SBI証券にデザインを広めたい。UXデザイン室長のこれまでの道のり
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インタビュー

SBI証券にデザインを広めたい。UXデザイン室長のこれまでの道のり

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今回お話を伺ったのは、株式会社SBI証券 UXデザイン室長の阿部佳明さんです。現在はSBI証券でUXデザインを浸透させることを目指して、デザイン組織構築などに取り組まれています。

「学生時代は絵を描くことが好きだった」と語る阿部さんが、デザイナーとしてキャリアをスタートさせるまで、UXデザインや金融業界に入ったきっかけ、そしてUXデザイン室長として目指す理想のチームの形を伺いました。

アーティストではなくデザイナーになりたい

── 阿部さんが初めてデザインと出会ったのはいつ頃ですか。

小学校低学年の頃、お絵かき教室に通っていました。絵を描いて褒められる体験があったからか、絵を描くのが好きでした。ずっと絵を描いて週末を過ごしていて「これが仕事になったらいいな」と思っていました。 しかし大学では政治経済学部に進学。通いながらも「あれ?これで本当に良いんだっけ?」という気持ちになってしまったんです。それで大学を休学して、イギリスで留学という名の放浪をしていました。そのときのホームステイ先のお父さんが美術大学の先生で。絵を書けば言葉が通じなくても思いが通じることが嬉しくて、留学中もまたずっと絵を描いていました。

絵だけで食べていけるのは一握りと分かっていたので「アーティストではなくデザイナーになりたい。デザインを学ぼう」と思い、帰国後、大学に通いながら半年ほどWebや3DCGを学びました。新しく学ぶことはとにかく新鮮で楽しくて。そこから徐々にWebのデザインにも足を踏み入れていきましたね。

新卒で映像やWebを手がける制作会社に入社し、実務をとことん叩き込んでもらいました。当時は今と違い、長時間働くのがかっこいい時代でしたね。
制作会社でいろんなタイプの案件を経験する中で「次は一つの事業にコミットして長く関わりたい」という想いが次第に芽生え、車検に関するBtoBシステムを扱っている会社に転職しました。

2社目はWebディレクターとして入社したのですが、画面のデザインをしながら営業、コールセンターなども兼務で。この頃、自社商品のシステムの使い方を、お客さまである整備工場で働く方に説明するため、3ヶ月間かけて全国を車で回ったことがあります。そこで初めて、自分が作ったものを目の前で使ってもらう経験をしたのですが、多くの方に想定通りに使ってもらえていませんでした。
初めは「使い方を説明して販売する」ということだけを考えていたのですが、使いづらそうなお客さまを目にすると、「このままの画面ではダメだ」と気づかされました。
今振り返るとこの経験によって、ユーザー視点でものづくりをするスタイルが自分の中にできたのだと思います。 そのシステムは「どう使いづらいのか」「どこでつまずくのか」というフィードバックを開発チームに共有して、改善することができました。とても貴重な経験ができましたが、気づくと入社から7年が経っていました。

フリーランスになり、ビジョンを具現化する難しさを知った

── デザイナーとしての原体験を経て、次にフリーランスという道を選択されたのは何故ですか。

当初の目標の「一つの事業に長くコミットすること」をやりきったと思えたこと、また自分や人の内側にある想いを形にしたいという気持ちが大きくなり、イラストを中心にフリーランスとして活動し始めました。

この頃に出会った、ある出版社の編集長にとてもよくしていただいて、いろいろなイラストを描く機会がありました。
そういう時、どうしても自分の「色」を入れたくなるのですが、そうすると必ずダメ出しが飛んで来るんです。有名なイラストレーターであれば個性は長所になりますが、新人は求められていることをやりきるのが最優先。 今では理解できることですが、自分を表現したくて始めたはずの仕事で個性を封じられてしまうのは辛かったです。

実は、この頃に絵本を1冊だけ出版しているんです。
このことだけを伝えると「すごい」と言われることもあるのですが、納期に追われて満足のいくものを描きあげることができなかった。読者に申し訳ない、苦い思い出です。
その時はいつの間にか「絵本を出す」ことが目的になってしまい、自分が本当に伝えたいことが何かを考えきれなかった。与えられた環境の中で「表現」をやりきることの難しさをこの時は痛感しました。

自分の小さな夢の一つに、今度こそ自分の想いを絵本にのせて届けてみたいというのがあります。
最近はiPad Proでイラストも描いていて、メンバーとの1on1もすべてこれで記録しているんですよ。会議を可視化したくて、グラフィックレコーディングの練習も始めました。

未知の金融業界でぶつかった自分の限界、UXデザインとの出会い

── イラストレーターや絵本作家の世界から、どのように金融業界へたどり着いたのですか。

フリーランスの時、少しだけFXに挑戦したことがありました。「こうしたらもっと伝わるのに」「もっとここにメッセージを出せば、違和感がなくなるのに」と考えてしまうサイトがとても多くて、ユーザー目線で作られたものが少ないと感じたのです。
その中でも、初心者にも分かりやすく「まじめさ」を打ち出していた会社の求人広告を見かけて、そのスタンスに惹かれて応募しました。
トントン拍子で入社することが決まり、6年間、取引ツールやアプリケーションなどデザインに携わらせてもらいました。金融業界には漠然と堅いイメージを持っていましたが、ワンフロアに全部署が集まっていて風通しがいい環境でしたね。

ただ社内環境は良かったのですが、自分のデザインに途中で限界を感じ出したんです。「もっと分かりやすく、使いやすくなるように」と考えて作ったはずが、社内で「なぜこのデザインなのか」と聞かれるとうまく言葉にできない。
デザインはデザイナーだけのものではない。経営層にも理解してもらい、その上でユーザーに提供していきたいのに、価値を説明できないという壁にぶつかりました。
それからは「もっと発言力のある、伝えられるデザイナーにならないといけない」と思い、勉強の領域を広げていきました。

そんな中、山本 郁也さんのUXデザインに関するセミナーに参加して衝撃を受けたんです。ビジュアルデザインに落とすまでのペルソナ設定や、ユーザーテストなどの具体的なプロセスを中心にした内容のセミナーで。
「この世界はすごい!こんな風にデザインをロジカルに説明できる方法があるんだ」と、まさに目から鱗でした。UXデザイン視点を持つことは、今後の自分の武器になると強く感じたのです。

── 当時UXデザインについてのインプットはどのように行なっていたのですか。

UXデザインについて学ぼうと思っても、今ほど言葉も浸透しておらず、書籍も出版されていない時代だったので、主にセミナーに足を運んでいました。
他の参加者の方と会話する中で「みなさん自分と同じ課題を抱えてるんだな」と思いながら、UXを理解しようと必死に勉強しましたね。
コンセントの長谷川 敦士さんのセミナーに参加した時、「すごすぎる」と圧倒されたのを今でも覚えています。

── そんな中、現在のSBI証券に入社された、と。
ちょうどUXデザインの知識をつけ始めたタイミングで、縁あってSBI証券に入社しました。2015年ですね。自分でもUXデザインという新しい武器を使ってチャレンジしてみたい、そんな思いでの決断でした。

入社してからの2年間は、UIデザイナーとして業務を行なう傍ら、UXデザインの必要性について、社内で啓蒙活動を行なっていました。
デザイナーが自分ひとり、会社規模も大きい。何から手をつければいいのかと、途方に暮れていた時、コンセントの長谷川さんから「一人から始めるユーザーエクスペリエンス」という書籍をいただいて、ひたすらに読み込んでいましたね。

現在、SBI証券のUXデザイン室はWeWorkに執務スペースを構えている

入社して最初の頃は、UXデザインの専門用語を使いすぎて他の社員に説明して伝わらなかったり、デザイン関連の業務をとにかく受けて手が回らなくなったり。
小さなことを積み重ねているはずが、ほとんどが失敗に終わってしまって、積み上がっていく実感が全然ありませんでした。

関連記事: 当時の阿部さんの取り組みをお話しいただいたイベントレポート

会社に貢献できていないと悩み続けていた2017年、SBIグループを通じてGoodpatchさんとのつながりができ、そこからはあっという間に状況が変わっていきました。

自分1人だったところにGoodpatchさんのUXデザイナー・UIデザイナーが3名加わり、初めて小さなデザインチームができました。大きなMacのディスプレイやホワイトボードと付箋など、それまでの社内にはないものが増えていく。デザインの現場では当たり前に使われていますが、SBI証券の社内に置かれるのはとても新鮮でした。
執務スペースの真ん中にデザインチームが誕生したことで、少しずつ新しい空気が流れだしました。

最初はチームで議論している様子を見ていた他部署の方々も、ユーザーテストなど小さな取り組みから少しずつ巻き込んでいって。 何をやっているのか、どういう成果を出すのか。徐々にですが、自分たちの立ち位置を明確にすることができ始めました。

関連記事: 「未経験でも熱量ある人と走りたい」 SBI証券×Goodpatchのデザイン組織構築の道のり

目指す「理想のチーム」と、これからのUXデザイン室

── 2018年2月にUXデザイン室が設立されましたが、どんなきっかけだったのですか。

元々はマーケティング部の体制を変える動きがあり、業務を整理するタイミングで「今のチームを室にしたい」と提案させていただきました。
UXデザイン室というラベルがついたことで社内での認知も上がり、当初は「ここはどんなことをやってくれるの?」と不思議そうに声をかけられることも多かったです。相手が社内でもユーザーさんでも、やはり興味を持って反応してくれるのは嬉しいですよね。

阿部さんが描いた理想のチーム

UXデザイン室はSBI証券の中でも異質な、デザイナーの集まりです。また、ひとつの小さな部署であると同時に、メンバーの連携意識も強い「チーム」です。3人から始まったチームも、現在は10人以上に成長しました。

個々の違った視点で、お互いの考えが違っていても「そういう考え方もあるよね」と認め合い、新鮮な気づきを与え合える。そんな仲間を増やして行きたいです。自分自身が金融業界に未経験で飛び込んだのもありますが、一緒に働く方はユーザー目線を忘れずにより分かりやすくサービスを提供していく、そんな想いを持っている人がいいですね。

── UXデザイン室のこれからについてはいかがでしょうか?

現在はUXデザイン室ができて1年半が経ち、最近ではリリース前の品質チェックにUXデザイン室のレビューが必ず入ることになりました。SBI証券のブランド体験を統一するために必要不可欠な役割ですし、とても大きな変化だと思います。
少しずつUXデザイン室の存在価値が認められつつあると同時に、責任の大きさも改めて感じています。

「安心できるデザイン」で、商品やサービスを生み出している他部署の想いと、お客さまを、最良の形でつなげていきたい。

お金との付き合い方が変化しつつあるこの時代だからこそ、「お金のバリアフリー」を実現するために、SBI証券の体験をアップデートしていきたいですね。

(撮影場所:WeWork城山トラストタワー)

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