージャーとやってきたことを簡単にご紹介させてください。

この4つの順番はあまり重要ではありませんが、上から解説していきます。

プロダクト戦略の可視化

プロダクト戦略の可視化は、時間軸と登場人物のある下書きと考えています。PMとエクスペリエンスデザイナーが以下のような点を1on1で壁打ちします。

  • プロダクトで実現したいこと、解決したいことはなんなのか
  • ステークホルダーはだれなのか
  • それぞれに何を提供するのか
  • 年度ごとにどうなっていたいか
  • それを実現するために重要になるポイントはなにか

アウトプットとしては短い年表みたいなものが出来上がりました。

2.価値仮説の可視化

価値仮説の可視化にはいくつか方向があるかと思いますが、MOVの場合は以下のように手分けをしました。

ユーザーの状況×仕様という感じで、10個くらいストーリーボードを作りました。ちなみに、Airbnbは約40パターンくらい作っていたとどこかの本に書いてありました(笑)。 この時作ったストーリーボードはまだ出していない規模なので、今日はその代わりのサンプルとしてのイメージを紹介します。

これはMOVのものではないですが、先日、小学生にサービスデザインを教える機会があってその時に僕が考えた企画です。

これくらいの解像度で10個くらいの機能を経営会議や事業メンバーに見せたところ、この解像度で具体化されることで実際にユーザーさんにどのように使ってもらえるかのイメージが湧きますし、それによってエモーションが伝わるのでチームがまとまり経営陣の理解も得られるという結果になりました。

3.ジョブの探索

ジョブ理論とは簡単にいうと、ユーザーはどんな製品が欲しいのかではなくて、何を片付けたいのかを考えるものです。

ドリルを買うユーザーはドリル(プロダクト)が欲しいのではなく、穴(ジョブ)が空けたかったと考える方法ですね。僕らはペインやニーズの前に、ジョブがあるのではないかと考えています。ユーザーが片付けたいジョブを考えることで、それを解決できるプロダクトを開発することができます。

例えば「早起きしたい」というジョブからは、以下のような観点でのジョブを考えることができます。

ジョブ理論は、競合を考える場合にも色々なアイデアが広がります。社会的なジョブで言うと、ちゃんとした人に見られたいから、「スーツを着る」ことも競合になり得ます。通常の発想では「早起き」の競合が「スーツを着る」になるとは思いつきませんよね。ユーザーのジョブを探索することで、アイデアに幅を持たせることができます。

そして、このジョブを明らかにするためにユーザーインタビューと観察を行います。そのプロダクトをなんのために選んだのか、どのように使ったのかなど、社内や実際のユーザーさんに聞いたりしています。 観察に関しては、ユーザーさんからエピソードを聞いた時に面白いなと思ったら実際にやっている現場を見に行きます。例えば、実際予約している時にどういうふうな行動をとっているのかを見ることで、その人が無意識に行なっていることを理解することを目的にしています。この作業のアウトプットとしては、そのユーザーにとってのジョブがどのようにカテゴライズされているのか示す「ジョブツリー」があります。

4.機能・施策化

機能・施策化において重要なのは、僕らが書いたストーリーとナラティブが噛み合うかどうか?という部分です。この噛み合わせ具合を検証するために、MVPを作ります。MVPは必ずしもUIとは限らず、例えば魅力を感じるかを検証するだけであれば、LPでも良いですし、ビデオコンテなども良いと思います。

自動運転のプロジェクトを担当していた時は、実際に使う車と同じ車種のタクシーがあったので、そのタクシーを貸し切ってモニターを設置し、ユーザーさんにUIを触ってもらったりしました。このように、価値が測れるのであればどのような方法でも良いと思います。噛み合わせたい物語が見れるかどうかを見ることが重要であるということです。

MOVで壁打ちしたプロダクトは来年度には提供できると思いますので、またどこかでご紹介できればと思います。ありがとうございました。

Q&A

Q1.非デザイナーにUXデザイン視点を上流から入れる重要性を理解してもらうためにはどんなことをしましたか?

DeNA 小原さん:
なるべく解像度をあげて理解するハードルを下げる、誰でもわかる状態になるまでアウトプットを持っていくという部分がすごく重要かと思います。見る角度というのはかなりセンスがいる部分なので難しいのですが、そういった部分でも意欲的にやっていくべきかなと思いっています。

Goodpatch 野田: 一番するのは可視化ですね。クライアントワークあるあるだと思うんですが、可視化をすることによって、POの方が見えてなかった視点や、PO自身がが気づいていなかった部分などを僕らが提供できることがあります。POの方の脳が確実に入れ替わる瞬間みたいなのをクライアントワークでよく感じますし、可視化をすることでPOの方の頭を使うみたいな感覚でよく仕事します。つまり、可視化をすることで解像度をあげるということです。

三菱UFJ信託銀行 伊藤さん:
弊社は実際に試行した成果物などがまだ少ない状態であるので、UXデザインがまず浸透していません。なので「UXデザイン」ってなに?という方に、まずは体験してもらうところに注力しています。今まで外に営業に出ていたような方とワークショップ形式で、実際に我々がどういう取り組みをしているのを見てもらったりしていますね。

三菱UFJ信託銀行 齊藤さん:
経営層に関してはGoodpatchさんのご協力の元、ワークショップなどを普及施策としてやっています。その時に、工夫している点としては単純にワークショップをやるだけではなく、必ず、開発・営業・事務・企画の人間が1チームになるようにしています。 デザイン視点というのは我々の解釈でいうと常にお客さん起点で考えるというものです。言葉で言うのは簡単ですが、職種が別れてしまうと実践できないというのが銀行のほとんどのところだと思います。 それを一人のお客様に向かってプロダクトを作る体験を一日でしてもらうことで、今までとこんなに違った体験が作れるんだという気づきを持ち帰ってもらっています。経営に対してという意味では、実際にお金の流れなどを含めて見ていただき、実際に効果がありそうなことを体験してもらっています。

Q2.UXデザイナーの後輩育成をどうやっていますか?

小原さん:
DeNA全体で言うと、新卒などの若手メンバーは、POと一緒に壁打ちワークする機会を作ったり、意図的に育てていこうと思っています。エクスペリエンス戦略室では、新卒はもちろん、いい人がいたら来て欲しいなと思いますが、どちらかといえば、ある程度スキルとして熟した人がさらに上を目指すためのキャリアパスという感じに近いです。

野田 : Goodpatchには2017年から毎年、新卒が10人ほど入社しています。知識のインプットはもちろんなのですが、実践の方が大きいと思うので、実際のUXデザインのプロセスを実践するという研修を最初にしていますね。 あとは、失敗させるという点がうちは大きいです。育成のためには失敗する環境を提供するのが機会提供として必要です。とはいえ、クライアントさんの前で失敗はさせられません。そこで、ジュニアの人は必ずしばらくシニアの人について実践します。若手のUXデザイナーが一人でプロジェクトを回せるようになった状態をGoodpatchでは「独り立ち」と言いますが、独り立ちをさせるために、いかに失敗できる経験を提供するかという部分を考えています。一言でいうと実践と失敗です。

伊藤さん : 三菱UFJ信託銀行ではデザイナーは私一人しかいないので、少し難しい質問です(笑)。今一緒にプロジェクトを進めているチームメイトは、もともとデザイナーではなく銀行員なので、まずはペルソナを一緒に作ったりしています。 今までデザインに触れてなかった人たちが、一緒にデザインプロセスを体験しながらUXデザイナーの卵になっていくという形になっているので「実践あるのみ」が弊社の現場だと思います。

斎藤さん: ビジネス色が強くデザイナー経験が少ない人に、より多くデザイン系の業務を当てていますね。具体的に言うと、1日で2つのプロジェクトのスプリントに入ったり、経験するための場数はかなり多くあります。

伊藤さん : ちなみに来週は毎日デザインスプリント形式のワークショップがあります(笑)。

会場からのご質問: 今お話を聞いていて、デザインスプリントなどを三菱UFJ信託銀行さんの現場層で理解してもらえているのか?という疑問があったのでお聞かせいただけますか。

齊藤さん: 現場層には理解されています。やはり、銀行員が論理だけで考えて出てくるプロダクトは、どうしても似通ったものになってしまうんです。その中で「一人のお客さまにどんな価値を提供したいか」といった別の観点から生まれたプロダクトは、従来の銀行のプロダクトとは異なる部分がかなりあると思います。新規事業企画の立場としては、お客さまの視点を取り入れたデザインプロセスによって生み出されたプロダクトに、より可能性を感じるという点で、現場にも支持されているのだと思います。

Q3. UXデザイナーのキャリアパスについてどう進んでいくべきなのか?スキルやキャリアプランはどのように考えていますか?

小原さん : 僕はいつも自分のキャリアというよりは「こういうのが作りたい」「こういう人たちを喜ばせたいな」と考えることが多いです。それに必要なのであればUIでも、Webでも、紙でも、おもちゃでも、なんでもやろうと考えています。作るにしても「何を作るのか」「どういうものを作るか」という根本の部分が欠けていると、どうしてもみんな作ることに集中しちゃいがちなので、今はそこがむずしいかなと思っています。

野田 : 僕はいつか経営者になるというゴールが明確にあって、そのためにお客さん視点のUXデザインをやっています。そのように、現在UXデザイナーと名乗っている人達は最終的にデザインのマインドセットを備えた何かしらの専門職になると思っています。そして、いずれ「UXデザイナー」だけを名乗る人はいなくなるような未来を予想しています。例えば、「デザインマインドを持った経営者」や「体験設計ができるUIデザイナー」のような感じです。概念を設計するのがUXデザイナーなので、何かしらの専門職になっていくのが未来としてあるのかなと思っています。

伊藤さん : 私はもともとUIデザイナーだったのですが、もっと手を広げたいと思いUXデザインに手を広げました。UXデザインには色々なフレームワークがあるのですが、そこを紐解いていくと経営などに繋がっていくものはあると思います。UXデザイナーとしてファシリテーションや手法ひとつひとつを極めたい気持ちもあるのですが、まず自分の視座が高くなったことをUXデザイナーになってから強く感じています。

最後に

ビジネスを作り出す現場において、UXデザイナーはどのようにPOやチームメンバーとコラボレーションしているのかご紹介しました。プロダクト開発の捉え方から、デザインプロセスでのこだわりまで、3社それぞれの思想をインプットしていただけたのではないでしょうか。

デザイナーが持つ知見や悩み、解決策を共有し合える場はまだ多くありません。全てのデザイナーのキャリアを支援するReDesignerは、今後もイベントを通して、具体的なアクションが見つかったり、キャリアパスを描く上でのヒントを得られる機会づくりを続けていきます。イベントや新着レポートの情報は公式TwitterConnpassページをチェックしてみてください!

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