「イノベーターを目指して働く」三菱UFJ信託銀行 1人目の越境デザイナー 伊藤 梨恵さんの挑戦
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インタビュー

「イノベーターを目指して働く」三菱UFJ信託銀行 1人目の越境デザイナー 伊藤 梨恵さんの挑戦

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今回インタビューしたのは、三菱UFJ信託銀行 経営企画部 FinTech推進室デザイナー 伊藤 梨恵さんです。伊藤さんは、公務員として市役所に勤務した後にWebデザイナーに転身。ReDesignerの紹介をきっかけに、三菱UFJ信託銀行の1人目のデザイナーとして挑戦をスタート。

デザイナーを志したきっかけ、これまでのデザイナーキャリア、そして三菱UFJ信託銀行に至るまでのエピソードを紐解くと「越境」というキーワードが見えてきました。1人目のポジションに興味がある方、未経験でも異業種へチャレンジしたい方は、ぜひ伊藤さんの変遷を一緒に辿ってみましょう。

新卒で市役所に就職。デザインの知識はゼロだった

── 伊藤さんがデザイナーを志したきっかけから教えてください。

大学時代は経済学部でしたし、美術大学やデザイン系の学校には興味もなかったので、将来自分がデザイナーになるなんて想像もしていませんでした。 私は三菱UFJ信託銀行に出会うまでに、4社経験しています。新卒としてのファーストキャリアから振り返ると、最初はデザイナーではなく、地元 神奈川県にある小さな市役所の事務職でした。就職活動時は、経済学部らしく金融系の保険会社さんなどからも内定をいただきましたが、市役所を選んだのは、地元で長く働けることと、自分の働きで市民や町に貢献できるんじゃないかと考えたからでした。新卒の頃から、社会的に影響を与えられる仕事がしたいというマインドは備わっていたのかもしれません。

デザイナーという職業があることを知ったのは市役所で働いていたときでした。 私は市役所の子ども課で保育園事務全般を担当していたのですが、窓口でお母さんが手続きをしている間、一緒に来ているお子さんが退屈しないように、一緒に絵を描いてあげることが多かったんです。小さい子って自分で絵を描くことはできなくても、私が描いた絵を見てそれが何か分かると、とても喜んでくれるんですよ。そんなお子さんとの交流から「人を喜ばせるにはこんな方法もあるんだな」と気づいて、漠然と自分のやりたいことについて考えるようになりました。

市役所の仕事では意外にもチラシを作ることも多かったのですが、当然デザインソフトやデザインツールの存在すら知らなかったので、ExcelとWordで模索しながら作っていました。デザイナーとなった今では信じられないです(笑)。

あるとき「どうすればチラシって上手く作れるんだろう」と調べていて、はじめてデザイナーという職業を知りました。そこからIllustratorやPhotoshopなどの存在も知り「高いけど、このソフトがあるとこんなものが作れるんだな」と徐々にデザインに対して興味が湧いてきたんです。新卒で市役所で働きはじめてから、3年が経っていました。

よく「3年働いたらキャリアを見つめ直すタイミング」って言いますよね。私にとっても3年目は、このまま市役所で働きながら限られた地域に貢献するか、より広い領域で社会貢献したいのか考えはじめた時期でした。

私が働いていた市役所は地域に根付いたところだったので、一緒に働く方も、日々お会いするお客さまもみんな顔見知り。なんてことも多く、自分がいる世界はとても限定的なのではないかと感じていたんです。本当にやりたいことを考えた結果、新しい環境に旅立つことを決めました。真っ先に「デザインの専門学校に行こう」と思いましたね。

── なぜ、そこでデザイナーになろうと方向転換ができたんですか?

正直、当時は社会貢献のためというよりも、もっと広い世界を知りたかったのかもしれません。もちろん、市役所でお子さんに絵を描いたとき、喜んでもらえた影響もあったと思います。

休職して専門学校にいく選択肢もありましたが、専門学校で2年間デザインを学んだあと、市役所に戻って働くイメージはまったく持てなかったんです。やりたいことをやるためには、リスクを取って180度人生の方向を変えてもいいんじゃないかと思いました。「もう3年も働いた。この先の人生は短い!」と自分に言い聞かせて市役所を退職し、2011年に専門学校のHAL東京へ入学しました。

HAL東京でさまざまな課題をやっているうちに、自分がグラフィックデザインよりWebデザインのほうが得意なことに気づきました。仕事として続けていくなら、好きなことのほうがいいですよね。そこで「まずはWebデザイナーの肩書きを名乗れるようになる」ことを目標に、ある製版会社でWebデザイナーのアルバイトを始めました。製版会社ながらWebデザインの受託事業もやっている50名ほどの会社で、実務経験はしっかり積ませてもらえました。2013年にHAL東京を卒業し、いよいよWebデザイナーとしてのキャリアがスタートしました。

当時はスマートフォンが普及し始めたばかり。働いていた製版会社でも、ガラケー向けサイトからスマートフォン向けサイトの依頼が増え、私も入社半年でスマートフォン向けサイトをメインで担当していました。特にコーディングはまだまだ身についていなかったので、毎日家に帰ったらインプットに必死でした(笑)。ひとりで案件を回せるようになってきたタイミングで、受託事業での経験を活かしてECコンサルの受託事業を行う会社に転職。この頃には、PC・スマートフォンのデザインとコーディングもできるようになっていました。

Webデザイナーとして約3年間の経験を積み、ポートフォリオも充実してきたころ、また「3年目」の転機がありました。受託事業に関わるデザイナーは、クライアントの代弁者として、クライアントが持つ課題や想いをデザインに反映します。その一方で、クライアントと同じ熱量を持って提案しても、関われる範囲がどうしても限定的になってしまう現実にも直面したんです。

デザイナーとして表現力を深めるために、ひとつの事業にコミットしたり、さまざまなフェーズに関わってみたいと思いました。インハウスデザイナーだったら、そんな経験ができるかもしれないと思って、40以上の自社サービスを提供するデジタルコンテンツ企業(以下、D社)のインハウスデザイナーに挑戦することを決めました。

インハウスデザイナーに転身。WebからUXまで役割が広がった

── インハウスデザイナーとして挑戦したD社では、どんなことを担当されましたか。

当時のD社には横串のデザインチームがありました。私はプレイヤーとして、自社サービスのWebデザイン、UIデザインを担当していましたが、後半は自社サービスの要件定義フェーズから参加することが増えました。ペルソナやカスタマージャーニーマップを作って、事業部のメンバーと話し合ったり、コンセプトやキーカラーを提案して、デザインチームにビジュアルに起こしてもらったりと、UXデザイナーに近い立場に変わっていきました。

それまでは私自身、UXデザインのプロセスを経験したことはなかったので失敗も多かったです。でも「とりあえずやってみよう」とプロトタイピングを重ねて、D社のUXチームと連携したり、勉強会でインプットしたことを応用して、見よう見まねで手法を取り入れていきました。

より広い範囲のデザインを見れるようになった頃、ブロックチェーン技術を使ったサービス立ち上げに関わることになったんです。ブロックチェーンは、分散してユーザー同士が管理し合う、データの改ざんが不可能、海外送金の低コスト化などのメリットがあり、さまざまな領域での活用が期待されています。まさに、私がやりたかった社会貢献にも繋がっているとワクワクしていた矢先、サービスはリリース中止になってしまいました。自分の中にくすぶりが残って、外にも目を向けてみようかなと考えていたタイミングで、ReDesignerの存在を知りました。

きっかけは、社内のSlackでした。情報共有が活発な環境だったので、ReDesignerがリリースされた直後も「Goodpatchさんからこんなサービスが出た」と話題になっていたんです。ちょうど新しい挑戦を考えていたころだったので、迷わず登録しました。2018年5月に登録して、三菱UFJ信託銀行に入社したのが2018年10月。正直、こんなに早く次が決まるとは思ってもいませんでした(笑)。ReDesignerのキャリアデザイナーは、モヤモヤしていた私からさまざまな話を引き出してくれた上で、私が憧れていた社会的意義のある仕事を実現する技術的土壌、顧客基盤、影響力が揃った会社さんをピンポイントで紹介してくれたんです。あの選択肢とスピード感は、私ひとりではできなかったと思います。

金融機関のイメージを覆した室長の一言とは?

ReDesignerから三菱UFJ信託銀行をご紹介いただいたときは、実は半信半疑で面接に行きました。社内にデザイナーはゼロ。一体どんなことをしていきたいのか見当もつかなかったからです。でも、経営企画部 FinTech推進室長の伊藤、調査役補の齊藤に会って、私が思い描いていた金融機関の「堅い」イメージが大きく変わり始めていることを実感したんです。そう感じた理由のひとつに、室長 伊藤の言葉があります。伊藤は私に「これからのデザイナーは言葉が大事だ」と話してくれました。Design in Tech Report 2018の中にも、今後デザイナーに必要となるスキルの中にライティングスキルが挙げられていましたよね。大手金融機関の室長からそんな意表を突いた一言が出てきて、いい意味で裏切られたことが印象的でした。その一言があったから1人目のデザイナーとして、飛び込んでみようと思えたんです。

── 伊藤さんが所属する経営企画部 FinTech推進室の体制、役割を教えてください。

■FinTech推進室の役割

FinTech推進室には3つのチームがあります。

  • デジタルサービス創出チーム
  • ビッグデータ活用チーム
  • 最新技術の業務適用チーム

私はデジタルサービス創出チームに所属しており、いくつかの新規事業立ち上げに関わっています。 2018年8月には「DPRIME(仮称)」という情報信託プラットフォームの実証実験をNTTデータさんと一緒に行いました。現在は分析結果からブラッシュアップをしたり、本番リリースに向けて準備を進めています。 デジタルサービス創出チームに所属する三菱UFJ信託銀行のメンバーは5名。そこにパートナー企業をプラスしたチームになっています。パートナー企業とも「クライアント」という関係を超えて、どうすればサービスがよくなるのか話し合えるチームだと感じています。

■経営企画部の役割

経営企画部のデザイナーということもあり、三菱UFJ信託銀行の社内風土をより活性化させる、社内向けプロジェクトも担当しています。主に、ポータルサイトやオフィスのレイアウト改善を行なっています。オフィスのレイアウト改善で「空間デザインをしてほしい」と依頼されたときは、まだ新しいデザインの形があるなとやりがいを感じました。家で勉強し、コンセプトを練って、業者さんと形にしていきました。 経営企画部のデザイナーは新規事業開発と社内案件、両方を経験できるところが特徴であり、やりがいだと思います。

── 今までの環境との違いはありますか。

銀行員としての業務もあるところは、IT企業のデザイナーとは大きく異なる点ですね。「デザイナー」である前に「主任」なので、コンプライアンスの知識も必要になってきます。また金融業界の知識は社内研修で身につけられますし、金融領域に強みを持ったデザイナーとして成長できるところは金融業界ならではだと思います。将来的には、法務や信託事務について理解し、かつデザインができる人材になるために、資格の勉強を始めています。

イノベーターが集まるチームのひとりとして働く

── 伊藤さんはデザイナーとしてどのように働かれているのでしょうか。

具体的には開発全体を見ながら、アプリのUI/UXデザインをメインで担当しています。デザイナーいうよりもチームの一員という意識の方が強いです。経営企画部 FinTech推進室は、全員がイノベーターとして働いているチーム。その中で、開発に向けた要件定義のフロー、開発環境、ユーザー体験、アプリのUIなど、細かい役割分担があります。そのため私もデザイナーの枠にこだわらず、イノベーターのひとりとして働いています。

他の事業部においても、チームでひとつのサイクルを回し続けるような働き方が広がっていけば、三菱UFJ信託銀行からより早くイノベーティブなサービスが生まれるのではないかと思います。そのためにも、私たち経営企画部 FinTech推進室は「こんな働き方したいな」と思ってもらえるように頑張っていかなければなりません。

これからは、デザインの啓蒙にもより力を入れていきたいです。過去には経営企画部 FinTech推進室が主導して、全社にデザイン思考を取り入れるためのビジネス創出ワークショップをGoodpatchさんのオフィスで開催していただいたことがありました。

ワークショップは社内でも非常に好評で、何度も開催するうちに、社長・部長レベルの人間も参加するようになりました。やはり実際に行動して、満足度の高いアンケート結果や社員の声など目に見える効果があることで、はじめて人が動くんだと思いました。これからもワークショップや私自身の発信などを通して、三菱UFJ信託銀行全体にお客様目線が根付くように主導していきたいです。

── 最後に、これから伊藤さんが三菱UFJ信託銀行でやりたいことを教えてください。

1人目のデザイナーとして入社した当初、自分の立ち位置に悩んだことがありました。でもそれは逆に、やりたいことを言葉にして手を挙げれば、トライできる土壌があるということなんです。そんな土壌を活かして、経営企画部 FinTech推進室でデザイン組織を立ち上げたいと考えています。

これからの三菱UFJ信託銀行では新しいビジネスが生まれたり、社内風土も進化していきます。そんなときに必要なのはデザイナーではないかと思うんです。今まで私はイノベーターとして、広い範囲を横断的に見てきましたが、デザイン組織を立ち上げるためには、デザイナーの評価制度なども構築していく必要があると思っています。

長い間デザイナーが不在だった三菱UFJ信託銀行でデザイン組織を立ち上げ、イノベーティブなビジネスを生み出し、老若男女問わず幅広く社会貢献をする。今までの経験を活かしながら、ずっと憧れていたことに挑戦したいです。

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