「裁量を与えて意思決定を積み重ねる」デザインでビジネスを加速させる、三菱UFJ信託銀行が仕掛けるデザイン経営
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インタビュー

「裁量を与えて意思決定を積み重ねる」デザインでビジネスを加速させる、三菱UFJ信託銀行が仕掛けるデザイン経営

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2018年5月23日に経済産業省・特許庁が発表した「デザイン経営」宣言から1年が経ちました。今、デザインを経営資源として活用している企業とはどのような企業なのでしょうか。
今回ReDesigner Magazineは、創業以来初のデザイナーを採用しデザイン組織構築に取り組む三菱UFJ信託銀行の常務執行役員CDTO(チーフデジタルトランスフォーメーションオフィサー)※ 稲葉健伸さんにデザインの力を必要とするようになった背景や、デザインの力を使って事業をどのように生み出すのか伺いました。デザイナーが領域を超えるとはどういうことなのか、三菱UFJ信託銀行に訪れている変化から紐解きます。
(※取材時点の役職名、以下同様)

デジタル時代に向けた社内カルチャーの変革

── 稲葉さんは三菱UFJ信託銀行において、CDTO(チーフデジタルトランスフォーメーションオフィサー)としてFinTech推進室を牽引されています。こうした取り組みに至った背景からお聞かせください。

長引く超低金利政策の影響もあり、金融機関を取り巻く環境は厳しさを増しています。各金融機関は一層の効率化や新規ビジネスの開拓等によりビジネスモデルの変革に取り組み、業界全体が確実に変化し始めました。

そこに技術の発展も加わり、デジタルトランスフォーメーションの波が信託の領域にも押し寄せてきましたので、三菱UFJ信託銀行も経営企画部の部内室としてFintech推進室を立ち上げました。その後、デジタルトランスフォーメーションを推進できる者を社内から選抜し、CDTOの責任の下で室長を中心としたメンバーに企画・立案・推進を託したという経緯があります。

三菱UFJ信託銀行 常務執行役員CDTO 稲葉健伸さん

金融業界でデジタルトランスフォーメーションが進むことで、我々のような金融機関を経由せずに、お客様自身が財産を管理できるように今後はなるでしょうし、新たな競合も現れ始めました。そうした変化を感じ取り「ここで遅れをとってはいけない」という想いから、FinTech推進室を設立しました。
引用:「あの頃は銀行だった」と言われる未来のために。デザイン組織を構築する三菱UFJ信託銀行の変革

デジタルトランスフォーメーションを推進するにあたって、あえて“FinTech”推進室とした主な狙いは新規事業の創出です。これまでやってきたアナログな営業や業務プロセスでは異業種を含む競合には勝てませんので、まずはデジタル武装する必要があります。

加えて、これまで世の中になかった新しい発想をビジネスに取り込み、信託の仕組みを活用して社会・お客さまの課題を解決していくことが弊社の存在意義であると考えました。

新規事業のアイデアを三菱UFJ信託銀行内で出し合い、プロジェクトとして進めていくと、社外の専門家の方々には評価されるが、社内ではなかなか価値が伝わらないという壁にぶつかりました。社内においてFinTechを活用した新規事業を認知させるためには、役員をはじめ会社全体のカルチャーを変えていかなければならないと気づきました。カルチャー変革のための取り組みはいくつかありますが、その一つがGoodpatchさんとご一緒しているデザインワークショップです。

銀行員にも「右脳」のマインドが求められている

── そこでデザインに行き着いたきっかけを教えてください。

三菱UFJ信託銀行では社是としてフィデューシャリー・デューティーを2014年から掲げているのですが、社員への定着が道半ばであることに課題を感じていました。

参考:三菱UFJ信託銀行のFiduciary Dutyについて

特に、3番目の「お客さまの最適・最善のために行動する力」を体現するためにどうすればよいのかを模索していました。お客さまに言われたことを鵜呑みにするだけではなく、観察して本当のニーズを推し量る力がないと、ご要望を満たせるような提案はできません。しかし、この力を私たちのような銀行員が実践できるようになるためには、単なる意識改革だけでは不十分で、新たに思考スキルを身につけることが必要でした。そこでたどり着いたのが、Goodpatchさんで学んだデザイン思考だったんです。

デザインについて書かれた書籍の中で印象的だったのが、佐宗 邦威さんの著書「21世紀のビジネスにデザイン思考が必要な理由」です。各章の文末にデザイナーのマインドが書かれていたので、それをもとに銀行員との比較を紙にまとめて社員に配ったことがあります。銀行員のマインドは左脳、デザイナーのマインドは右脳であることが整理でき、とても影響を受けた一冊です。

── 2018年10月にデザイナーの伊藤梨恵さんが入社されていますが、稲葉さんがデザインの影響を感じたエピソードがあれば教えてください。

伊藤梨恵さんは普段から資料に手描きのイラストを使うことが多く、抽象的な言葉よりもコンセプトがストレートに伝わってきますね。

以前、「本社ビル内に斬新なコラボレーション・スペースを作る」という社長宛の提案資料にイラストが大きく載っていたことがありました。池谷(取締役社長)もイラストを使って提案される経験は初めてだったと思いますが、その提案が承認され、今年の夏頃にはコラボレーション・スペースが完成する予定です。企画立案から予算取りまでを梨恵さんを中心とした若手に任せていますので、私も完成を楽しみにしています。今後役員陣でディスカッションをする際にも使ってみようと考えていて、これまでにはなかったユニークな発想が生まれるのではないかと期待しています。

デザイナー 伊藤梨恵さんが提案時に使用したイラスト付きの資料

「唯一無二」になるため、裁量を与えて意思決定を積み重ねる

三菱UFJ信託銀行のデザイナーには、今までの常識をどんどん壊してほしいです。そのために私たち役員も、現場に裁量を持たせて意思決定を重ねてもらいたいと考えています。 最近は複数の提案の中から意思決定する機会が多いのですが、社員には「どの案がいいか私に聞かないで。どんなプロセスで、どの案に決めたかだけ教えて」と伝えて、なるべく任せるようにしています。

そんな新しいカルチャーをつくるための取り組みの一つに、社内報のケースがあります。表紙中央に社長の池谷も写っていますが、この写真はGoodpatchさんのオフィスにお邪魔して撮影したものです。

三菱UFJ信託銀行の社内報“kakehashi”

「型にはまった旧来型の銀行ではなく、唯一無二の信託銀行になっていこう」というメッセージを社長から発信するために社内報を活用しています。昔ながらの銀行のオフィスや窓口とは違うイメージを今後もどんどん出していきたいと思っています。

社長の池谷や役員の数名はデザインワークショップにも参加しており、基本的には任せる方針でいてくれています。予算や投資できる出資の枠など、もちろん私の一存だけでは決まりませんが、最後は想いの強さも重要な要素なので、さまざまなチャンスを与えてもらえる環境はとてもありがたいです。

── 新規事業を通して実現したいことや、デザインへの期待について教えてください。

FinTech推進室では、新規事業として16のプロジェクトを同時に進めています。
現在は、金融機関の新しい取り組みに対して行政も寛容になってきたと感じます。そんな今だからこそ、業界の先頭を行くようなイノベーティブな事業、未来の三菱UFJ信託銀行の柱となるような事業が出てくることを期待しています。そのためにも、お客さまのことを徹底的に観察し、考え抜く右脳のマインドを持つデザイナーがすべての新規事業において必要です。デザイナーだけではなく、三菱UFJ信託銀行全体にデザイナーのマインドが定着していくことを期待していますし、FinTech推進室がそれを率先していかなければなりません。

プロジェクトの数も増えてきましたので、一つずつローンチして収益化するフェーズに入ります。まずは世の中に出して実績を積み上げながら、事業全体の拡大を目指すことが重要だと思っています。
イノベーティブな新規事業の収益化には時間がかかるものですが、「三菱UFJ信託銀行はおもしろいことをやっている銀行だ」という認知度は少しずつ上がってきていると感じています。現在、当社を支えている主要なビジネスの骨格は昭和の時代にできたものがほとんどです。三菱UFJ信託銀行はビジネスの骨格をも作り変えながら、デジタルトランスフォーメーションへの道を切り拓いていきたいと考えています。

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