チーム一体となってUXを作り上げるラクスル  岩波さんの挑戦
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インタビュー

チーム一体となってUXを作り上げるラクスル 岩波さんの挑戦

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岩波さんはラクスル株式会社の新規事業テレビCMサービスを展開する広告事業部でご活躍されています。「テレビCMの民主化」をビジョンとして掲げるチームでは、どのようにUXを作っているのでしょうか。また、インテリアデザインや音楽というバックグラウンドから、どのようにBtoBサービスのインハウスデザイナーというキャリアにたどり着いたのかまでを伺いました。

椅子マニアからミュージシャン、そしてデザイナーへ

── デザイナーを志したきっかけについて教えてください。

現在、事業が0→1フェーズなので、私はユーザーインタビューやプロトタイピングなどUXデザインを主として活動しています。とはいえ、UIUX領域のデザイン、コミュニケーション領域のデザインの両方を見るデジタルプロダクトデザイナーという立場です。

その元をたどっていくと、そもそもは高校生の頃、ミッドセンチュリーの家具にあこがれたのがデザイナーになったきっかけです。流行に乗ってイームズ展に行ったところ、椅子のデザイナーというのが使い心地まで考えこんでいることに衝撃を受けました。椅子マニアになってしまい、そこからデザインをやってみたいと考え始めました。親戚をつたってCIデザイナーと昼食をご一緒する機会を頂いたことで、触発され、美大に進学を決めました。

そのときに勧めてもらった『発想する会社! ― 世界最高のデザイン・ファームIDEOに学ぶイノベーションの技法』は今でもバイブルです。

大学ではデザイン史、彫刻や絵画など幅広い分野を学んだのち、専門課程としてインテリア、建築について学びました。専門課程ではコンセプトメイキングのプロセスを大事にしていました。モノを作り始める前に「誰が、いつ、何のために、何を、どうして、どう変わるのか」を言語化する作業です。実は、これはビジョン、ミッション、バリュー、そしてデザイン指針を言語化した上で形に落とし込むというデジタルプロダクトのUXデザインと同じプロセスです。

また、その頃は高校時代に結成した音楽ユニットを続けていました。当時Flashを使ったインタラクティブなサイトが流行り始めていた時期です。「自分たちも楽曲をウェブ上で公開したい!」と思い、自らウェブサイトを作りました。そのサイトがレコード会社のプロデューサーの目にとまり、コンピレーションアルバムを制作しないかとお声をかけていただきました。このようなチャンスはもう一生ないだろうと考え、思い切って美大を中退し、音楽の道に進みました。

── ミュージシャンとしてご活躍されたと思いますが、どのような経緯でデザイナーへとキャリアチェンジされたのでしょうか。

音楽制作の活動に合わせて、アートディレクションに近いこともしていました。イベントやアルバムアートワークやウェブなど、どういうコミュニケーション展開にしていくか考えたり。しかし、活動をしていく中でエンターテイメントを通して人を豊かにするというよりも、人の課題を解決し、人の役に立ちたいという思いが強いことに気づき始め、再びデザイナーの道を志すようになりました。

そんな折、偶然にも友人の起業家からデザインの仕事を依頼されました。そこがフリーランスのデザイナーとしての活動のスタートです。ロゴや名刺、VIなどグラフィックデザインから始まり、ウェブデザイン、Flashにも手を広げ、試行錯誤しながら、デザインスキルを磨いていきました。そうして徐々にFlashを使ったウェブ・インタラクションが私の強みになっていました。

フリーランス時代に感じた、上流からプロジェクトに関わる面白さ

── フリーランスからデザイン事務所へジョインしようと思った背景を教えてください。

悲しいことに、Flashは使われなくなって仕事が減っていくことが見えていたんです。さて、どうしようと考えて、アプリケーションのインターフェイスのデザインが着地点だろうという結論に至りました。家具などの「使う」デザインとグラフィックやウェブで培った「伝える」デザインの力。二つの掛け合わせになるからです。UI専門のデザイン事務所を見つけて入社することを決めました。

そこでは、大手メーカーと先行開発を主に手がけていました。私はその中でUIやデザインガイドラインの制作、Google I/Oのセッションを翻訳するお仕事などに携わりました。それがデザインスプリントなど西海岸のアプローチを知るきっかけになりました。大手クライアントのお仕事はとても勉強になり、大変感謝しています。

ただ案件の特性上、部分的な業務になってしまいます。そこが個人的にやりがいを感じられない点でした。もっと上流からプロジェクトに関わるようにしようと、再びフリーランスに戻ることに。そこからは必ず一度はクライアントの意思決定者と話すように働きかけ、ガラリとアウトプットへの評価が変わりました。

ただ同時に、仕事をこなしていくだけでは、デザイナーとして何か壁にぶち当たったままだなと思っていました。そこで海外におけるテックやデザインの動きに触れてみようと、幼少期に住んでいたバンクーバーに行ってみることにしました。

現地ではワークショップやセミナー、ミートアップに足を運び、北米のデザイン事情を片っ端から集めていました。例えば、「チップの文化を難しいと感じる人の課題を解決する」みたいなお題を元に数人でブレストし、アプリのUXに落としていくようなワークショップ。他には「お気に入りの音楽をカセットテープとして手に入れることができるサービス」と言ったお題で、UXドキュメントを渡され、これも数人でUIデザインを作っていくワークショップ。アジア、アラブ、北米、ヨーロッパなど参加者の出身は多様でした。またメジャーなサービスのデザイナー達のパネルディスカッションなど、現地の人に混じって参加して、UXを体系的に理解することができました。

デザイナーだけではなく、チームとしてUXに取り組むラクスルの強さ

── フリーランスの経験を経て、ラクスル株式会社を選んだ理由について教えてください。

バンクーバーで一年の滞在を経て帰国したのは2016年の終わり頃です。当時はGoogleやFacebookなどがデザイン会社を買収する動きが活発になっていました。デザインを経営やビジネスで活かすためには、制作会社などで外から関わるよりも、事業会社に入って中から関わるほうがいいのではないかという思いが強くなりました。それが転職活動のきっかけです。ラクスルで働いていた知人に誘われ一緒に二週間ほど仕事をしたあと、正式にメンバーとしてジョインしないかという話をいただき、選考を受けることを決意しました。

ラクスルに惹かれた理由は大きく三つ。まずは、ロジカルに物事を進めるのが得意なこと。ラクスルにいるメンバーは、現状把握しながら一つ一つ噛み砕き、分解し、仮説を立て、どのようなステップを踏むことでどんな成長が見込めるのか、事細かく分析し、実行していました。PDCAがうまいんですね。

もう一つはUXデザインを実務上で行う環境があったこと。今ではUXデザインに取り組む企業が増えてきています。しかし、ほんの2-3年前はまだまだ珍しいことでした。当時のデザイン責任者の「ユーザー中心設計、UXデザインをしっかりやりたい」という意向があることに可能性を感じました。

そして最後はビジョンドリブンで長期的な視点を持っていたこと。「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」というビジョン。ビジョンが明確で、かつ明確に成立させているケースは、そう多くないと思っています。

これら三点を総合して考えると、良いユーザー体験を作っていくことができる環境では、と考えました。

── 現在は広告事業部のデザイナーとしてご活躍されていると思いますが、事業部のミッション、ビジョンについて教えてください。

広告事業部ではテレビCMサービスを展開しています。簡単に言うと、テレビCMの企画・制作・放映まで一気に依頼して頂けるサービスです。加えて、コンサルティングを同時に提供して「テレビCMを使って、いかに事業を伸ばしていくのか」をお手伝いしています。そして、私も所属しているテックチームでは、テクノロジーを活かしたテレビCMオンラインストアなどのプロダクト開発を行なっています。

そのビジョンは「テレビCMの民主化」です。

そこからテックチームでは、民主化というビジョンをブレイクダウンして、「テレビCMをもっとシンプルに」というミッションを掲げています。というのは、今までテレビCMは取引が複雑だったり、効果が分かりにくかったんです。おそらく読者の方でもテレビCMの仕事の流れがイメージつく人は少ないのではないでしょうか。そのせいで、活用が進まなかった面があります。そこを変えていきましょうと。

テレビCMオンラインストア
https://tvcm.raksul.com/store

── デザイナーの具体的な役割、業務について教えてください。

デザイナーとしての役割は、「テレビCMをもっとシンプルに」というチームのミッションを実現すべく、サービス・テクノロジーとデザインを溶け合わせて体験をシンプルにしていくことだと定義しています。

そのために、まずデザイン指針として「Clear(透明)」という言葉を置いています。さらにサブコンセプトとしてVisualize(見たくなる・見せたくなる)・Comfortable(心地よく馴染む)・Fun& Inspiring(触発される)を掲げています。

これまで複雑で分かりづらかった世界だからこそ、その取引がクリアに分かり、心地よく馴染むプロセスの中で、次やることのイメージがどんどん湧いてしまう。そういう体験をあらゆるタッチポイントを通して提供したい意図です。

具体的な業務内容は非常に幅が広いです。初期はデザインシンキングのプロセスに沿って進めています。ユーザーインタビュー、ダーティプロトなどを活用しながらUXリサーチを実施。課題の抽出を行い解決アイディアを出し、再びプロトタイプでテスト。

この際、リアルな現場の一次情報をしっかりと活かしていくために、実際の顧客のオフィスに足を運びます。関東はもちろんですが、地方であれば、これまで名古屋のうなぎ屋さん、大分のプロパンガス屋にユーザーインタビューしに行ったことも。

その次には、リーンUX的なアプローチに移っていき、ユーザーストーリーマッピングを使ってUIUX全体の流れを設計、UIデザイン、LP・バナーなどのマーケティングのデザインといった形で進んでいきます。その間も、無駄なモノを作るリスクをミニマイズするためポイントポイントでユーザーテストします。リリース後は、ユーザビリティテストを実施してUI上の重大な課題を無くしていきます。

ユーザビリティテストも、実際に顧客のところに行っています。もちろん必要に応じてオフィスに来てもらうケースもありますが、自然な反応を得ることができるのは顧客が慣れている場所です。大きなオフィスのこともあれば、マッサージ屋さんの端っこの小さな休憩用の机でプロトを触ってもらったり。

こうした活動は1人だけでやっているわけではありません。プロダクトマネージャーやエンジニアも含め、チームが一体となって進めます。例えば、ユーザーインタビュー・ユーザーテストにはエンジニアも一緒にいきます。振り返りも一緒に行うため、ユーザー情報に対する感度や量は揃った状態で議論を進めることができます。

少人数のチームなので、デザインの意思決定は、議論を元に現場でどんどん進めます。モノによって判断に必要なメンバーを巻き込み、ケースに合わせて着地させていきます。デザイナーは非常に信頼してもらえているからこそ、デザインが適切な効果を出すために良いデザイン判断をファシリテートする役割を追っています。

ファシリテートという意味でいうと、先にご紹介したデザイン指針も、PdM、エンジニアさんを含めたワークショップを設計して実施しました。ポストイットにみんなが大事にしたい想いをたくさん書き込んでもらって、整理していくようなプロセスを辿ってます。こういった時もデザイナーはファシリテーターとして、一人一人の中にある良いものを引き出していく役目を負っています。

またいくつか、独自のプロトタイピング手法を使っています。
1つは「ペアプロト」。フロントエンドエンジニアはデザイナーの隣に座っているので、私がFigmaでプロトタイプを作っているのを横で見ながら同時にフロント開発を始め、フィジビリティとUXを議論しながら超特急で動くVue.jsプロトを作っていく荒技です。

2つ目は「ガヤプロト」。チームに私の席の後ろに立ってもらい、ワイワイこんな感じ、あんな感じとUIの議論をしてもらい、リアルタイムで私がFigmaでカタチにしていくスタイルです。私が彼らの自動スケッチBotになるみたいな感覚。最後はデザイナーの専門視点から整えて完成します。

このような取り組みを通して、デザイナーのやっていることを体感してもらうことができ、デザインに価値を感じてくれる人が増えています。

── 今後ラクスルでどのようなことに取り組んでいきたいですか。

事業会社に入社したいと思った背景には、デザインを使ってビジネスやユーザーの行動をもっとレバレッジしたいと考えたからで、その思いは変わらずあります。個人的にはデザインにはもっとポテンシャルがあると思うんです。エンジニアやビジネス職の方も含めて社内にデザインを活かせる人を、さらに増やしていきたいと思っています。デザイナーが力を発揮しやすい環境にしていくことにもなります。

これを実現していく上で二つのことに取り組んでいく必要があると考えています。まず一つは、エンジニアによく聞かれる「なんでこの色にしたの?」や「なんで数ピクセル移動したの?」などデザインの背景に関する考えを丁寧に回答し続けることです。

もう一つは自分のやっていることを言語化し、仕組み化していくことです。広告事業部のメンバーなど一緒にデザインプロセスを体感した人はデザインの価値を理解してもらうことができますが、体験したことがない人にはまだ理解してもらうことが難しいです。そのため、私たちデザイナーが自らの取り組みを発信していくことで、他メンバーのデザイン理解を高めてもらいたいと考えています。

私個人に関しては、テクノロジーが移り変わっていくように状況やチームの変化に合わせて自分もどんどん変化して、ユーザーにとっての価値が生まれることにフォーカスして動いていけるような人であり続けたいと思います。そのためには学び続けることが大事だと考えています。

── 最後に、読者に向けてメッセージをください。

BtoBのデザインはBtoCと比べると派手ではないし、身近でないところがあります。しかしBtoBのサービスは、社会インパクトが非常に大きいです。

私たちの具体例で言えば、テレビCMオンラインストアがあります。 これまで大きいロットでしか買うことができなかったテレビCMの枠を、初めてCMに挑戦する企業でも、小ロット1枠からウェブで簡単に買えるようにしたECサイトです。これは業界でも、Twitterでもかなり大きな話題になりました。

リリース後、購入してくれたユーザーに直接お話を聞きにいったところ「どうしても買いたかった枠だけど、他では買えなかった」「シンプルすぎてびっくりした」と伝えていただきました。他にも、テレビCMを利用したことがないけど、オンラインストアによって初めて活用することができたスタートアップもありました。どちらものケースも、今までできなかったこと。新しい認知拡大の機会を提供できた事例です。

これはデザインとテクノロジー、そしてビジネスがガッチリと組み合わさった結果だと思います。チームとユーザーの両面に、深く深く入り込んで進んだ先に得られる達成感です。BtoB分野のインハウスデザイナーだからこそ、だと感じています。

また類似サービスが多いBtoCに比べ、BtoBは競合が比較的少ないからこそデザインが活用されていない部分がまだまだあります。そこにデザインの重要性を強く認識して早期にデザインを持ち込むことで、大きなインパクトを作れると考えています。

例えば、本来やりたかった仕事が出来る様になったり、使えなかった手段が使える様になったり、無駄な業務が減って早く帰れたり、大変な仕事の中に楽しみが見つかったり。つまり、人の仕事と生活の両方にポジティブなインパクトが生まれるデザインです。

そうした実績を積みたい人にはtoBのインハウスは適した環境だと思います。

さいごに

この記事を読んでより詳しく、ラクスル株式会社のデザインの取り組みや雰囲気を知りたいと思った方は是非、RAKSUL Design Blogをチェックしてみてください!

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