新規事業立ち上げにおけるデザインの役割 Business Designers Meetup
FacebookでシェアTwitterでツイートはてなブックマークに登録URLをコピー

コピーしました!

イベントレポート

新規事業立ち上げにおけるデザインの役割 Business Designers Meetup

URLコピー

URLコピー

コピーしました!

Business Designers Meetupとは

Business Designers Meetupとは、ビジネス×デザインの領域で新規事業の立ち上げや推進を実践する方々にご登壇いただき、実務で役立つナレッジをお届けするミートアップです。 今回のテーマは「社内新規事業におけるデザインの役割」。ビジネスの現場においてデザインが果たす役割が大きくなる中、新規事業にデザイナーはどのように関わっていくべきなのでしょうか。ReDesignerはその答えをみなさんと考えるため、自社にデザイン組織を持ちビジネスを推進する3社をお招きしました。

登壇企業は、多くのデザイナーに愛される老舗フォントメーカーである株式会社モリサワ、創業92年以来初のデザイナーを採用しデザイン思考を組織に取り入れている三菱UFJ信託銀行、Goodpatchの3社です。 ビジネス創出におけるデザイン、そしてデザイナーの役割とは何なのか。企業それぞれが実践するチームビルディングやコラボレーションの工夫などをレポートでお届けします。

株式会社モリサワ|グローバル展開を見据えた新規事業立ち上げプロセス

「文字を通じて社会に貢献する」を社是とし、多くの人々に愛されるフォントを作り続ける株式会社モリサワでChief Innovation Directorを務める菊池さん。新規事業部であるMORISAWA BRAND NEW Labがサービスを立ち上げるまでの背景と、デザインの立ち位置などをお話しいただきました。

菊池さん: 株式会社モリサワ(以下、モリサワ)は、今年で創業95年を迎えます。写真植字機から始まり、デジタルフォント開発、サブスクリプションモデルのMORISAWA PASSPORT、組込みフォント、WebフォントTypeSquareなどを提供しているフォントメーカーです。

今日は2017年に立ち上げた新規事業部MORISAWA BRAND NEW Labにおけるデザインの役割についてお話しします。

イノベーションを推進するための取り組み

  1. 新規事業チームを社長直下に置く

2017年、新規事業チームとしてMORISAWA BRAND NEW Labを立ち上げた時には、他業界からフォント事業への参入が増え始めていました。様々な業界、領域に目を向けることが必要だと感じたので、我々は国内だけではなく海外の事例をディスカッションに取り上げるなどして危機意識を高めることからスタートしました。

次に、最も重要なステップが変革推進のための連携チームを築くことです。 従来の組織体制は代表とプロジェクトチームの間に5,6レイヤーあり、一つの承認を取るまでに2週間以上かかっていました。しかし、我々はグローバルビジネスを前提としているため、社内での承認にスピード感を持たせることが重要だと考え、プロジェクトチームを社長直下に置く判断をしました。これによって意思決定のスピードが短縮され、結果的にグローバルな対応もしやすくなりました。

  1. 新たな価値を生み出すために越境する

新規事業を生み出す土壌ができたところで、まず我々は「お客様が本当に求めているものは何か」ということを考えました。その中で、「モリサワはフォントメーカーとして知られているが、文字とは人の思いを伝えるものと考えるなら、我々はコミュニケーション領域やテレパシー領域にも越境していくべきなのではないか」という背景から、新規事業であるZeBrandリリースに至りました。

https://zebranding.com

ZeBrandとは、ビジネス初期のスタートアップのブランディングをWeb上でサポートするサービスです。2019年2月より米国スタートアップ向けに英語版で提供をしています。コンピュテーショナル・デザインの概念を取り入れており、アルゴリズムを使うことによって、デザインリソースがないチームでも気軽にブランディングができるようになっています。

ZeBrand立ち上げにあたっては、1ヶ月半ほどNYへ行き、現地のデジタルネイティブ層をターゲットにしたビジネスを行うためのヒアリングを行いました。また、調査を行うと同時にデザインやブランディングについても改めて学ぶとともに、ビジネスの可能性を実感しました。

  1. チームの拠点を社外に作る

大企業において新規事業を推進していくときに重要なのが、チームが働く環境です。MORISAWA BRAND NEW Labは自社オフィスではなくWeWorkを拠点としており、日々開催されるミートアップやランチイベントなど、様々な企業の方との交流から新しい機会、発想を得ることができています。また、WeWork本社の方からNYでイベントを開催する機会をいただいたりと、チームの活動の幅を広げることにも繋がっています。

関連記事:社内ベンチャーがコワーキングスペースWeWorkで働く価値。

デザイナーを初期から迎え、スピーディーに新規事業を推進する

ビジネスのフェーズによって、必要とされるデザインは異なると思います。しかし、創業メンバーにデザイナーがいるこのような企業が成長を続けていることからも、どのフェーズにおいてもデザインが欠かせないものであることは明らかです。

MORISAWA BRAND NEW Labではデザイン思考をビジネスの側面で取り入れています。まずはMVP(Minimum Viable Product)を作ってユーザーからフィードバックをいただき、プロトタイピングを重ねて改善を続けるという開発手法を取っています。ZeBrandをはじめ、グローバル展開するプロダクトを一緒に作っていける仲間を募集しているので、ご興味のある方はぜひお声がけください。ありがとうございました。

株式会社グッドパッチ|ビジネスに並走するデザインパートナーの役割

Goodpatchでデザインディレクターを務める大山、ビジネスデベロップメントの小林からは、Goodpatchのデザインパートナー事業のプロセスについて、三菱UFJ信託銀行さんとの取り組みを例にご紹介させていただきました。

大山: 我々がデザインパートナー事業を通して実感していることの一つが「デザインは事業・企業の価値向上のための重要な経営資源になる」ということです。よく誤解されがちですが、デザインは表層の装飾ではなく、ユーザーに新しい価値を提供する、課題を解決するための手段であり、アプローチの一つです。つまり、デザイナーとは価値を創造する・課題を解決するアイデアを生み出し、目に見える・体験できる形にする人と言うことができます。

そのためGoodpatchは、あらかじめ決められたものを作るのではなく、企業のデザインパートナーという形でクライアント様と一緒にユーザーにとっての新しい価値や、ユーザーが抱える課題を見つけることを大切にしながら、ビジネスに並走しております。今回はデザインパートナーの役割について、三菱UFJ信託銀行さんとの取り組みをご紹介しながら詳しくお伝えしたいと思います。

小林: 三菱UFJ信託銀行さんには「イノベーションを実現する」というゴールがあり、そのための手段として「デザインによるアプローチ」を取り入れています。そこで我々は「価値創造を支援するデザインパートナー」という役割を担いました。

そのためにまずプロジェクトチームを結成し、初期の仮説を磨いた上でユーザーに対して価値を検証し、その結果に基づいて、MVPを作るというプロセスを提案しました。

プロジェクトチームは三菱UFJ信託銀行さんから新規事業のプロジェクトオーナーとして齊藤さんデザイナーの伊藤さん、Goodpatchからは私とUXデザイナーの野田の4名で結成されました。

事業者サイドにデザインプロセスを理解しているデザイナーがいたことは、このチームの最大の強みだったと認識しています。Goodpatchはリサーチの計画と実行、デザインのフレームワークを提供することでプロジェクトをサポートしました。

仮説の軌道修正と事業ビジョンの明確化

チーム結成後はユーザーインタビューの準備として、初期の事業モデルと提供価値の磨き込みを行いました。アポイントを取る際、「三菱UFJ信託銀行です」と名乗ると驚かれることがとても多く、それだけ銀行とユーザーの間は距離があると実感したことを覚えています。

初期モデルの磨き込み、インタビュー、分析を約1ヶ月で終えたところで、ある問題が発生しました。インタビューの結果、最初に立てた仮説を大きく外すことになってしまったのです。

仮説が外れていた時に多いケースは、そのままプロジェクトを進める決定を事業サイドでしてしまうことです。予算や達成すべきタスクがすでに決まっていることが多いために、プロジェクトを振り出しに戻す意思決定は、オーナーにとって非常に苦しいんですね。

しかし、三菱UFJ信託銀行さんとのプロジェクトでは「リサーチする中でいくつか課題があることに気付いたので、まずはそこを見直したい」とデザイナーの伊藤さんがチームを立ち止まらせてくれました。そこで、インタビュー結果から仮説が外れた原因を可視化してみたところ、我々が取り組むべきことが明確になり、はじめて事業にビジョンが生まれました。ビジョンという新たな力を得たことでプロジェクトはリスタートすることができ、現在もそのビジョンに基づいたサービスデザインが行われています。

チームを築くことも含めて、ビジネスのデザイン

私は、ビジネスとは「顧客が対価を支払うのにふさわしい、人々の人生を豊かにする価値を確固たる理念のもとに提供すること」だと考えています。ビジネスの現場には事業責任者、デザイナー、エンジニア、営業など、様々な立場の方がいます。これからビジネスの現場でデザインが果たす役割が大きくなる中では、チームで共通の顧客像と向き合いながら提供価値を磨き、共通の目標に向かってワークすることが極めて重要になります。
そのためにも、目標(ビジョンやミッション)をデザインすることやチームビルディングが、デザイン駆動の新規事業立ち上げには不可欠であることを改めて肝に銘じるきっかけになりました。

三菱UFJ信託銀行|創業92年の歴史を持つ大企業における新規事業のデザイン

創業以来初のデザイナー採用を続けるなど、組織にデザインを取り入れている三菱UFJ信託銀行さんからは、経営企画部 FinTech推進室の齊藤さんと伊藤さんが登壇。長く続く歴史ある大企業におけるイノベーションの定義と、社内の意識変革のための取り組みについてお話しいただきました。

FinTech推進室のビジョンとミッション

齊藤さん: 三菱UFJ信託銀行では「安心安全で豊かな社会をつくりだす信託銀行」というビジョン、「社会とお客さまの課題を解決する」というミッションを掲げています。 ミッションについて詳しくご紹介しますと、従来、銀行の商品設計のプロセスではお客さまを比較的マスで捉え、企画部署がプロダクトアウトで普及させていくなど、やや一方通行の関係となる場合も見受けられます。

しかし、我々FinTech推進室はこれを逆転させるためお客さま一人ひとりのペインに耳を傾け、より根本的な社会課題の解決を目指しています。

大きな取り組みとしては以下の3つです。

  • 新たなデジタルプラットフォームを作るための新規事業
  • 既存の業務をデジタル化
  • それを支えるための体制作り

この取り組みにおいて重要な役割の一つがイノベーターです。デザイナーの伊藤も役割としてはイノベーターとして新規事業などのプロジェクトに携わっています。

イノベーションの定義

我々がデジタル領域で新規事業を展開していく上で、イノベーションの定義と構成要素を分解してご紹介します。

「イノベーション」という言葉は創出の部分が注目されがちですが、そもそもイノベーションとは新しい価値を生み出すだけではなく、社会に大きな変革を起こすことが目的です。つまり、社会を変えるためにはクリエーションとオペレーションという両輪が必要なのではと我々は考えています。

クリエーション×オペレーションを実現するために、チームに必要になるのが「起・承・転・結」それぞれの人材です。

起・承はクリエーション領域の人材が担い、自分たちが目指す世界観を理念などで可視化します。転・結の部分であるKPIやリスク管理、現場での実行と改善をオペレーション領域の人材が担うことで、ビジネスとして加速していくのです。

銀行員には、オペレーション人材が豊富にいます。しかし、クリエーション人材は多くありません。ここで一つ問題なのは、ポジションによって思考方法が大きく異なるという点です。

クリエーション領域、起の人はビジョン・ドリームのアート思考。そして承はどちらかというとデザイン思考。オペレーション領域、転の人の戦略・戦術は左脳のサイエンス思考。そして結、実行・改善を担っていく人はエンジニアリング思考と分類でき、それぞれの思考法や文化も異なるのです。

クリエーションの起・承をアジャイル文化、オペレーションはウォーターフォール文化と定義することもできます。アジャイル文化=スピード・柔軟性や仮説検証重視型。ウォーターフォール型=確実性、効率重視型と、文化が異なることが分かります。

異なる文化、人材を結びつける「心理的安全性」

チームの相互理解のためには「心理的安全性」が必要となります。

  • 仕事に社会的な意味があって、なぜやるのかが明確である
  • どこを目指すのかというゴール設定が明確である
  • 役割分担が構造化されていて明確である
  • 理解されていると感じて言いたいことが言える

この4つを満たすため、FinTech推進室は意義・目標・役割・理解を小刻みに振り返るようにしています。

イノベーションを促す3P

最後に、我々が取り組む「イノベーションを促す3P」についてお話しします。

People:人材
イノベーションの実現に欠かせないポジションであるイノベーターをより詳しく定義すると、ビジネスデザイナーです。クリエーション領域とオペレーション領域で思考を行き来することが重要になります。

また、可視化・具体化するためにサービスデザイナーが必要です。ビジネスサイドの人間は基本的にオペレーション領域に強みを持っているので、両者を結びつけて整理することが求められます。

こうしたデザイナーのことは「企画人材」と呼んでいます。デザインへの理解がまだ進んでいない組織においては、デザイナーという呼称に「表層の見た目だけを整える人」というイメージを持たれがちだからです。

繰り返しになりますが、多くの信託銀行員はクリエーション領域に対する理解がまだ進んていません。よって、中間を担う「ポテンシャル層」をどのように育てていくかが重要になってきます。

具体的に我々が実践していることとしては、経営層にCDTO(Chief Digital Transformation Officer)というポジションを設置することと、ワークショップなど意識変革を促す取り組みの実施です。

関連記事: 「裁量を与えて意思決定を積み重ねる」デザインでビジネスを加速させる、三菱UFJ信託銀行が仕掛けるデザイン経営

ワークショップも一例ですが、我々のプロジェクトチームはリソースが限られている点から、Goodpatchさんはじめ、外部のパートナー企業さんや既存の事業部をどんどん巻き込んでいくことが重要です。チームの外とコラボレーションするために、メンバーがワクワクするような意義を立て、プロジェクトベースの完了基準や役割分担を明確化し、暗黙知の引き上げを行なって関係を構築すること、FinTech推進室が一枚岩となることが、ハブとしての役割を担う上で大事だと思っています。

Place:場所・組織

我々もモリサワさん同様、WeWorkを利用することも考えました。しかし、セキュリティ面の問題などで実現が難しかったため、自社オフィスにプロジェクトを進めるための場所を作ることになり、伊藤がデザインを担当しています。

伊藤さん:
もともと私はデジタルデザイナーとしてWebなどを扱っていたので、急に空間デザインの依頼を受けた時は正直とても驚きました。ただ、今までもコンセプトがある中で仕事をしてきたので「この空間は何をするための場で、何を作ればいいか」について「イノベーション、コラボレーションを起こすための空間」という軸を持って考え、当初のイメージから大きくブレることはなくデザインができました。

Process:制度・運営

齊藤さん: 3つ目のPはProcessです。社内に新規事業の不確実性を許容可能な枠組みを作るべく、開発フェーズを2つのモードに分けています。モード1では事業部ではなく我々が投資金額を負担し、PoCという実証実験=失敗してもいい期間とし、仮説検証フェーズ以降はモード2の各事業部に引き継ぐという体制を構築しました。

ビジネスデザイナーは、フェーズ1の初期段階からプロジェクトの最後までに並走します。お客さまの課題の前段階にある「この事業をこの世界観で届けたい」というビジョンから構想していき、ビジョンに紐づくコンセプトを作るべくプロジェクトを立ち上げ、事業部に引き渡すところまでを担っていく非常に重要な存在です。

まとめると、イノベーションの定義は「クリエーション×オペレーション」だと我々は考えています。そのためには「起・承・転・結」全ての人材がチームに必要だということ。そしてそれらの人材が融合しなくていはいけないという点で、「心理的安全性」を確保するということが最も重要です。 それを実現させるために必要な要素は「People,Place,Process」の3Pです。そこで我々のチームが一枚岩として結束し、全プロセスを担っていくことで、事業を前に進めるだけではなく、ローンチして皆さんに実績としてご覧いただくことが可能になると思っています。

さいごに

今回はビジネス×デザインを実践する3社が登壇し、それぞれの定義をお話ししました。特に抽象的な要素を扱う新規事業のデザイナーの役割について、具体的な取り組みが登場しましたね。
全てのデザイナーのキャリアを支援するReDesignerは、デザイナーがパフォーマンスを最大限発揮できる社会の実現に向けて一人ひとりのキャリアを支援しています。今後もデザイナーが集うイベントを通して、一人ひとりがキャリアを切り拓くための情報を発信していきます。イベントや新着レポートの情報はTwitterConnpassをフォローしてチェックしてみてください!

URLコピー

URLコピー

コピーしました!

注目記事ランキング

あなたのキャリアを
デザインしませんか?

ReDesignerでできること

デザイン知識を持つエージェントと面談

デザイン知識を持つ
エージェントと面談

デザイナー特化のオリジナル求人票

デザイナー特化の
オリジナル求人票

企業のデザイン阻止式を把握した上で提案

企業のデザイン組織を
把握した上で提案

https://magazine.redesigner.jp/post/business-designers-meetup